聖油はヴィーガンオイルに!? チャールズ3世、戴冠式を改革。

Culture 2023.05.02

イギリス国王の戴冠式は10世紀から続く伝統の行事だ。変えずに守っていくべき要素はあるものの、新国王チャールズ3世は変化にも前向きだ。

aflo_217314117.jpg
戴冠式に備える英国の王室ファン。photography: reuters/aflo

エリザベス女王の戴冠式からおおよそ70年ぶりだが、息子チャールズ3世の儀式も似たような感じになるだろう。祭壇で国王が即位の宣誓をおこない、法と正義に従って判断すること、英国国教会を守ることを誓う。その後、戴冠式用の「エドワード王の椅子」に座り、カンタベリー大司教から聖油を塗布され、王笏(セプター)2本と宝珠(オーブ)、マントを与えられ、最後にカミラ王妃に見守られながら頭に王冠を戴く。ここに至って列席者はようやく国歌「ゴッド・セーブ・ザ・キング」を歌うことができる。

伝統にのっとった式次第は変わらない一方で、新国王がなんらかの形で新しい要素を加えることが期待されている。英「デイリーメール」紙はすでに昨年10月、チャールズ3世が戴冠式で英国の多様性をアピールすることになると報じた。具体的には、国内の主な宗教団体(キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、ヒンズー教、仏教)の代表者を招待する予定とのことだった。

---fadeinpager---

なるべく簡素に

イギリスの経済が厳しい状況のなか、チャールズ3世は世相に敏感な君主として簡素な式を望み、戴冠式の参列者は約2000人に抑えられた。70年前の1953年、エリザベス女王の戴冠式では8000人が参列し、スタンド席を特設する必要があったのとは対照的だ。チャールズ3世が推進する君主制の「合理化」、要するに公務を行う王室の人数を7人に減らす方針にも適っている。もうひとつ簡素化されたのは式の長さで、1953年には3時間近くかかったものが今回、1時間強に短縮された。

ティアラも少なめ

エリザベス女王の戴冠式では、王室や貴族階級の女性のほとんどがティアラを着用した。チャールズ3世の戴冠式のドレスコードはまだ明らかになっていないが、主要な王室メンバーの女性を除き、ほとんどの女性は帽子やヘアアクセで済ませることになりそうだ。

>>関連記事:エリザベス女王の国宝級のジュエリーコレクション、受け継ぐのは誰?

---fadeinpager---

貴族院議員の服も簡素化

貴族院を含む国会議員の出席人数は投票によって決まることになっている。1953年のエリザベス女王の戴冠式には800人以上の国会議員が出席した。とりわけ爵位と議席を代々受け継ぐ貴族院議員は皆、戴冠式用緋色のベルベットローブに身を包んだ。その後1999年に貴族院の議席継承が改革され、今回の貴族院メンバーはこの特別な服装をしないよう要請されている。代わりに議会開会式のローブか、通常の服装で出席することになるだろう。

王冠はアップサイクル

戴冠式でチャールズ3世が戴く王冠は「クラウン・ジュエルズ」のマスターピースのひとつ「聖エドワード王冠」だ。カミラ王妃の方は1911年にチャールズの曾祖母であるメアリー王妃のために作られた王冠を使用する。戴冠式用に王妃の冠を新たに製作せず、既存のものを加工して済ませるのは直近3世紀の間では初めてのことだそうだ。

>>関連記事:世界最高峰のダイヤモンドにも注目!英国王の戴冠式。

---fadeinpager---

ヴィーガンオイル

聖油に使用するオイルには動物性成分を使わず、ゴマ、ジャスミン、シナモン、ネロリ、安息香、アンバー、オレンジブロッサムで香りをつけたオリーブオイルを使用する。伝統的には、鯨の腸結石であるアンバーグリスも使用されていた。

ギリシャ正教聖歌とゴスペル

チャールズ3世の父、フィリップ王配は2021年4月に99歳で亡くなったが、ギリシャ王家の出身であり、ギリシャのコルフ島で生まれた。この縁から戴冠式にギリシャ正教の聖歌隊が初登場する。ギリシャ正教音楽の専門家であるアレクサンダー・リンガスがこの日のために特別編成した「Byzantine Chant Ensemble(ビザンチン聖歌アンサンブル)」だ。さらにゴスペル聖歌隊「The Ascension Choir(主の昇天聖歌隊)」も初登場。新しいことに意欲的な国王の意向で実現した。

>>関連記事:【写真】フィリップ王配の完璧なスタイルを振り返る。

---fadeinpager---

ガールズパワー

戴冠式には格式高いパブリック・スクール「ウェストミンスター・スクール」の奨学生も列席する。1953年には男子校だったが、今では女子生徒もいる。生徒たちはラテン語で「Vivat Rex Carolus!」(「チャールズ王万歳!」)と君主を讃えるだろう。

馬車に乗る時間は少なめ

エリザベス女王は、260年前に作られた馬車で乗り心地の悪い「ゴールドステートコーチ」を戴冠式の往復路とも使用した。チャールズ3世とカミラ王妃はこの馬車を復路にのみ使用し、往路はサスペンションやエアコン完備の最新型馬車「ダイヤモンド・ジュビリー・ステート・コーチ」を使う。しかも復路はエリザベス女王が7キロ以上の距離を2時間かけて宮殿へ戻ったのに比べ、2キロとはるかに短い距離となった。

軍隊もコンパクトに

復路の行進に関して言えば、1953年には29,000人の軍人が参加したのに比べ、今回は音楽隊も含めて約4,000人の軍人が参加とだいぶコンパクトになる。

text: Ségolène Forgar avec AFP (madame.lefigaro.fr)

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

シティガイド
フィガロワインクラブ
Business with Attitude
編集部員のWish List!
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories