2025年もよくドラマを観た。今年は私の眼球が何本の連続ドラマを追いかけたのか?と目算してみると、約110本を走破していた。これを30年以上、趣味として追いかけてきたけれど、そろそろ衣食住に域に突入してくるかもしれない。さて2025年の地上波放映のドラマ、総じて面白かった。年初「ホットスポット」(日本テレビ系)で、宇宙人について真剣に考えていたのは、もう遠い過去。続けて、春夏秋と順調に良作が誕生している。
今年、個人的に気になったトピックといえば「ベテラン女優たちの主演作」。残念ながら現在の日本では主演俳優=30代を中心に男性が圧倒的に多い。最近では50〜60代の活躍も目立つが、女性の数は少ない。主演作があったとしても20〜30代の起用がほとんどで、つまり"ベテラン"層はバイプレイヤーに回るしかない。ところが今年は「続・続・最後から二番目の恋」(フジテレビ系)で、小泉今日子(59歳)が、「ディアマイベイビー~私があなたを支配するまで~」(テレビ東京系)で松下由樹(57歳)が主演......と、潮流が変わっていく様子を感じられた。これが日本ドラマ界の夜明けになると願って、勝手に今年のドラマでベスト5を採点させてもらった。いまや便利な時代で、サブスクがあればほぼ作品は視聴可能。大型連休の年末年始、ぜひ今年の良作に浸ってみては?
2025 BEST DRAMA 第5位|「じゃあ、あんたが作ってみろよ」
U-NEXT配信中/TBS系/夏帆、竹内涼真
昭和の古臭い慣習に脳内を占拠されていた、九州男児の海老原勝男(竹内)と、自我を抑えて結婚だけを夢見てきた山岸鮎美(夏帆)が成長していく物語。パンチ&説得力のあるタイトルで、放送前から期待の高かった本作。終わってみると、時代に沿ってアップデートをする、相手の立場を思いやる、自分らしさを持つ......といった、誰もが分かっていそうな姿勢を改めて教示してくれたドラマだった。毎週、スポンジのように情報を吸収しながら、アウトプットもして成長していく勝男と鮎メロに、観ているこちらが励まされた。ふたりの成長ぶりを確かめたいので、スペシャルかシーズン2の放送を待ちたい。お正月、親戚同士で集まっている会場に教育VTRとして、ぜひ流してほしい"じゃあつく"。ひょっとしたらあなたの実家も、海老原家のように女性が働いて、男性がどっしり構えて座って飲んでいませんか?
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2025 BEST DRAMA 第4位|「波うららかに、めおと日和」
FOD配信中/フジテレビ系/芳根京子、本田響矢

舞台は昭和11年の戦中・戦後。なつ美(芳根)は帝国海軍の中尉・江端瀧昌(本田)と、顔も知らぬままお見合い結婚。恋愛経験ゼロのふたりによる夫婦生活を描く。心に潤いを所望するあなたに観てほしい、ラブコメディ。私も最初は何となく観ていたけれど、なかなか初夜に到達しない江端夫妻にしびれを切らしつつ、目が離せなくなっていた。しまいには翌週の放送までに最新話を復習して、飲み会は断ってリアタイ必至。何でしょう、人の心とは純粋さに惹かれていくのでしょうか。そんな作品の魅力を引っ張っていたのは、やはり芳根京子演じる、なつ美の純度の高さ。いつも太陽のように朗らかなのに、海軍員の瀧昌がいつ帰ってくるのか分からない仕事に出かけると「寂しい」と声を上げて泣く。私も泣いた。妻を支える夫もまた実直の塊のような人柄で......ふたりとも可愛すぎた。
Blu-ray:29,645円(税込)DVD:24,200円(税込)
発売元:フジテレビジョン販売元:TCエンタテインメント
©西香はち/講談社©フジテレビジョン
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2025 BEST DRAMA第3位|「ばけばけ」
毎週月〜土曜8:00〜、13:45〜放送中/NHK総合/髙石あかり、トミー・バストウ

