ニッポンの小さな旅 奈良 日本の原点がここに！ 奈良の長閑な道歩き＆食べ歩き。

「フィガロジャポン」の9月19日発売は「ニッポンの小さな旅へ。」。その中から奈良をピックアップ。かつては日本の中心だった奈良。大陸との繋がりも深く、多くの和の文化はここが発祥地だ。いま再び出合ってみませんか、大和の国の始まり始まり―。

奈良といえば大仏で知られる世界遺産の東大寺や奈良公園の愛らしい鹿たち……そんなイメージに留まる人も多いだろう。だが、奈良の魅力はもっと多層的だ。縄文や弥生時代から歴史舞台の主役をはり、万葉集ゆかりの地。1300年前の平城京には、遣唐使とともに中国、インド、ペルシアと多国籍な人々が渡来した。シルクロードの東の終着点として、学問や建築など、最先端の智慧と技術に支えられたコスモポリタン都市には、アジアを軸とする美が宿っている。

東大寺中門に鹿がまどろむ。

天照大神に仕えた斎王が伊勢神宮へ赴いた初瀬街道沿い。

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薬もチーズも、奈良が発祥。

仏教を中心に国家の礎を築いた奈良は、日本の文化や食など、さまざまなものの発祥の地でもある。

たとえば、薬も奈良が始まりとされる。日本で初めて推古天皇が薬草摘みをしたとして、『日本書紀』に登場。奈良時代には、幾つもの薬草園で良質な生薬が栽培された。この地の特産である大和当帰は、一度は栽培が衰退したものの、葉の有効成分が注目されて復活。現在は、食材やコスメの原料として多用されている。

ほかにも、飛鳥時代に牛乳を数時間煮詰めて作られていた“蘇”や“醍醐”は、チーズの祖といわれる。素麺や饅頭、日本酒も奈良発祥説があり、現代の生活文化を支えている。

中心地から足を延ばせば、仏教が伝来した大和川や日本最古の「山の辺の道」など、万葉時代から変わらぬ原風景と出合える。悠久の時が流れる奈良の魅力を余すことなく伝える、宿泊施設やレストランがいま続々とオープン。見て、食べて、歩いて、ニッポンの始まりの地を知る旅をしよう。

仏教伝来した大和川の雄大な風景。

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今訪れたい、奈良の注目アドレス。

伝統工芸が息づく、古都の真髄に触れる宿。

ふふ 奈良

奈良公園内に2020年6月に開業した、30室のスモールラグジュアリーホテル。墨色をテーマカラーにした大和張りの建築は建築家・隈研吾によるもの。吉野杉でできたロビーの柱の一部は正倉院と同じ校倉造り、タペストリーは奈良晒しなど、随所に奈良の伝統や職人の手仕事を感じさせる空間だ。日本古来の「座する」がコンセプトの掘り込みリビングがある部屋や、全室に和漢植物の入った10種類の入浴剤が付く天然露天風呂も贅沢で、古都の魅力を心ゆくまで堪能できる。

ロビーラウンジからは、ランドスケープアーキテクトの宮城俊作による、建物と庭園が調和した庭屋一如の中庭を眺められる。

シルクロード終着点である奈良を感じさせるエキゾティックな設え。

全室に天然温泉露天風呂付き。和漢の香りで極上の湯を満喫。

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神話の地ならではの唯一無二の滞在を。

ニッポニア 田原本 マルト醤油

中心地から車で約35分、稲作を伝えた三穂津姫降臨の神話が残る田原本。1689年に創業し、皇室御用達でもあった奈良最古のマルト醤油蔵が、2020年8月にホテルとして生まれ変わった。代々の当主が暮らした風雅な部屋や醸造職人が寝泊まりした蔵など、往時の面影を残した7つの客室を用意。醤油蔵に70年間眠り続けた菌で醸した、奇跡の醤油を使用した朝食も味わえる。唯一無二の滞在を楽しみたい。

奈良と伊勢を結ぶ初瀬街道があり、交通の要衝だった地。

皇族が滞在したこともある趣のある部屋をダイニングルームに。

かつて醸造職人が暮らした蔵を改装した部屋「碓」は、木組みや土壁の文様はそのまま。

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世界遺産を見下ろしながら、和とフレンチの融合を食す。

テラス 若草山

東大寺、興福寺五重塔、春日山原始林の3つの世界遺産を一望できるこの店は、2020年7月に開業したアンドホテル 奈良若草山のメインダイニング。ならまちにある人気和食店の2号店だ。コースの最初に供されるのは、丁寧に引いた出汁に四季折々の味付けを施したグラス。伝統的な大和野菜や大和牛など、地場の食材を中心にフレンチの技法を融合した和食が、目も舌も驚かせてくれる。

