子どもを望まない、30代の女性たち。

Culture 2018.01.30

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子どもが欲しくない女性による6つの証言。
photo : Getty Images

不妊のリスクが高まり、高齢出産の時期を迎えた28歳から37歳の5人の女性たちが子どもを望まない理由について語った。「自分の人生の大きな決断は、いつも本能に従ってきたの。でも子どもを持ちたいという願望を持ったことは一度もない」37歳のローラはそう語る。

多くの同世代の女性同様、彼女もまた家族を築くことを考えていない。「体内に備わった時計が感情を引き起こすのではなく、いくつになっても自分が感じるか感じないかだと思う」そう彼女は言う。

写真家のギャランス・ドレはこの夏発表した手記の中で、自身の高齢出産への想い、妊娠中直面した苦難、周りからの視線について語った。 2017年にHuluによってドラマ化され、エミー賞で賞賛されたマーガレット・アトウッド原作のベストセラー『侍女の物語』では、環境問題が不妊に及ぼす影響について描かれている。これらふたつの異なるストーリーは、母になる必要性に焦点を置く。しかし一方で多くの女性が出産しないことを選択している。アメリカではそれらの女性が増加傾向にあり、彼女たちは「チャイルドフリー」と呼ばれている。

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「誰も育てたくない」

「過去・現在・未来の生活を考えたとき、そのいずれにも子どもを持ちたいという願望は存在しない」30歳のルイーズはそう述べる。「社会からのプレッシャーに加えて、女性だったら相手がいてもいなくても子どもを授かりたいと思うもの、ずっとそう言われてきたわ。でも私は子どもを産みたいという強い願望がないの」

5年間続くパートナーがいる28歳のダイアンも母親になろうとは考えていない。33歳のシャーロットは現在、過去のパートナーとの間に子どもを持つ男性と3年間交際しているが、こう述べる。「私は誰も育てたくない。子どもができたら、いま夢中になっていることを全部やめなきゃいけなくなるような気がするの」2年間付き合っている彼がいる34歳のクラリスは「自分は自立した人間でありたいから、子どもを育てる母を務めることはできないわ」と言う。

これらは、自由を求めるがゆえ生じる結果であり、しばしば母親になりたいという願望と相反することがある。37歳のローラは結婚して1年が過ぎ、最近気付いたことがある。「若くして母になった友人たちをみていると、とても幸せそうだけれど同時にとても疲れているわ。結婚相手にひとりで出かける許可を得たり、走り回る子どもや散乱したおもちゃや服の片付けに翻弄されたり、子どもの涙を拭いたり、危機を防いだり。私はそのどれひとつも望まないわ」

一般的に彼女たちは、子どもがいない人生を“幸せ”“満たされる”“友好的”“旅と恋人と”“ボーダーレス”“未知に溢れる”“静寂とともに”などの言葉で表現する。

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「私のDNAには母親にならないことが書いてあるの」

「よく子どもがいない女性のイメージというと、悲しいとか後悔の念といったものがあるけれど、一方で出産しなくても人生の意味を見出せるし、充実感をもって幸せになれる。子どものいない男性はしばしば自由を謳歌していると描写されるのに」とクラリスは反論する。エロディは「子どもを持ったからといって夫婦が自由を失うとは思わないけれど、新しい価値観が広がれば、もっと状況が改善するかもしれないわね」と述べる。「子どもを持たないかどうかは自分自身によく聞くこと。自分と向き合うことが必要よ」とローラは言う。

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5歳のときにはすでに子どもが欲しくなかった

精神分析医のセルジュ・ヘフェ氏は「子どもを持つ必要性は我々の身体に刻み込まれているものである」と説明する。しかし彼女たちの場合はそれに該当しない。44歳のオリヴィアは子どもを持たない選択をしたことに後悔はなく、「私のDNAには母親にならないことが書いてあるの。家族によれば、私は5歳のときにはすでに子どもが欲しくないと言っていたみたい。着替えもオムツ替えもできないわ。小さい弟がいたけれどほとんど面倒もみなかった」と断言する。

