マダムKaoriの2023SSパリコレ日記 Blackpinkのジスに遭遇! 感激のパリコレ2日目へ。
Fashion 2022.10.02
元「フィガロジャポン」の編集長でもあり現在ファッションジャーナリストとして活躍中のマダムKaoriこと塚本香さん。
2年半ぶりにパリコレ参戦中。街のレンタサイクルVelibも乗りこなし、左岸から右岸へファッションパトロール。
さて、2日目は?
9月27日 Bonjour パリ!
Bonjour,Paris!で目覚めた2日目の朝。
まずはホテル隣のブーランジェリーでクロワッサンとカフェクレームを買って朝ごはん。ここはバゲットが評判らしいのですが、クロワッサンも外側はサクっと中身はふわっとな焼き上がりで、バターの香りが広がっておいしい! お店は外観も内装も超レトロな雰囲気。製粉所を意味する”Le Moulin de lα Vierge”という名前も歴史を感じさせます。
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さて、今日からコレクション取材も本番、朝イチのBotterからMame Kurogouchiと続きます。場所は昨日のCFCLと同じパレ・ド・トーキョーですが、昨日とは打って変わった自然光が入る静謐なランウェイ。Mame Kurogouchiの2023年春夏コレクションは、竹籠とその周辺の文化をリサーチ、”Bamboo Groove"をテーマに、竹のように強くしなやかな女性像を表現しています。
織りや刺繍で描かれる竹林柄のセットアップ、竹ビーズを編んだベストやスカート、緻密な透かし編みのニットドレスが次々に登場。竹林がイメージのミントグリーンや煤竹を思わせるブラウンのグラデーションなどカラーパレットも印象的。足元の草履サンダルは和でありながらもどこかモダンに感じられて。黒河内真衣子さんが魅せられた竹の美しさが凝縮されたようなコレクションでした。
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午後のディオールまで少し時間があったので、レンタサイクルVelib(ヴェリブ)でセーヌ河畔を駆け抜けてサントノレを散策して、珈琲焙煎140年の老舗ヴェルレでひと休み。ここはパリ最古の自家焙煎の店として知られているけれど、私がオーダーしたのはお茶。コーヒーだけでなくお茶のバリエーションも豊富です。人気パティシエ、カルル・マルレッティのエクレアを食べながらのティータイム。こんな時間が持てるのもファッションウィーク中の楽しみのひとつかも。
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チュイルリー公園内に造られたディオールのショー会場へは青空の下、緑の公園を抜けて。ディオールが今回ここを選んだのには理由があって、クリエイティブ ディレクターのマリア・グラツィア・キウリが春夏コレクションのアイコンに選んだカトリーヌ・ド・メディシスゆかりの場所だから。
女性がもたらす革新に着目してきたマリア・グラツィアならではのアプローチ、そんなことを思いながら会場のテントに到着すると、入り口はあふれんばかりの人波。セレブが多数来場するディオールでは毎回おなじみの光景だけれど、今季は特にスゴい! Blackpinkのジスのファンが押し寄せている様子。
その人波をかき分けて会場に入ると、まず目に飛び込んできたのがランウェイ中央のセット。近くで見ると素材はなんと段ボール。女性アーティスト、エヴァ・ジョスパンがデザインした「バロック様式の洞窟」がショーの世界観を表現しています。振付家&ダンサーであるイルメとマルネ・ファン・オプスタールのデュオのパフォーマンスでスタートしたランウェイには、カトリーヌ・ド・メディシスがフランス宮廷にもたらしたコルセットやクリノリンスカート、ブラーノレースが現代的にアップデートされて登場。パニエで膨らませた宮廷衣装のようなレースのドレスもあれば、シャツにコルセットをレイヤード、カーゴパンツを合わせたミックスコーディネートも。トレンチコートやデニム、フーディなどの定番アイテムもロマンティックにアレンジされて。アーカイブのスカーフの裏地を再解釈したパリの地図プリントは、このコレクションが都市の文化を継承していく女性たちに送るメッセージであることを象徴しているかのよう。女性の美はパワーと一体であることをいつもマリア・グラツィアは教えてくれます。
My Favoriteはレースのブラとクリノリンのロングスカート、ストライプのコルセットとワイドパンツのセットアップ、そして黒のブラにショートパンツ、オープンスカートを重ねたルック。メッシュのハイソックスにプラットフォームのストラップブーツの足元も注目です。
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ディオールの興奮冷めやらぬうちにナヴィットに乗って移動。ナヴィットはパリコレの公式バスで次の会場へ連れていってくれるので車をチャーターしていない日はとっても便利。Dover Street Little Marketが入っているマレ地区の多目的スペース「3537」が会場のアンリアレイジへと向かいます。
今年でブランド創立20周年を迎えたアンリアレイジ。東京コレクションでも3D映像の大画面と舞台のようなランウェイを歩くモデルたちを並行させ、デジタルとリアルが融合したブランドの集大成ともいえるショーを行ったばかりですが、2年半ぶりのパリコレではこの会場ではブランドの原点であるパッチワークに回帰したランウェイショーを、映像のデジタルショーは配信で、という2部構成。
洋服にフォーカスした会場では、まず、15体のパッチワークルックがショーの前半では表で登場、その後5体のブラックパッチワークが裏返しで続き、最後は前半で登場したルックがリバーシブルとなって披露されるという展開。劇場型だった東京とは違って、間近で見てあらためてパッチワークの完成度の高さに感激しました。ひとつのルックに使用されているテキスタイルの種類は多いもので200種類、4000ものパーツが手で接ぎあわされているとか。
デザイナーの森永邦彦氏のクラフトマンシップへのこだわりを体現しています。表と裏、外と内をつなぐもうひとつの要素が音。シートに置かれていたNTTソノリティのイヤホンをつけると、リアルな会場の音とヘッドホン内から流れる音が重なって聴こえてくるという仕掛け。「現実から非現実へ、対極の世界を探究する」というアンリアレイジのDNAをさまざまなプラットフォームで表現していく森永さんに、心からエールを。20周年おめでとうございます。
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雨が降ったり止んだりの一日はそんなセレブレーション気分で終了。自転車のためにフラットシューズ前提で考えた今日のコーディネートを会場近くのカフェで撮影したので、恥ずかしながら公開します。今回はMy Vintage Closetの活用がテーマ。なので古~いバレンシアガのジャケットにジャンティークで購入したデッドストックのワイドデニムを合わせて。足元は愛用しているシャテルのオペラパンプス、オスカー。低反発クッションのインソールだから、一日中歩き回っても足が疲れないんです。
というわけで、コレクションはまだまだ続きます。
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前回の記事へ|ファッションジャーナリスト塚本香の23SSパリコレ日記スタート!
ファッションジャーナリスト/エディトリアルディレクター。
1991年より「フィガロジャポン」の編集に携わる。「ヴォーグ ジャパン」のファッションディレクターを経て、2003年「フィガロジャポン」編集長に就任。その後、「エル・ジャポン」編集長、「ハーパーズ バザー」編集長とインターナショナルなファッション誌の編集長を経験し、今年からフリーランスとして活動をスタート。このコロナ禍までは毎シーズン、パリ、ミラノ、ニューヨークの海外コレクションに参加、コレクション取材歴は25年以上になる。
Instagram:@kaorinokarami
text & photography: Kaori Tsukamoto