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50周年を飾る超大作『007 スカイフォール』と、アストンマーティン。

『007』を観たおかげで酒、時計、ファッションアイテムに携わる編集者になったと言っても過言ではない編集YKが、今回再上映が決定した10作品を徹底レビュー! 今回は映画第23作となった『007 スカイフォール』と、シリーズを彩る名車アストンマーティンについて語ります。

『007 スカイフォール』(イギリス公開2012年10月26日/日本公開12月1日)

各国の犯罪組織に潜入調査を行なっているNATOの諜報員たちのデータが入ったハードディスクが謎の傭兵・パトリスに奪われた。MI6でも歴戦の諜報員である007=ジェームズ・ボンドは、女性エージェントのイヴとともにトルコに潜入、パトリスを追跡する。疾走する列車上でパトリスに追いついたボンドはハードディスクを巡って格闘を繰り広げるが、ロンドンから指揮をとるMはイヴにボンドもろともパトリスを狙撃することを命令。緊迫した状況下でイヴは狙撃に失敗、銃弾はボンドを撃ち抜き、ボンドは滝壺に落下、パトリスは逃亡してしまった……。

 

数ヶ月後、007の死亡が公的に発表され、Mは機密情報漏洩の責任を問われる。新たに情報国防委員会の委員長に就任したギャレス・マロリーからの引退勧告を拒絶したMだったが、直後に何者かがMのコンピュータをハッキングし、MI6の本部が爆破されてしまう。実は生存していたボンドは僻地でこのニュースを目撃し、ロンドンへ帰還する。

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00要員への復帰テストを受けるボンドだが、結果は悲惨なものだった。復帰を疑問視するマロリーの意見を一蹴し、Mはボンドにパトリスの追跡を指示する。先の追跡時に肩に打ち込まれた弾丸からパトリスの行き先を特定した007は、新任の開発主任、Qから航空券と装備を受け取り、上海へ飛ぶ。

上海でパトリスを捕らえたボンドだが、雇い主を聞き出すことに失敗しパトリスは死亡。彼が所持していたカジノのチップを手掛かりに、ボンドはマカオへ向かう。カジノで出会った謎の女性セヴリンの背後に事件の黒幕の存在を感じたボンド。黒幕の仲間でありながら怯える彼女に、ボンドは雇い主の暗殺を提案。セヴリンを監視していた男たちを倒すと彼女の乗るクルーザーに潜入し、彼女と一夜をともに過ごすが、翌朝船上で拘束されてしまう。

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廃墟となった島をアジトにしていた黒幕はラウル・シルヴァと名乗る。彼は元はMI6の有能なエージェントだったが、中国に返還前の香港支局で職務を超越したスパイ活動に手を染め、当時の上司であったMはそれを危険視し中国当局に通報。中国側に身柄を拘束され拷問にかけられたシルヴァは、尽くした祖国と上司に裏切られた恨みを抱き、犯罪組織を結成していたのだった。

シルヴァは007と自身を重ね合わせ、Mが復帰テストの結果を隠したままボンドを現場に送り込んだことを告げる。しかしボンドは「私の趣味は復活だ」と、その事実に不敵な笑みを浮かべる。シルヴァが仕掛けたゲームによってセヴリンが命を落とすが、ボンドはQから渡されていた無線装置で居場所を特定させており、シルヴァは拘束される。

しかし、それはMに近づくための彼の罠だった。MI6本部のシステムをハッキングした彼は、地下鉄を経由してMが召喚された公聴会の議場を襲撃する。会場が大混乱に陥る中、ボンドはMを密かに連れ出す。公用車から隠していた私物のアンティークカー、アストンマーティンDB5に乗り換えると、ボンドは一路、スコットランドを目指して車を走らせる。目的地は、ボンドが幼少期に離れて以来、近づくことを拒否していた亡き両親の邸宅である「スカイフォール」だった……。

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50周年で見せた、ひとつの頂点

ダニエル・クレイグが6代目ジェームズ・ボンドを演じて3作目であり、1962年に始まった『007 / ドクター・ノオ』から50周年となる節目に公開された記念碑的作品。ストーリー、ガジェット、登場人物からディテールにいたるまで、かつてのシリーズへのオマージュを最大限に盛り込みながら、シリアスな物語をアカデミー賞受賞歴もある実力派の監督サム・メンデス、撮影監督ロジャー・ディーキンスが描き出したアクロバッティックな傑作である。

