ニッポンの小さな旅へ 【愛媛・宇和町】1日1組、オランダ人彫刻家のアトリエに泊まる。

Travel 2021.03.24

現在のオーナーが、愛媛県宇和町の田んぼで洒脱な石造りの家に出合ったのは17年前のこと。門から現れたのは、背の高いオランダ人の芸術家だった──。枯山水に感銘を受け、造園家を志して日本に移住したケース・オーエンス。彼は庭の概念を超えた新しい空間を創るため、やがて石の彫刻家に。フランスやインドネシアにも暮らした後、1996年にこの地へ辿り着いた。

アトリエ オーハウス|宇和町

2103xx-uwacho-01.jpg彫刻家兼造園家のケース・オーエンスが自宅・アトリエにしていた家は、建物自体が彼の作品。いまは20年来の友人であるオーナーの越智仁文が宿として経営。

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25年間のアートに囲まれて。

2103xx-uwacho-05.jpgオーエンスが愛する枯山水の世界を、石だけで表現したアート空間。リビングから大きな窓の外へと続いていくさまも粋。

オーエンスを魅了したのは、弥生時代から2000年の歴史を誇る米どころ、宇和町の田園風景。四季とともに、水田、青田、黄金の穂、そして銀世界へと変わりゆく盆地が、自らの作品を生かせる理想郷だと判断した。石の彫刻と自然を融合させる空間アートで、越後妻有の『大地の芸術祭』やフィレンツェのビエンナーレにも出展するが、今度はメキシコに移住を決めた。そこで、彼の25年にわたる作品群が息づくこのアトリエをリノベーションし、今年6月から一棟貸しのホテルとして運営することに。

モダンな石庭を眺めながらいただく、皇族御用達のシェフによる滋味深い料理。宇和町の石を使った彫刻や絵画の数々……。オーエンスが紡いだアートの記憶とともに、ゆっくりと感性が深められていくのを味わいたい。

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リビングや書斎から、豊かな茶畑と田んぼを眺めて。夕暮れ時は幻想的な光に包まれる。

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85㎡もあるリビング&ダイニングは、大人4人が悠に寛げる。アートのほか、カッシーナのデザインチェアをはじめ特注のテーブルやテレビ台など、上質なインテリアにも注目。

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玄関横で迎えてくれるのは、太陽と命を表現したというオーエンスの大きな絵画。この絵を目当てに訪れるゲストも。

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プライベートギャラリー

入口の門の脇にある離れは小さなギャラリー。オーエンスの手がけた有機的なオブジェやうつわの陶芸作品が桐箪笥の上に並び、実際の作陶に使われていたろくろや窯もそのまま置いてある。ゆくゆくはここで、陶芸やうつわの絵付け体験を行う予定。

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奥にある革張りの椅子は、オーエンスが気に入って腰かけていたもの。窓の外には稲作の風景が広がり、静謐な時間が流れる。

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芸術的なディナー

ここでは皇室御用達の実力派シェフが腕を振るう。生きのいい瀬戸内海の魚や繊細な味わいの伊予牛、自家菜園の野菜にみずみずしい柑橘……。愛媛の恵みたっぷりの軽やかな創作フレンチが、特注のアートなうつわに美しく映える。

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素材はすべて地のもの。デザート含め全10品のコース。幻の高級魚と呼ばれる瀬戸内来島(くるしま)海峡のアコウ(キジハタ)を、優しい出汁のソースとともに。

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松山からすぐの興居島(ごごしま)で獲れた車エビに、エビ味噌のクスクスを合わせて。

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ふわっときめ細かい肉質の伊予牛のフィレ。肱川(ひじかわ)の炭で焼いて旨味と香りを引き出した。

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さっぱりとした愛南町産の金柑のアミューズ。

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アートと眠る寝室

ベッドルームを飾るオーエンスの絵画は、生け花や茶道に見られる日本人の“指先の世界”を描いたもの。水墨画タッチを、色とりどりの緻密な抽象画が彩る。先入観を与えてしまうという理由から、彼の作品にはタイトルがない。

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寝室は2部屋。それぞれ趣の異なる絵が飾られ、頭上には美しい星空を望む天窓付き!

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石造りの露天風呂

石庭で湯あみを楽しむかのような贅沢な空間。石は宇和町のものを使うというオーエンスのこだわりが詰まっている。お湯は天然の自噴源泉。湯冷めしにくく、神経痛や関節痛に効くとされる。彫刻作品と雪見窓から見える景色を楽しみながら、なめらかな湯に癒やされたい。

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風の音や鳥のさえずりに耳を傾けて。屋内にもバスタブ付きの洗練された浴室を完備。

アトリエ オーハウス
Atelier O-huis

愛媛県西予市宇和町伊延東1040
tel:089-907-1655 
1棟貸し切り(定員大人4名) バスタブ、露天風呂付き 
1棟¥278,300〜(2名利用時、夕朝食付き) 
www.o-huis.com

●松山空港から車で約1時間、送迎あり。

●掲載店の営業時間、定休日、価格などは、取材時から変更になる可能性があります。
●宿泊料金、滞在プランは、客室タイプ、時季、サービス内容で異なるため、予約時に宿泊施設にご確認ください。

*『フィガロジャポン』2020年11月号より抜粋

松山~宇和町間の寄り道スポット。

 

photos : AKEMI KUROSAKA (STUH)

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