吉野川で取れた「若鮎塩焼き」は、サワガニ素揚げとイチジク田楽みそを添えて。

7月のディナーコース¥12,000より、濃厚なウニの旨味が凝縮した豆乳鍋「大和牛雲丹出汁のしゃぶしゃぶ」。

抜群の眺望を誇るダイニング。

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古都を表現する美しい料理が五感を刺激。

白

京都の老舗、嵐山吉兆で修業し、ニューヨークやロンドンを経た料理人が作り出すのは、奈良の歴史や風土を背景にした美しい料理。平城京最古の建造物である薬師寺東塔などを魚の血合いを浮かび上がらせて表現したり、弥生時代から続く高鴨神社の祭祀を同地で育てられた倭鴨と日本古来種の大和橘を用いて創り上げる。店主の丁寧な解説を聞きながら、それぞれの料理が持つストーリーまで味わいたい。

懐石コース¥13,200より、シマアジとルバーブで表現した「薬師寺の双塔」　

ダイコンの桂剥きを行灯に見立てた「倭鴨の弥栄蒸」

ニューヨークとロンドンでも2ツ星を獲得した西原理人。

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免疫力をアップする、大和ハーブがたっぷり！

パワーオブフード

国際中医薬膳管理師の店主が切り盛りする薬膳カフェ。漢方でおなじみの生薬の大和当帰の葉を使ったメニューが揃い、生葉をたっぷり使ったプレートを食べられる。当帰パウダーを練り込んだシフォンケーキや薬草茶は、セリ科らしい爽やかな香りとほのかな甘味、苦味がクセになる味わい。カフェで使われている食材は併設のグロッサリーで購入も可能なので、身体と心を整える大和ハーブを気軽に試してみて。

血の巡りを良くする大和当帰葉がたっぷりと入った、月替わり定食の「お粥プレート」¥1,518

店内の壁には大和当帰のチョークアートが描かれている。薬膳イベントも開催。

左から、奈良県産の大和当帰葉を使った“ちになるシリーズ”のハーブティー10パック 各¥1,782、出汁パック¥1,458、ふりかけ¥918　

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作りたての和菓子のおいしさに開眼。

萬御菓子誂處 樫舎

春日大社や東大寺に菓子を献上する、奈良を代表する和菓子店。持ち帰りもできるが、おすすめは目の前のカウンターで店主が作る菓子をいただくコース。菓子にまつわる歴史や文化など、軽妙洒脱な話を聞きながら、作りたての上生菓子から干菓子、焼きたての香ばしい最中など4種の菓子を堪能できる。ペアリングには抹茶やスペシャルティコーヒーを。熟練の技と手間暇かけた珠玉の和菓子の世界をどうぞ。

ならまちの一角にある風情ある店舗。コースは¥3,300（要予約）

不老長寿の象徴である菊をかたどった練りきり。抹茶と季節の生菓子¥990

紅葉をかたどった出来たての干菓子は、口の中でほろりと儚く溶ける。

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注目エリアに新名所!アートな複合型宿を訪れて。

和の雫

個性的な店が集う注目エリアのきたまちにある、古民家レストラン、松籟～まつのおと～が、この7月、一棟貸しの古民家宿&ギャラリーを隣にオープン。建築を学んでいた店主自らがリノベーションしたという築80年の商家に、センスのよい古道具が飾られている。洒脱な和の空間ながら、寝室はシンプルで心地よい。宿泊客限定のバーでゆっくり寛ぐもよし、レストランで飛鳥地方の伝統鍋に舌鼓を打つもよし。

2階ギャラリーに店主の審美眼にかなった古道具や現代作家のアートを展示。

松の意匠のガラス引き戸を開けると、花鳥風月の壁紙が全面に施された瀟洒な空間。

四季の果実の「和ジントニック」¥1,100

木目調のモダンな寝室。

ニッポンの小さな旅へ。

その土地ならではの食文化、大切に守られてきた伝統工芸、そこでしか出会えない風景。町おこしになったエシカルなチャレンジ、大自然でのグランピングや島暮らし……。ニッポンにはまだまだ知らない魅力がたくさんあって、かけがえのない経験や思い出をもたらしてくれる。いつかきっと行きたくなる。そんな愛すべき土地をご紹介します。

「フィガロジャポン」2020年11月号より抜粋
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※掲載店の営業時間、定休日、価格などは、取材時から変更になる可能性があります。
※宿泊料金、滞在プランは、客室タイプ、時季、サービス内容で異なるため、予約時に宿泊施設にご確認ください。

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