「子供の頃の視点を取り戻したい」をテーマに、小林エリカが選んだ3冊。【いま知りたいことを、本の中に見つける vol.4】
Culture 2025.08.17
知りたい、深めたい、共感したい──私たちのそんな欲求にこたえる本を26テーマ別に紹介。各テーマの選者を手がけた賢者の言葉から、世界が変わって見えてくる贅沢な読書体験へ!
vol.4は「子供の頃の視点を取り戻したい」をテーマに、作家、アーティスト・小林エリカが選んだ本3冊を紹介。夏休みシーズン、本と一緒にあの頃の記憶を蘇らせてみては?
選者:小林エリカ(作家・アーティスト)
子供の頃の視点を取り戻したい。
我が身を振り返っても、子供だからといって純真無垢で天真爛漫なだけではなかったし、色々考えていたし、案外、大人に気も使っていたような気がする。だから、私は、子供だからといって、いやに上から目線で何かを教えてこようとするひとだとか、可愛いものやなまぬるいものばかりを与えてくるひとのことは、おおいに警戒している。
翻って、子供だからといっても手加減なしに、誠実に、ひとりの人間として向かい合ってくれるようなひとや作品に出会うと、その真摯さに、私は胸打たれてしまうし、いつだって、そういう本に出会いたい。
1. 『みえないもの』
イリナ・グリゴレ著 柏書房刊 ¥1,980
青森で娘たちといっしょに過ごす日常から、それは故郷ルーマニアに、幾つもの映画に、異なる場所に暮らす女たちが受けた暴力や苦難の記憶へまで、繋がり、編みあげられてゆく。子供たちとともにあることは、この世界にあまりにもあふれる美しさや残酷さに目を見ひらかされることでもあるのだった、と私は私自身の子供との時間も思い返しながら、そのきらめいていて、ひりひりした感触を、あたかもはじめて知るような感覚になる。
>>Amazonでの購入はこちら
2. 『かしこくて勇気ある子ども』
山本美希著 リイド社刊 ¥1,980
はじめての子供を妊娠した女と、そのパートナーである男が、自分たちの子供がいったいどんな風に育って欲しいかを考え、悩み、もがく様子を、軽やかで、挑戦的な画で魅せるグラフィックノベル。自分自身もずっとかしこくて勇気ある子供になりたかったし、子供にもそうなって欲しいという望みをかけながら、でも現実を前に落ち込むことも多くあり、それでもどこか明るい場所を目指したいと願うことそのものをも肯定できるような気持ちになる。
>>Amazonでの購入はこちら
3. 『世界の女の子の昔話』
中脇初枝著 うえのあお画 偕成社刊 ¥1,540
ハイチ、韓国、イラン、チリ......世界のさまざまな場所で語り継がれてきた、女の子たちが人生をきりひらいていく昔話集。ひとつひとつの話はときに突拍子もなく、ときに痛快で、過去の女の子たちの話はときを超え、いまを生きる女の子たち(おばさんやおばあさんも含む)を大いに励ましてくれる。ちなみに中脇初枝さんの幕末から明治維新の時代にかけて、高知で女性の参政権を求めて立ち上がった女性を描く『天までのぼれ』(ポプラ社刊)もぜひ多くの子供たちにも読んで欲しい。
>>Amazonでの購入はこちら
目に見えないもの、歴史、家族や記憶などから着想を得て、小説、映像やドローイング、テキストを交えたインスタレーションに落とし込む。著作に、小説『女の子たち風船爆弾をつくる』(文藝春秋刊)、『おこさま人生相談室』(柏書房刊)、絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店刊)、翻訳にタラブックスの絵本『わたしは なれる』(green seed books刊)ほか。
https://x.com/flowertv
https://www.instagram.com/erika.kobayashi_sculpture/
紹介した商品を購入すると、売上の一部が madameFIGARO.jpに還元されることがあります。
*「フィガロジャポン」2025年9月号より抜粋