我が愛しの、ジェーン・バーキン チームワークを愉しんだ女優、ジェーン・バーキン映画リスト。【1990年代以降】
Culture 2024.06.14
圧巻の作品リストだ。若い時は長い肢体で魅せるファッション映画、コメディエンヌとしても活躍し、芸術家のパートナー役や同性愛も演じた。錚々たる映画作家に起用され、残した軌跡がここに。
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1990年代以降
心地良いお酒を飲んだ時のような......。
『ダディ・ノスタルジー』
タヴェルニエ監督が『ベニスに死す』『愛の嵐』で知られるダーク・ボガードを迎えてフランスで撮った作品。南仏に住む父が手術を受けたと知り、長年疎遠だった娘がパリから両親の元に赴く。父の余命が長くないと知り、娘は過去の空白を埋め、父を理解しようと務める。名優ボガードとジェーンの共演がなんとも魅力的。全編に優しいノスタルジアと穏やかな空気が漂い、口当たりの良い酒を飲んだ時のような心地良さに浸れる。ジェーンとジミー・ロウルズがデュエットする主題歌「These Foolish Things」のジャジーな味わいも最高だ。
ジェーンの演技も際立つ高評価問題作。
『美しき諍い女』
カンヌ国際映画祭でグランプリに輝いたリヴェット監督の代表作。著名な画家、フレンホーフェル(ミシェル・ピコリ)は創作意欲を失い、元モデルだった妻(ジェーン)とともに南仏の別荘で暮らしている。ある日若い画家が恋人(エマニュエル・べアール)を連れて訪れると、フレンホーフェルは彼女をモデルにして、かつて創作を中断した「美しき諍い女」を完成させる意欲をかき立てられる。それを知って彼の妻は微妙な気持ちになる......。ベアールの全裸姿がセンセーショナルに語られがちだが、脇で支えるジェーンの存在が特別な絆で結ばれる芸術家とその妻の姿を映し出し、映画に深みを与えている。
ハリウッドスターと映画生誕100年を祝う。
『百一夜』
映画生誕100年を記念してヴァルダ監督が撮った、フィクションとドキュメンタリーを織り交ぜ、映画へのオマージュを込めたコメディ。ジェーンはもとより、ロバート・デ・ニーロやハリソン・フォードらハリウッドスターまで、世界中から集まった出演者の顔ぶれが豪華だ。
自身の歌の口パクが超絶可笑しい!
『恋するシャンソン』
©️ Mary Evan/amanaimages
アラン・レネ監督作のなかでも、最も人気の高い作品の一本。アパート探しをきっかけに知り合う7人の男女のラブストーリーだが、ユニークなのはそのスタイル。ドラマの場面で登場人物が突然歌いだすのだがすべて口パクで、通常のミュージカルとは一味異なる。フランスでポピュラーな楽曲の歌詞に合わせて登場人物が演技する、その異化効果がとぼけたユーモアを醸し出す。もちろんジェーンも自分の持ち歌を口パクしている。
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アイヴォリーともタッグを組んで。
『シャンヌのパリ、そしてアメリカ』
アメリカ人作家ジェイムズ・ジョーンズの娘、ケイリーの自伝を、『眺めのいい部屋』のジェームズ・アイヴォリーが映画化。アメリカ人の両親の下でパリに生まれ育ったヒロインが、その後10代でアメリカに戻ることになり、2国間のギャップに悩む。パリ時代にヒロインが世話になるマダムをジェーンが演じる。
年下を誘惑する女性映画監督。
『これが私の肉体』
いまや人気俳優となったルイ・ガレルが18歳でジェーンと共演した官能的なドラマ。ブルジョワ家庭で父親の後を継ぐべく名門校に通いながらも、内心は疑問を抱いている青年が街でスカウトされ、ミステリアスな女性監督(ジェーン)のオーディションを受ける。採用されるも父親から猛反対を受けた彼は、監督の家に転がり込む。年下の青年を操る熟女の重層的な魅力をジェーンが体現した禁断のドラマ。
半自伝的な物語を自作、自演で。
『Boxes』(英題)
