香りの創造者フランシス・クルジャンが語る、新ミス ディオールの誕生秘話。
Beauty 2024.04.21
ーミス ディオールの再解釈という大きなミッションを受けて、どんなことから始めましたか?
ディオールのパフューム クリエイション ディレクターに就任した時から、ミス ディオールという象徴的な香りを私自身の解釈で作り直すことはひとつの任務として認識していたので、プレッシャーだったとは思いません。まず考えたのは「ムッシュ ディオールは、どんなインスピレーションを基にこの香りを創ったのか」ということ。歴史学的な調査のようにアーカイブを細かく丁寧に探究していきながら、香料の成分分析も行いました。そこで出合ったのが"グリーンジャスミン"や"南仏プロヴァンスの夜"といったキーワード。そして、ディオールを象徴するシプレーノートの再解釈。ウッディとフローラルが響き合う伝統的なシプレーの構造を、モダンに表現することにしました。これらを出発点に、現代に合った香りを作り上げていったイメージです。
ーミス ディオールにまつわるアーカイブを探る中で、興味深い発見があれば教えてください。
1947年のオリジナルを開発する際に、この香りが"カストル"というコードネームで呼ばれていたことがわかりました。"カストル"は双子座で強い輝きを放つ星。星座や迷信が好きなムッシュ ディオールの強い気持ちが込められているのではと思いました。ムッシュがふたつの香りを同時に開発していたことや、"corolle(花冠)"という名が商標登録されていたともわかり、幾つかの選択肢の中で悩みながら誕生した香りであることも推察されます。
ミス ディオールパルファンは、甘みのあるふっくらとした輪郭を持つリッチな香り立ちが魅力。「濃密でいて主張しすぎず、自信をもたらしてくれる。新しい女性らしさを発見できるような香り」とナタリーも表現。核となるジャスミンに潜むストロベリーやアプリコットのフルーティさの虜になる、モダンなシプレーノート。ボトルに施された千鳥格子のデザインや、ジャカード織りのリボンも特別な装いだ。ミスディオール パルファン 35ml ¥13,200、50ml ¥18,040、80ml ¥23,110(店舗限定発売)/パルファン・クリスチャン・ディオール
ーミス ディオールは新しい世代を香りで表現してきました。どのようなモダンな女性像を描いて創りましたか?
いまの若い女性には"トレンド"という意識がそこまでないのでは? それぞれが個人の自由で自己表現している、というのがいまの世代に持つイメージです。なので、限られた女性像ではなく、マルチな顔を持つ世代にフィットする香りを創ろうと考えました。
ーアンバサダーを務めるナタリー・ポートマンさんとお会いしたと聞きました。
最初はカンヌ国際映画祭の時で、ローズの農園にご一緒しました。エネルギーにあふれる自由な女性で、印象をひと言でいうと"時代の人"。ムッシュ ディオールは、多くの女優やミューズに囲まれてオートクチュールの作品を発表しましたが、そんなムッシュのエスプリに合致する"グラムール(魅力的)"な女性と感じました。ナタリーさんとどんなお話をされましたか? 彼女はもちろん有名人なので、私から自己紹介し、パリでの生活についてとりとめのない会話をしたり、非常に楽しい時間でした。今度お会いする時は、もっと香りについての会話もしたいですね。
Francis Kurkdjian
ディオール パフューム クリエイション ディレクター。20代から調香師として才能を発揮し、世界的な名香を手がけるなど輝かしい実績を重ねる。芸術文化勲章"シュバリエ"を受勲。2021年より現職。
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新しいミス ディオールの香りへ、
俳優ナタリー・ポートマンからメッセージ。
*「フィガロジャポン」2024年6月号より抜粋
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photography: Felix Cooper for Christian Dior Parfums text: Naho Sasaki