元気になるエンタメ。#05 超絶美技&メンバーの頑張りに圧倒される、「チアの女王」。
Culture 2020.04.27
元気になるエンタメ作品を厳選して紹介する短期連載。#05は、アメリカNo.1を目指すチームチアリーディングに密着したシリーズ「チアの女王」。
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「チアの女王」(2020年~)
やらなきゃいけないことはたくさんあるのに集中できないとか、最近やる気が出ないとか。そんなダレた気持ちを吹っ飛ばしてくれるカンフル剤! それがドキュメンタリーシリーズ「チアの女王」だ。
アメリカの多くの子どもたちが憧れてやまないチアリーディング。全米屈指のナバロ短期大学のチアリーディング部のチームは、想像を絶する鍛錬を積み重ねて「全米大学チア大会」の頂点を目指す。
テキサス州の田舎町コーシカーナにあるナバロ短期大学には、全米屈指のチームチアリーディング部がある。常に完璧さを求める主任コーチ、モニカ・アルダマによる、ときに非情とも言える厳しい指導の下、チームは「全米大学チア大会」での優勝を目指す。割とよくあるタイプのスポ根モノにも思えるが、アメリカでは配信されるや否や、多くの著名人たちから絶賛の声を集めた。その理由は、LGBTQや貧困、育児放棄、元不良など家庭環境や家族関係に問題を抱えているなど多種多様な生徒たちが、チームメイトに命を預けて、危険で難易度の高い技に果敢に挑む姿は、まさに多様性と協調性を体現しているものだから。これこそが現在の分断されたアメリカ社会のあるべき姿であり、日本でも昨年話題になった「ワンチーム」を地で行くものでもあるだろう。
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チアリーディングに欠かせない組み体操のようなパフォーマンス=スタンツは圧巻! 大きな危険を伴うスタンツの難易度と完成度が、採点を大きく左右する。
もちろん、そうしたメッセージは重要な要素だ。でもあれやこれやを考えずとも、本作には問答無用のパワフルさがある。本作で映し出されるチアリーディングとは、想像を絶するほど過酷で、気が遠くなるような努力とたゆまぬ鍛錬を要するハードなスポーツだ。冒頭から映し出される生徒たちの身体能力とバイタリティには、ただただ圧倒されっぱなし! 同時にこれほどまでの試練を経て、わずか2分数十秒の晴れの舞台でのパフォーマンスに懸ける思いの強さに泣けてくる。シリーズは大会当日の最後の最後まで気の抜けない展開で、視聴者の誰もが今度こそもうダメ……と思ってしまうような事態にも直面するのだが、それでもコーチとチームは諦めない。これぞまさしく“折れない心”。
どんなに努力しても、スタメンに選ばれるとは限らない。たとえ自分が選ばれなくとも、最終的にはチームのメンバーを応援し、日々の努力を怠らない生徒たちの姿に胸が熱くなる。
チアリーディングにプロの世界はないのだという。ナバロ短期大学を卒業したら、チームのメンバーたちはどうするのか? 言ってみればチアリーディングは人生のひとつの通過点でしかないのだ。それでもチアに魅せられ、その道に進み、いま自分にできること、目の前にあることに全身全霊を懸けてベストを尽くす。そんなモニカと生徒たちの姿は、いまこの瞬間を生きることの素晴らしさを理屈ではなく体感させてくれる。
「チアの女王」予告編。
原題/Cheer
出演/モニカ・アルダマほか
Netflixオリジナルシリーズ
Netflixにてシーズン1独占配信中
texte : SACHIE IMA