ダニエル・クレイグ演じる007は、これまでのシリーズの設定をリセット。『カジノロワイヤル』(06年)では00部員に昇格する場面から物語が始まり、『慰めの報酬』(08年)は前作の最終シーン直後から物語がスタート。2作を経て若き日のジェームズ・ボンドが最愛の女性ヴェスパー・リンドの裏切り、喪失を経て「007」になるまでのストーリーを描き出す。

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本作ではミス・マネーペニー、Q、そして物語最終ではMのクラシカルな執務室が再登場するなど、「原点回帰」をとことん意識。これまでの映画でフィーチャーされることの少なかったスコットランドを舞台にしたのも本作が初めてだ。ボンドがスコットランド出身という設定は当初原作にはなく、スコットランド出身のショーン・コネリーが007を好演したことで後に原作にも逆輸入される形で導入された。ちなみにスコットランド貴族だったボンド家の家訓は『女王陛下の007』で「ORBIS NON SUFFICIC」(=the world is not enough、世界では足らず)だと判明、英訳が19作目の映画のタイトルとなっている。

物語最終盤ではモンティ・ノーマン作曲、ジョン・バリー編曲の007のテーマが流れ、007が歩いてきて銃口に見立てた画面側を撃ち抜くという通称「ガンバレル・シークエンス」が挿入される。シリーズの冒頭で毎度行われてきたこのシチュエーションを最後に実施することで、「スカイフォール」はこれまでのシリーズ作品全てにリンクするように見えるという、稀有な演出で50周年記念をまとめ上げたのだ。

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007と“アストンマーティン”

本作『スカイフォール』では、映画3作目『ゴールドフィンガー』に登場し007シリーズのアイコンとなったボンドカー「アストンマーティンDB5」が、007のテーマとともに彼の私物として再登場する。

意外なことに原作者イアン・フレミングは、友人に自らカスタマイズしたベントレーを贈るほどベントレーを愛していた。フレミングによる原作「カジノロワイヤル」で、ジェームズ・ボンドは1930年に製造されたベントレーを愛用しており、その後“社用車”としてゴールドフィンガーでアストンマーティンDB3が登場するものの、以降もエンジンを最新モデルに積み替えたベントレーマークⅡに乗り続けている。搭乗シーンはないものの映画『ロシアより愛を込めて』では冒頭、デートに出かけている007の愛車としてベントレーが映っているほか、『ゴールドフィンガー』ではベントレーでなくアストンマーティンに乗れと指示されるシーンで「いい車なのに」とボヤいているのが確認できる。

映画『ゴールドフィンガー』製作時、原作で登場したアストンマーティンDB3が発売されてからすでに7年が経過しており、プロデューサーはアストンマーティン社に最新型のDB4を貸してくれるよう交渉。すると、当時の社長デヴィッド・ブラウンが開発中だったDB5のお披露目に映画を利用することを提案し、007を象徴するボンドカーが誕生することになった。

アストンマーティン社との蜜月は長く、ロジャー・ムーアを除く歴代ジェームズ・ボンドはいずれもアストンマーティンに乗ってカーアクションをこなしている。今作で大破したギミック満載のDB5は次作『スペクター』でQの秘密基地にて修理されている描写があり、同作では市販車ではなく映画用にオリジナルで作成されたアストンマーティンDB 10が登場。物語最終盤でDB5の修理が完了、続編『ノー・タイム・トゥー・ダイ』冒頭でも同じ車がボンドの私物として登場する。

劇中5年が経過し、ボンドがロンドンに帰ってくるシーンでは、『リビングデイライツ』に登場したアストンマーティンV8ヴァンキッシュが38年ぶりにシリーズに復活、こちらもボンドの私物として登場した。

『BOND60 007 4Kレストア』
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www.tc-ent.co.jp/sp/BOND60_007_4k_jp
9/28(木)新宿ピカデリー19時
『ロシアより愛を込めて』上映前に、服飾史家の中野香織さんをお迎えしての特別トークショーを実施!
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