ポーランドの若き才能が描く、少年のある夏の記憶。

Culture 2019.06.08

甘く苦しいひと夏の思い出、永遠にうずく思春期の生傷。

『メモリーズ・オブ・サマー』

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1970年代末の夏休みに、12歳のピョトレックは仲よしの母と石切り場の池でふたりだけの時を過ごす。物憂く甘美な幼児期の母子関係の延長のように。父は出張中。ほどなく多情な母の夜の外出が増え、その寂しさの中で少年は都会育ちの少女マイカに惹かれてゆく。母と息子の絆とそのほころびを軸に、少年が大人の戸口に立つ甘美にして狂おしい通過儀礼の体験が、ポーランドの森や水辺に描き出される。瞬時の生のきらめきを捕捉する未知の才能、クジンスキの演出の清冽さ。遠い夏の記憶の、永遠に閉じない傷口から、思春期の生き血がこんこんと湧き立つよう。

『メモリーズ・オブ・サマー』
監督・脚本/アダム・グジンスキ 
2016年、ポーランド映画 83分
配給/マグネタイズ
恵比寿ガーデンシネマほか全国にて公開中
http://memories-of-summer-movie.jp

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*「フィガロジャポン」2019年7月号より抜粋

réalisation : TAKASHI GOTO

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