一篇ごとのデザインも楽しい、最果タヒの最新詩集。
Culture 2019.12.30
閃光のような一瞬と、なまぬるいいまと。
『恋人たちはせーので光る』
最果タヒ著 リトル・モア刊 ¥1,320
恋をすること、愛すること、大人になる通過儀礼のようなすべてを疑わしく思うことから、この人の詩は始まっている。「蚊がいる、ぼくの精神には、羽音が鳴っている」。もっと血が噴き出るような本当を求めて、安易に受け入れるより潔癖な孤独を選んでしまう。何かがわかりかける手前で、執行猶予のいまを生きている。せーので光る奇跡は、永遠にやって来ないかもしれない。それでも一瞬のスパークに懸けることが、生きていくことであり、詩なのだろう。
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*「フィガロジャポン」2020年1月号より抜粋
réalisation : HARUMI TAKI
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