知っておきたい泌尿器科の話 vol.3 頻尿のお悩み、もしかして心の状態が原因かも?

Beauty 2023.07.06

フェムケアが普及して、婦人科関連の情報は増えてきたけれど、まだあまり語られていないのが尿をつくりだす「泌尿器」の話。身近でありながら知られざる疾患やお悩みを、泌尿器科の専門医・乾将吾先生がわかりやすくお伝えします。連載の第3回は、心の状態と関係することも多いという、頻尿のメカニズムをフィーチャー。


一日のトイレの回数。どれくらいから頻尿と診断される?

こんにちは。「いぬいクリニック」院長の乾将吾です。今回お話しするのは、泌尿器科系の症状の中でも身近なもののひとつだと思われる、頻尿について。みなさんはこれまで、“自分は頻尿かも”と感じたことがありますか? さっきお手洗いに行ったばかりなのに、またすぐに行きたくなった。そんな経験は、誰にも一度はあるのでは?

実は、頻尿が治療を必要とする“疾患”だと判断される基準は、明確には存在しません。一日の適切な排尿回数は7回以下、1回の排尿量の目安は150〜300ml程度と、もちろん基準値はあります。しかし、それを少しでも超えたからといって“頻尿”として治療が必要かというと、そうではないんですよね。排尿の回数と量はその人の生活習慣や飲水量に左右され、実に人それぞれなんです。

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photo: shutterstock

では、どのような状態になったら泌尿器科の受診が必要なのか。僕が考える判断のポイントは、“日常生活に影響を及ぼしてしまっているかどうか”、“ご本人が困っているかどうか”です。

たとえばすぐに尿意をもよおしてしまうのが心配で、外出するのに支障をきたすとか、公共交通機関が使えなくて不便に思っているなど、頻尿であるがゆえにスムーズにいかないことがあると感じるのであれば、いちど泌尿器科の受診をおすすめします。

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頻尿をともなう疾患は?

頻尿が症状のひとつとして現れる病気はいくつかあります。まずは前回も取り上げた膀胱炎などの尿路感染症。ただこれらは痛みや血尿など、頻尿以外の症状を併発することが多いですね。ほかに挙げられるのは過活動膀胱です。これは文字どおり膀胱が活動しすぎてしまう病気で、実際には尿がまだ膀胱にたまりきっていないのに、尿意を感じる神経が過敏に働いてしまうというもの。脳にどんどん信号がいくので、おのずとお手洗いの回数が増え、頻尿となりがちです。突然強い尿意が襲ってくる“尿意切迫感”が必須の症状となります。

あとは男性ですと前立腺肥大症、男女ともに糖尿病や心不全、脳梗塞に脳卒中など、生活習慣病や心臓、脳の疾患を患っている人が頻尿症状を訴えることもあります。腰の悪い人などにも見られることが。

とはいえ、実はそのうちのどれでもないのに頻尿がある、という人もいるんです。これは心因性と診断されます。実は尿意は、心の状態に左右されることが非常に多いんですよ。隣の人がお手洗いに立ったのをふと見たら自分も行きたくなったとか、大きな舞台に出る前に急にお手洗いに行きたくなる、などという経験は思い返せばどなたにもあるのではないでしょうか。

頻尿が心因性か否かを見極めるために問診でお伺いするのは、“環境に左右されるかどうか”と“夜中も続くかどうか”。“職場にいると頻繁にお手洗いに行きたくなるけれど、自宅ではそうでもない”というような場合は、心因性の疑いが強くなります。また、何かしらの疾患が原因であれば夜中も尿意で目覚めることが多いので、そうでなければ心因性なのかなと考えることもありますね。心因性の頻尿だということになれば、生活環境について細かくヒアリングをしつつ、原因と考えられるものから遠ざかってもらったり、改善する方法を一緒に考え、アドバイスを行ったりします。

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頻尿かも?と不安を感じたときのチェック法。

泌尿器科の診察で、尿検査をしても細菌が検出されず基礎疾患もない、ということであれば、尿の回数や量を記録していく「排尿日誌」をつけてもらうこともあります。採尿カップと冊子をお渡しし、主に一日何回お手洗いに行ったかと一回の排尿の量を記録していただきます。飲水量、尿の色や勢い、間に合わずに失禁してしまうことがあるかどうか……など、細かく記録していただくとより詳しい情報を得ることができます。一日の尿の量からは、とても多くのことがわかるんです。

