女王のお気に入りの息子の転落......エプスタイン事件後、王室はアンドルー王子を排除。

Culture 2022.02.22

2022年2月15日、ヨーク公アンドルー王子を性的虐待で訴えていたヴァージニア・デュフリーとの示談が成立したことが発表された。しかしながら裁判沙汰にまでなってしまったことに王室は困惑し、王子は孤立を深めている。

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(左から)バッキンガム宮殿のバルコニーで話すカミラ夫人、チャールズ皇太子、アン王女、エリザベス女王、アンドルー王子、ジャック・ブルックスバンク。(2019年6月8日、ロンドン) photo: Getty Images

アンドルー王子が今後支払う和解金は1200万ポンドと報道されている。原告の30代のアメリカ女性は、億万長者ジェフリー・エプスタインを介してアンドルー王子と知り合い、17歳の時に性的暴行を受けたと訴えていた。2022年2月15日、当事者間で示談が成立したとの発表があった。「ザ・サン」紙の最近の報道によれば、アンドルー王子はエリザベス女王とチャールズ皇太子からの借金で和解金を支払うようだ。こうしてベアトリス王女とユージェニー王女の父親は裁判で判決を受ける不名誉から免れた。

しかしアンドルー王子が今後王室内で復権することはありえない。イギリス王室の伝記作家であるイングリッド・シュアード氏は、「この和解は王子にとって唯一の道でした。とはいえ、もう先はありません。今後、性的虐待の被害者のために活動するとも思えませんし、ひっそりと暮らしていくしかないでしょう」と語る。裁判沙汰になったことでイギリス王室は困惑し、一時期は追放案も出たと言われている。

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アンドルー問題

「アンドルー王子が王室にダメージを与えているというのが、みんなの共通認識でした」と、ある情報筋は2022年1月14日付の「ザ・サン」紙に語っている。2021年のクリスマス休暇中、チャールズ皇太子は不肖の弟に対する懸念をノーフォークで休暇中だった長男ウィリアム王子に打ち明け、さらに末弟のエドワード王子や妹のアン王女とも相談した。

「アンドルー問題」対策の会合が何度か開かれ、一度は本人も出席した。最終的な結論は、アンドルー王子から軍や後援団体における称号を剥奪しなければ王室のイメージに傷がつくというものだった。この要求には、150人の英国退役軍人も賛同した。アンドルー王子を可愛がっていたエリザベス女王にも選択の余地はなく、この案を渋々ながら認めた。

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称号の返還

アン王女とエドワード王子が本人に告げる嫌な役目を引き受け、1月初め、かつてのクイーンマザーの住居で、現在アンドルー王子が住んでいるウィンザーのロイヤルロッジを訪問した。娘のベアトリス王女とユージェニー王女、そしてアンドルー王子と同居している元妻のサラ・ファーガソンは不在だった。

母娘は混沌とした状況を逃れて静かなスイスのスキー場で数日間の休暇を過ごしていたからだ。アンドルー王子の称号剥奪はアン王女とエドワード王子の訪問から数日後、正式に発表された。バッキンガム宮殿は、2022年1月13日、「女王の承認と同意を得て、ヨーク公は軍および王室が後援する団体の役職を返還した」と発表した。

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ひっそり生きていく

アンドルー王子は今後ひっそり生きていかなくてはならない。「チャールズ皇太子はアンドルー王子が 『視界に入らない』ことを望んでいる」と、2022年2月14日のデイリー・ビースト誌は見出しに掲げた。「ザ・サン」紙も匿名の情報筋からの話として「王子は目立つなと釘を刺されている。チャールズ皇太子は、アンドルー王子が帰宅してカメラマンに陽気に手を振る写真が1日おきにメディアに載るのを見たくないと思っている」と報じた。

デイリー・メール紙によればチャールズ皇太子は弟をウィンザー城から追い出すことさえ考えていたそうだ。2019年11月にアンドルー王子がBBCの番組「ニューズナイト」に出演して大失言をした経験から、エリザベス女王とチャールズ皇太子はこれ以上公衆の面前で恥の上塗りをすることは絶対に避けたいと考えている。2022年末に出版予定のハリー王子の回顧録の中で、アンドルー王子に関するどんな暴露が飛び出すかわからない以上、なおさらだ。

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救いの扉

そんな中、エリザベス女王とチャールズ皇太子は、すでに傷ついた王室のイメージを守り、アンドルー王子自身のイメージも守るため、ヴァージニア・ジュフレへの和解金をふたりの私財で賄うことにした。「ふたりがお金を出すのは愛情からだ。王子が自己破滅に陥るのを救おうとしている」と王室に近い情報筋は、ザ・サン紙に語った。

少なくとも、女王はそう願っている。アンドルー王子を支援するかの質問を記者から受けたウィリアム王子が聞こえなかったふりをしたように、王室メンバーの大多数がすでにアンドルー王子から距離を置いている。だが、エリザベス女王は息子を守ることを決して諦めていない。母親としての義務と君主としての義務の狭間で、君主は次男を「助けようと必死」になっている。

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それでも女王は支え続ける

いま、エリザベス女王がなによりも優先しなくてはならないのは、在位70年を祝うプラチナ・ジュビリーの行事が6月2日から5日にかけて予定されているなかで、すでに傷ついたウィンザー家の評判を守ることだ。アンドルー王子が締結した和解条項の中には、祝賀行事まで、バージニア・ジュフレが王子による性的暴行の告発について公に発言しない項目が含まれている。

アンドルー王子から公爵、副提督、国家評議員の称号も剥奪するべし、という声があったにもかかわらず、女王はそうしなかったとテレグラフ紙は報じている。それでもダメージは大きい。アンドルー王子が連隊長を務めていた英国の由緒あるグレナディア近衛歩兵連隊は新しい連隊長にキャサリン妃を希望する要望書を提出した

text: Chloé Friedmann (madame.lefigaro.fr)

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