フィガロが選ぶ、今月の5冊 東京とNYで、おいしいごはんを食べながら盗み聞き。
Culture 2018.09.22
隣席の会話をつまみ食い、街の声が聞こえるエッセイ。
『天国飯と地獄耳』
岡田育著 キノブックス刊 ¥1,620
タイトルの由来は、おいしいごはんを食べながら隣席の会話に聞き耳を立てるから。根津の寿司屋で男女2人組に遭遇すれば、どんな関係かと気にかかり、渋谷のモバイルカフェでは、婚活女子たちが男性の前ではしないであろう赤裸々な楽屋話を繰り広げる。好奇心を誘い水に読み進めれば、小説よりも奇なる事実のつまみ食いにニヤリとさせられる。著者が連載途中で渡米し、後半はニューヨークが舞台。自由の国で不自由なのは意外にもおひとりさまの外食。ところ変われど、食べ物を前にすると人は無防備になるらしい。街の声が聞こえてくるエッセイ。
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*「フィガロジャポン」2018年9月号より抜粋
réalisation : HARUMI TAKI
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