ブルターニュ地方の海沿いに越したアンナは多くの段ボールに囲まれたまま日々を過ごしている。思い出の詰まったその箱を開けるたび、過去の出来事が彼女の記憶に蘇るからだ。それぞれ父親の異なる3人の娘たち、彼女たちの父親、年を取った父と母。メランコリーを抱えながらも、彼女は過去を整理して未来に目を向けようとする。ジェーン自身の人生とオーバーラップする物語が、切なく胸に染みる。3女には実娘のルー・ドワイヨン、ナターシャ・レニエ、本作でデビューしたアデル・エグザルコプロスが扮している。
ヴァルダを称えるイマジネーション。
『アニエスの浜辺』
ヴァルダ監督が自身の人生をユニークなスタイルで描いたドキュメンタリー。ジェーンをはじめ、彼女と親交のあった俳優、アーティストらが登場する。
年齢を重ねて再びリヴェットと。
『ジェーン・バーキンのサーカス・ストーリー』
©️ Capital Pictures/amanaimages
ジャック・リヴェットと再タッグを組んだ本作は、いつものリヴェット作品のような演劇的、重層的な空間から離れ、年齢を重ねた男女の触れ合いをシンプルに見つめる。サーカスの団長である父が急逝したことで15年ぶりに一座を訪れるべく南仏に来たケイトは、車が故障したところをイタリア人旅行者のヴィットリオに助けられる。ケイトとサーカスを訪れた彼は次第に、世界から取り残されたようなこのコミュニティとケイトに惹かれていく。イタリアの名優セルジオ・カステリットとジェーンのやりとりに人間的な温もりがあふれるとともに、リヴェット監督の優しい眼差しを感じる。
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恋を忘れぬ熟女のロードムービー。
『テルマ, ルイーズ・エ・シャンタル』
アラフィフ女性たちの孤独、鬱憤をテーマにしながら、なんとも爽快で楽しいコメディ。旧友であるシャンタル(カトリーヌ・ジャコブ)、ガブリエル(カロリーヌ・セリエ)、ネリー(ジェーン)の3人は、ネリーのかつての恋人の結婚式に招待され、フランス南西の避暑地ラ・ロシェルに車で一緒に旅をすることに。道中、ハプニングに見舞われながら、その都度若い男たちに流し目を送る熟女パワーは必見。相変わらずボーイッシュな短髪にとびきりの笑顔が浮かぶジェーンの溌剌ぶりも印象的だ。いくつになっても恋を忘れない、フランス女性の典型のような彼女たちに元気がもらえる。ちなみに題名はリドリー・スコットの『テルマ&ルイーズ』に掛けたもので、3人の憧れるボーギャルソンがブラッド・ピットという洒落も。
ゲンズブールの内面を知る。
『ノーコメント by ゲンスブール』
20代から60代までゲンズブールが自身について語った既存の録音テープをもとに、その「語り」だけを使い、過去の映像を繋ぎ合わせて構成したドキュメンタリー。彼と関わりのあった恋人、女優、シンガーたちが走馬灯のように登場し、ジェーンもフィーチャー。お宝映像満載で、ゲンズブールの音楽が110曲使用されている。彼の内面を深く知ることができるドキュメンタリーだ。
ボスニアへの思いを込めて。
『ある愛へと続く旅』
セルジオ・カステリットが作家である妻が書いた原作を映画化。90年代のボスニア紛争を背景に戦争写真家の夫を現地で亡くしたヒロインが、時を経て、息子とともに現地を訪れる。ジェーンは精神分析医の役で出演。
フレンチ女優たち憧れの監督作にカメオ出演。
『ヘウォンの恋愛日記』
ホン・サンス監督による教授と秘密の恋人関係にある女学生の恋のトライアングル。ジェーンの役柄は教授の母。カメオ出演だが、彼女自身の希望により実現した。
恋のときめきと列車と。
『彼女とTGV』
実話をもとに、ある孤独な年配の女性とフランスの新幹線と言われるTGVの運転士との文通に始まる恋を描く。アカデミー賞の短編実写映画賞にノミネート。
娘シャルロットが捉えたジェーン。
『ジェーンとシャルロット』
シャルロット・ゲンズブールが映画監督として初めて挑戦したドキュメンタリー。鎌倉を訪れた際の母ジェーン・バーキンとの対話、ノルマンディにある家族の家に漂う生活の匂いなど、リアルな母娘の関係性が現れる。
>>シャルロット・ゲンズブールがレンズを通して見つめた、ジェーン・バーキンの最期の日々とは?
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▶︎ジェーン・バーキン、永遠のファッションアイコンの魅力を紐解く。
*「フィガロジャポン」2024年3月号より抜粋
texte: Kuriko Sato