読書の秋、自分を見つめ直すきっかけに。心揺さぶる4冊を紹介。
Culture 2025.10.12
言葉を問い直し、率直な言葉を受け取る。
読書の秋、自分を見つめ直す機会にもぴったりな4冊をご紹介。
虚言が横行するいま、言葉の限界を問い直す傑作長編。

『トピーカ・スクール』
1997年のカンザス州トピーカ、高校生のアダムは競技ディベートで優勝するほど相手を打ち負かすための言葉の技法に長けていたが、ある日、自分の言葉の暴力性に気付く。臨床心理士の両親もそれぞれに言葉の限界と直面する。他者を論破して支配するための言葉は、人々を分断し孤立させる。言ったもん勝ちの虚言が横行するいま、詩人でもある著者はトランプ時代のアメリカの起源に遡り、他者と共存するための言葉を問い直す。
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戦争に翻弄された母の人生を、娘が辿る珠玉の回想録。

『戦争みたいな味がする』
精神を病んだ母親は「戦争みたいな味がするから」と脱脂粉乳には手をつけなかった。スケトウダラと大根を煮込んだ昔ながらの鍋料理センテチゲを作ると「40年ぶりの味だわ」と喜んだ。日本で生まれたが日本を追われ、分断された故国でアメリカ人と恋に落ち、故国も追われる。渡米し結婚するが、アメリカもまた安息の地ではなかった。戦争に翻弄された母親の過酷な人生を、韓国系アメリカ人の娘が食を通して辿った回想録。
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人間の秘めた潜在能力を、科学的知見から解き明かす。

『人間には12の感覚がある
動物たちに学ぶセンス・オブ・ワンダー』
五感、六感どころではない。人間には12もの"超感覚"がある。目隠しをしているのに部屋の大きさがわかるのは聴覚の空間把握能力のおかげだ。目には時間を感知する力があり、渡り鳥のように地球の磁気を感じることも可能かもしれない。著者はリチャード・ドーキンスに師事。動物たちの不思議な感覚から、人間の秘めた潜在能力を解き明かす。驚くべき発見の連続に世界の見え方が変わる。
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偉大な詩人の最晩年の言葉のみずみずしさに打たれる。

『行先は未定です』
21歳で第一詩集『二十億光年の孤独』を刊行してから、2024年に92歳でこの世を去るまで新しい作品を生み出し続けた国民的詩人、谷川俊太郎。最晩年に語った111の言葉と新旧合わせて44の詩を集めた一冊。「僕は昔から自分自身に関心がないんです。いまは生きている意味もなくていいと思える」。奇をてらわない日常に即した言葉で遠くまで行けることを教えてくれた。率直な言葉のみずみずしさに、あらためてその偉大さを想う。
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*「フィガロジャポン」2025年11月号より抜粋
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text: Harumi Taki