30歳のルイーズは「私の将来計画の中にまだ子どもを持つことは浮上していないわ」一方、ダイアンは「子どもを持ちたいという願望は突然起こるものではないわ、いまは母親になりたいと思わない」ダイアンは幼い頃、双子の母になることを夢見たが、徐々にその願望もなくなっていった。しかし、まだ出産できる年齢で出産しないことを選択するという後悔を恐れているという面もある。

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孤独でみじめな年寄りになる

37歳のローラは「やらないで後悔がすることがあるように、いつか出産しない選択を後悔する日が訪れることは怖いわ」と述べる。シャーロットもまだ疑問を抱えている。「周りの子どもをもつ選択をした人たちをみると、私は本当に心の奥底から子どもが欲しくないのかな、それともXやYの理由で本来もっていたはずの願望を抑圧してしまったのかしら、と考えてしまう」

ダイアンはパートナーとの関係がいつか終わることを恐れる。「子どもを持ちたいか持ちたくないかの意見の相違は、パートナーとの関係に影響を与えるかもしれない」。また、ルイーズは言う。「いつか子どもを持ちたいと思うかもしれない。そんな自分に驚くと思うけれど、まずその時は自分自身の心の声に耳を傾けたいと思う。でもいま現在子どもを持ちたいという願望はないわ。子どもを持つことは将来の投資とは思わないし、20年後『よい選択をした!』と自分が発言するとは想像できないわ」

クラリスは言う。「私が唯一恐れているのは、現代社会や若者たちから孤立したみじめな年寄りになること。でも子どもを持たないからといって周りに子どもがいないわけではないの、甥や姪と強い結びつきがあるわ。母親にはならなくても、私は彼らのゴッドマザーであり、叔母だし、もしかしたら養母にもなるかもしれない。母親や友人としてではなく、シングルとして彼らと関係を築き、生活を支援していきたいわ」

47歳のオリヴィアは、自分自身のこと、自分の知識、自分が好きなことを誰かに受け継ぎたいと考える。仕事で同僚を育成したり、他人や友人を助けたりすることに充足感を持っている。子どもを産み育てることとは異なる方法で多くの人をサポートしている。

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「ある種のカミングアウトをした」

私が母に子どもが欲しくないと告げた時、母は泣いた。結婚したらひとり以上の子どもを設けるのが一般的な社会において、まだ他人の目は冷たいことがある。現在30歳のルイーズは言う。「25歳になるまでは周りも『そのうち子どもが欲しくなるわよ』そう優しく声をかけてくれた」

オリヴィアは振り返る。「35歳にもなると周りは自分のことを無意識で利己的な人間だと見るし、周りからのプレッシャーも強い。同僚は私のことを子どもがいなくて不幸だとか、きっと孤独に人生を終えると思っている。私のことに限らず、皆が子どものいない人生を思い描けないのよ」そうルイーズは言う。「子どもを作らないことを告げた時、私の母は泣いたの。おばあちゃんになる将来の夢が消えてしまったのだから、母親が泣いたのはごく普通のことよ、と私の友人のひとりは言っていたわ」今回インタビューした中でいちばん若いダイアンはそう告白する。

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「母になって子どもに継承するつもりはない」

今日の社会においても、母になることを拒否することは、人類の誕生以来作られてきた社会規範を破ることである。なぜ私たちはこれまで続いてきた安心な人生サイクルを避けるのだろうか。

精神科医のコリーヌ・マイヤーは子を持つ母であるが、10年前に出版された『No kid』(Éd. Michalon刊)という自身の著書の中で、子どもを持たない40の理由について記している。彼女は著書の中でこう述べる。「子どもを持つと人生の意味が何であるかについて考えることなどなくなるわ。子どもと引き換えに自己探求はできなくなる」

議論に加わるシャーロットは、自分が最優先で自分の知性を磨くことが重要であり、母になったとき、子どもにそれらを継承するつもりはないと主張する。クラリスは議論の中で以下のような問いを投げかける。「一般的な人生モデル(カップル・婚姻関係・子ども)が抱える問題点に着目すればするほど、子どもを持つ理由がわからなくなるし、むしろひとりで生きていく人生や恋愛の意義に注目してしまう。また、ここで話すまでもなく、私たちは環境問題や経済的状況など多くの社会問題を抱えているわ」

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texte : Marion Galy-Ramounot (madame.lefigaro.fr), traduction : Hanae Yamaguchi

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