花田菜々子が選ぶ、6冊の「笑える!」本。【いま知りたいことを、本の中に見つける vol.13】
Culture 2025.09.06
知りたい、深めたい、共感したい──私たちのそんな欲求にこたえる本を26テーマ別に紹介。各テーマの選者を手がけた賢者の言葉から、世界が変わって見えてくる贅沢な読書体験へ!
vol.13は「笑える!」をテーマに、蟹ブックス店主、書評家・花田菜々子が選んだ6冊を紹介。最近本読めていないな......という人にもぴったり。クスっと笑える本と一緒にリラックスタイムを。
選者:花田菜々子(蟹ブックス店主・書評家)
笑える!
本を読むのが好き、と言うと、ときどき「すごい」「えらい」と的外れな褒め言葉をいただくことがあります。本には何か立派なことや難しいことが書いてあると思われているんですね。実際には「くだらない」「しょうもない」も、本ならではの得意ジャンル! しかも本で味わう笑いは、著者と自分のふたりで思いをひっそり共有できたような距離の近さを感じられて格別です。大人になると「昔は好きだったのに、最近本が読めていない」と悩む声もよく聞くのですが、そんなときこそまずは気楽に笑える本で読書復帰チャレンジをするのもいいかもしれません。
1. 『ひみつのしつもん』
岸本佐知子著 ちくま文庫 ¥792
笑えるエッセイといえばこの人、岸本佐知子。海外文芸好きなら知らない人はいないほど誰もが憧れる有名翻訳家なのに、本人の実生活はそんな憧れからは遥か遠く......。ときに間抜けだったり情けなかったりする日常の何気ないワンシーンから妄想がどんどん膨らんでいって、最後には「え、このエッセイ、どこまでがほんとなの?」と思わせるような奇想的な展開は、まさに文章でしか到達できない笑い。滋味あふれるおもしろさを味わって。
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2. 『好きな食べ物がみつからない』
古賀及子著 ポプラ社刊 ¥1,760
「好きな食べ物って何かありますか?」、日常会話で当たり前にありそうな質問。けれど即答できない人も意外と多いのでは。この本は著者が一冊まるごとかけてその答えを探す、壮大すぎるノンフィクションストーリー。どうでもいいテーマと著者の気合いの温度差に笑いが込み上げます。でも読み終える頃には「好きって何だろう?」「自己表現って何だろう?」の解像度が上がっているはず。
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3. 『藤岡拓太郎作品集
夏がとまらない』
藤岡拓太郎著 ナナロク社刊 ¥1,100
多分いま地球上でいちばん笑える本。大喜利の問いのような長いタイトルのもとでテンポよく繰り出される2コマ漫画の登場人物たちは、言動が怖くて不気味なおじさんやおばさんたちと、彼らに翻弄される子どもたち。シュールなギャグは子どもから大人まで誰もが爆笑できる内容だけど、ときおり、切なさと温かさが入り混じり、その奥深さに心を掴まれます。大切な友だちにプレゼントしたくなるような一冊。
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4. 『ヨイヨワネ あおむけ編』
5. 『ヨイヨワネ うつぶせ編』
ヨシタケシンスケ著 ちくま文庫 各¥924
絵本作家として大人気のヨシタケシンスケがライフワークとして続けている日々のスケッチ。そこにはイラストとともにネガティブ全開の弱音も綴られています。膨大なスケッチの中から特に「よい弱音」を集めたら1冊では収まらず2冊になってしまったというこちらは、前向き・ポジティブな雰囲気が苦手な人なら共感間違いなし! 可愛い絵と卑屈なセリフのギャップに思わず「ぷぷっ」と笑ってしまいます。
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6. 『宇宙の果てには売店がある
生活感のあるSF掌編集』
せきしろ著 シカク出版刊 ¥1,980
古今東西、SFといえばとにかくかっこいいもの。題材が宇宙戦争でも未来への不時着でも、彼らはいつもキリッとしています。ところがこの本で描かれるのは宇宙旅行が当たり前になった時代の「あるある」。宇宙のATMの手数料が高いとぼやいたり、コールドスリープのカプセルにポケットの小銭を落としたり、宇宙の飲食店で「まいうー」と書かれたサインを見つけたり......。宇宙とダサさの組み合わせについ失笑が漏れます。
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1979年、東京都生まれ。ヴィレッジヴァンガードなど複数の書店を経て、2022年、高円寺に蟹ブックスをオープン。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』(河出文庫)など。
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*「フィガロジャポン」2025年9月号より抜粋
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