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クリニックでお渡ししている排尿日誌。就寝中も含めた一日の尿について細く記入していく。写真提供:いぬいクリニック

この排尿日誌は製薬会社さんのウェブサイトにも雛形がアップされているので、ご自身で試していただくこともできますよ。ただ正直、毎回の排尿について事細かに記録するのは、けっこう面倒なこと。反対に言えば、自分の中でそれほど大変なことをしてまで原因を解明したいくらい困っているのかどうか、というバロメーターにもなるかもしれません。

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photo: shutterstock

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頻尿と残尿の違いと、その関係性とは。

頻尿は、膀胱に尿が“たまる”機能に関係する疾患です。ですが残尿は、尿を“出す”機能に問題があるときに起こります。“残尿”と“残尿感”もまた少し異なり、“残尿”は排尿機能に問題があって、自分では出しきっていると感じていても尿が膀胱に残ってしまっている状態。“残尿感”は、実際に残尿があってもなくても、まだ尿を出しきっていないような気がする感覚のことをいいます。残尿量が多くなる原因として、前立腺肥大症、糖尿病や脳卒中などの神経に関わる疾患、加齢などがあげられます。ちなみに膀胱炎にかかると、頻尿と残尿感の両方を併発する場合も。

女性は生理周期によってホルモンバランスが変わるため、これによって頻尿や残尿感が生まれる可能性も考えられます。体内でプロゲステロンとエストロゲンというふたつの主要な女性ホルモンのレベルが変化すると、体液の保持と排出のバランスが変わる可能性があるんです。生理前にはこれらのホルモンレベルが低下するため、身体は余分な水分を排出しようとし、これが頻尿に繋がることも。ですがもし生理が終わっても持続しているとか、どんどんひどくなっているといったことがあれば、迷わず泌尿器科を受診してください。

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適切に排尿する力を育む方法はある?

排尿に関してのお悩みの有無は日々の体調によっても変化しますし、身近であるがゆえに「受診するほどのことかな?」と思ってしまいやすいのは事実。頻尿が気になる時に振り返っていただきたいことがあるとすれば、日常的に大量のカフェインやアルコールを摂取していないかどうかや、塩分多めの食生活を送っていないかなどですね。塩分が多い食事を摂ると、夜中や次の日に排尿の量や回数が多くなることがあります。中高年の方であれば、血圧が高い人にもその可能性が。

ちなみに頻尿を改善するためにセルフで行うことのできる「膀胱訓練」というメソッドもありますよ。膀胱は風船に似て、膨らむことに慣れるとその状態をキープしやすくなるため、頻尿が気になる人に意識的にお手洗いへ行くのを我慢してもらい、その時間を延ばしていくという方法です。

ただこれは、個人的には諸刃の剣だと感じていて。尿を溜める力のみに異常がある患者さんには有効なのですが、排尿機能に問題がある人にとっては感染症の原因となることがあるんです。自己判断で行うのではなく、まずは泌尿器科を受診してみて、医師の判断のもとで試してみていただけたらと思います。

次回は、産後の女性のお悩みとしても多い、尿もれについて解説します。

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乾将吾|Shogo Inui
いぬいクリニック院長、日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医・指導医

2009年、京都府立医科大学卒。卒業後、同泌尿器科に入局。府立医大病院のほか京都市内の複数の病院で勤務後、在宅医療にも従事し、より広範な医療現場を経験する。2022年「いぬいクリニック」を京都の烏丸御池・二条城エリアに開院。クリニックを診療の場としてだけでなく、人々が集うコミュニティへと発展させるべく、フラットスペース「いぬいのいこい」をクリニック2階に設けワークショップなどを開催。「医療と衣料」をかかげ、インスタグラム(@inoui___)で日々のコーディネートも公開中。

いぬいクリニック
www.inucli.com


【連載】知っておきたい泌尿器科の話
第1回:毎日の尿が教えてくれる、身体の不調とは?
第2回:女性は特に注意! 夏場の膀胱炎、予防のポイントは?

text: Misaki Yamashita

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