明治時代の島根県松江市を舞台に、松野トキ(髙石)とレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)が"怪談"を通じて、心を寄せ合っていく日々を描く。2025年〜2026年と、年を跨いで放送中の「ばけばけ」。ヒロインの髙石あかりさんの演技が、本当に素晴らしい。(本当はヘブン先生をお慕いしているけれど......言えない....../12月24日放送による)といった、言葉にならない声や機微を表現する力が秀逸。片言の日本語のヘブン先生、英語はからっきしのトキを見ていると、愛情があれば気持ちは通じていくのだと、つい顔がほころんでしまう。ナレーションを務める阿佐ヶ谷姉妹の温度もちょうどいい。余談ですが、私が子どものころ、彼の生涯を描いたドラマ「日本の面影」(NHK総合/1984年)を夢中で見た記憶から、ラフカディオ・ハーンこと小泉八雲の大ファン。今回の朝ドラ決定時も大歓喜でした。まさに時を超えて愛される作品で、年明けから放送に追いついてもおもしろいはずなので、この機会にぜひ。
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2025 BEST DRAMA第2位|「それでも俺は、妻としたい」
Netflixなど配信中/フジテレビ系/風間俊介、MEGUMI
脚本家の足立紳が原作、脚本、監督さらには自宅をロケ地に提供するほど、意気込んだドラマがこちら。売れない脚本家の柳田豪太(風間)と、恐妻のチカ(MEGUMI)の日常を描く。本当にパズルのようにピッタリとハマったキャスティングに目を見張った。収入はないのに、発言とプライドだけは一人前、妻に性交渉も求めてくるクズ夫の雰囲気を醸し出した父役に、風間がハマりすぎていた。「おまえ、クズだな」と言うMEGUMIの鬼嫁ぶりも完璧。何より「不登校の息子」と、ややデリケートな設定の息子を演じた、嶋田鉄太くんのナチュラルな演技に舌を巻いた。とにかく柳田家3人のフォーメーションが完璧。家庭生活に不満や不安を抱える人は、笑いに昇華できるので見てほしい。深夜の放送時間帯やBS局が扱っていたせいなのか、放送回中盤あたりまで、あまり話題にされていなかったけれど、私は「絶対におもしろいはずだ」と睨みをきかせて、周囲に宣伝しまくっていた。宣伝効果はないと思うが、放送終了後、映画化決定や、「2025年日本民間放送連盟賞」テレビドラマ部門で優秀賞を受賞! おめでとうございます‼︎
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2025 BEST DRAMA第1位|「続・続・最後から二番目の恋」
FOD配信中/フジテレビ系/小泉今日子、中井貴一

第1シリーズが放送されたのはいまから13年前。キャスト誰ひとり欠けず戻ってきた本作に歓喜し、勇気づけられたファンも多いはず。私も毎週泣きながら見ていたひとりです。定年退職を間近に控えた吉野千明(小泉)と、定年退職後も鎌倉市役所の"指導監"として働く長倉和平(中井)。このふたりをめぐる家族や友人たちも、立派な中高年や大人になった。そして懸命に日々を生きている。この姿を作品で見ているだけで何度背中を押されただろう。喫煙家でお酒大好きで「体に悪いことをしたい!」と言っていた千明も還暦を迎えた。そりゃ、何も障害物のない場所ですっ転ぶ。ずっとテレビ局でドラマ作りに携わってきたけれど、そろそろ潮時? いやまだやれる?と揺らぐ様子は私たちと変わらない。生活の中に目指す何かがある人には、見てほしいドラマだ。最後に本作で印象的だったセリフをひとつだけ。長らく千明のアシスタントを務めてきた三井さん(久保田磨希)が、千明の真似をしながら、千明の名言を懐かしそうに話していた。
「本を読むこと、物語を読むこと。ドラマを見ることも同じだと思うんだけどね。それは知らない人生を知るということだから。生きている中では会えない人たちがたくさんいて、や、むしろそっちの人の方が多いわけで。物語はそれを教えてくれるものだから。知らない、自分とは違う人生を教えてくれるものだから」
だからドラマは楽しいのだ。来年も張り切って鑑賞しようと思います。
コラムニスト、ライター、編集者
平成から現在に至る まで、毎クール連続ドラマを視聴し続けて、約3000本を網羅したドラマファン。趣味が高じて「ベスト・オブ・平成ドラマ!」(青春出版社)を上梓、準レギュラーを務めるFM静岡「グッティ!」にてドラマコーナーのパーソナリティーを務める。他、多数のウェブ、 紙媒体にて連載を持ち、エンタメに関するコラムを執筆中。







