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『リトル・ジョー』を観て、我が家の植物を思う。

上映延期を経て、先週末から全国公開となった映画『リトル・ジョー』。

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この作品の魅力についてはぜひ、立田敦子さんによる監督インタビューや、連載のレビューをご覧いただきたいのですが、この美しくも不気味な花の物語を観て、編集YUKIは我が家の植物たちに想いを馳せました。

みんな可愛くて大切ですが、真っ先に頭に浮かんだのは……

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豆苗。

1パック¥80ほどなのに3回は収穫できる、頻繁に買い物に行けない外出自粛期間中も頼もしい存在であった彼ら。

窓辺に置いて1時間もすると、ぴょこんと太陽の方向にお辞儀するように曲がって伸びていきます。それを合図に自分も席を立ち、ストレッチしつつ向きを変えてあげていました。
そんなことをしているうちに可愛さがつのり、食べずに栽培を続けていたら、2日で2倍くらいに成長。見た目もやや野性味が増して、蔓さえ伸ばしはじめました。

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そんな時、ふとこんな考えが頭をよぎりました。
このまま土に植えたら、さらに育ってエンドウ豆を付けるかもしれない。その豆を収穫して豆苗にして、食べるのはその時でいいんじゃないか。
と、彼らはリトル・ジョーばりに自分たちを育てるよう仕向けてきた……気がしました。
これが豆苗の思惑なのかわたしの妄想なのか、映画を観るとさらに混乱します。

『リトル・ジョー』は人を幸福にするとされる香りをもつ、花をめぐる物語です。赤やグリーンを印象的に利かせた配色が美しく、そのスタイリッシュなビジュアルに反してどこか日本の古典的な怪談を思わせるおどろおどろしい音楽も秀逸。研究者であるメインキャラクターたちの、模範的ともいえるマスクや手袋の纏い方、てきぱきと除菌する姿も魅力的です。

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エミリー・ビーチャム演じる主人公アリスの助手役を演じたのは、ベン・ウィショー。彼は、フィガロジャポン8月号「エディターが恋した、パリの本。」で編集SKが紹介した、パトリック・ジュースキントの『香水』(文藝春秋刊)の映画化作品『パフューム ある人殺しの物語』(2006年)に主演。この時も美しくもゾッとする、香りの物語を体現していたことを思い出しました。

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豆苗は結局、その後収穫して卵とじにしておいしくいただきました。豆の香りのする、生命力あふれる味はしっかりと幸福感をもたらしてくれました。彼らにまたスーパーで出合ったら、再び家に迎え入れたいと思っています。

『リトル・ジョー』
●監督/ジェシカ・ハウスナー
●出演/エミリー・ビーチャム、ベン・ウィショー、ケリー・フォックスほか
●2019年、オーストリア・イギリス・ドイツ映画
●105分
●配給/ツイン
アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国にて公開中
http://littlejoe.jp
© COOP99 FILMPRODUKTION GMBH / LITTLE JOE PRODUCTIONS LTD / ESSENTIAL
FILMPRODUKTION GMBH / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH
FILM INSTITUTE 2019

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