スタイリスト飯島朋子のフレンチシックを作るもの。
Fashion 2024.08.30
メンズ服にベーシックアイテムーーー。これまでトラッドファッションをこよなく愛してきたスタイリスト飯島朋子に、年齢を重ねて改めて気がついたというフレンチシックの魅力、そして3つのエッセンシャルアイテムを聞く。
――飯島さんがフレンチシックなスタイルを好きになったきっかけはありますか? インスピレーション源になっているものはあるのでしょうか。
自分好みのフレンチシックを考えた時、"パリジェンヌスタイル"や"パリっぽさ"というのはあまりしっくりこなかったんです。昔から、どちらかと言うとヨーロッパなら伝統を重んじるイギリスの方が自分に合っている気がして。ただ、アンリ・マティスやフランスで活動していたパブロ・ピカソの美術館に行ったときに彼らが創造したアートはもちろんのこと、白シャツにチノパンといった彼らの気楽な着こなしに惹かれた自分がいたんです。
それまで強かった「フレンチ=可愛らしい」というイメージが、もっと「ラクでいい」に変わって、それがフレンチシックの良さになって。どのアイテムを着るかというよりはフランスにあるその心意気が素敵だなと思うようになってから、好きになり始めました。
――マティスやピカソなど芸術家で、しかも男性の着こなしに惚れたという話もまた飯島さんらしいなと思いました。
ボーイッシュな女性がいてもいいじゃん、と寛容なのがフレンチスタイルの良いところですよね。"ベーシック"の捉え方の幅も広いなと感じています。その人がベーシックと思えばそれでいい。誰も気にしないから、自分らしさを貫ける。そういう部分も含めて、年齢を重ねれば重ねるほどフレンチシックが好きになりました。
今は、主要都市のパリより避暑地の南仏のムードの方が好きで、綺麗なシャツをピシッと着るよりもペンキがついているようなくしゃくしゃのシャツにぐっときます。気を張るのではなく、ハードルを下げていく楽しさがある。そういうところですかね一番好きなところは。
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首元にはかならず
エルメスのバンダナスカーフ。
――飯島さんと言えば、大のスカーフ好きというイメージです。
プライベートでも仕事で提案するスタイリングでも、首元にバンダナをプラスすることはよくあります。好きが高じて、数種類コレクションしているのはエルメスのバンダナ柄スカーフ。いわゆる女性らしさのある巻き方をするのではなく、メンズっぽくTシャツやオープンカラーのシャツの首元に巻くことが多いですね。シルバーの重量感のあるネックレスと重ねたり合わせたりすることも。
エルメスのスカーフはシルクだから張りがあってとても綺麗なんです。それをあえて、くしゃくしゃにしてこなれた感じにするのが好きで。スカーフって単体で考えるとフォーマルなものだと思うんですが、そこを味のある雰囲気にカジュアルダウンさせたり、着け方で力を抜いたり。ものによっては、自分で半分にカットしたスカーフもあるんです。さすがシルクだなと思ったのは、切りっぱなしにしてもなかなかほつれない!
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街を闊歩するノンシャランな
ホワイトソックスを。
――ふたつめのアイテムは?
ソックスも私のスタイル作りのベースになっているもののひとつ。所持しているソックスの99%が白です。極シンプルなアイテムですが、ぴたっと脚に沿うソックス自体に上品なフレンチテイストを感じますよね。90年代のアニエスべーやA.P.C.からのインスピレーションなのかもしれませんが、フランス人ってソックスをすごくうまく、可愛く履いている印象。ローファーやサンダル、パンプスを履くにしても素足ではなく、ソックスを上手に活用していて、それが街にも映える。細やかな部分に美学を感じます。
――ホワイトソックスを選ぶときのこだわりはありますか?
季節によって履く素材を分けているのですが、オールシーズン好きなのはジョーダンのホワイトソックス。もともとスポーティなものも好きで、以前はラインソックスもよく履いていましたが、最近はシンプルな白のみを選ぶようになりました。フレンチシックを物語るアイテムの中でもホワイトソックスは非常に定番のアイテムだから、そんな中でも進化させたいという気持ちもあって、スポーティーなタイプを選ぶようにしています。
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背中で語る、ハンサムな
オーバーサイズジャケット。
――フレンチシックを作る、3つめのアイテムを教えてください。
ドリス ヴァン ノッテンのビッグジャケット。普段、Tシャツやシャツだとメンズ服を選ぶこともあるんですけど、ジャケットだけはメンズだと着丈が長過ぎたり、ワイド過ぎたり、デザイン面でもそのまま着るとやっぱりしっくりこない。オーバーサイズを狙ったとしてもきちんとウィメンズから選ぶべきと感じます。そういった面で、ドリス ヴァン ノッテンのビッグジャケットはメンズっぽいオーバーサイズでもいちばん自分の身体に合うんです。
品格を演出してくれるジャケットですが、こちらも袖をくしゃっと折ったりして着崩すのが好き。無造作ともまたちょっと違う感覚で、自分流に着るみたいな。着こなし方って、その人の性格や好みがそのまま現れるものだと思うので、まさにそれが個性になるんだと思います。
――飯島さん流の着こなし方は?
ドリス ヴァン ノッテンは、コレクションのルックの着せ方も好きで、女性らしいものもたくさんあるけれどその場合反対のものを組み合わせたりしている。ピタッとしたワンピースの上にビッグサイズのジャケットとか、トップがタイトな時はダボっとしたパンツを合わせたり。そういった着こなしの妙みたいなものに共感を覚えます。
この秋冬は、シャカシャカのウィンドブレーカーの上にこのジャケットを着るとか、スポーティなものとのミックスを楽しみたいですね。
神奈川県生まれ。ワードローブの半分をメンズ服が埋め尽くし、スニーカー、黒のレザーシューズなどベーシックなアイテムをこよなく愛する。雑誌『madame FIGARO japon』を始め数々のファッション誌や広告などで活躍中。 @iijiytomokoiijima
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vol.02 スタイリスト佐藤奈津美のフレンチシックを作るもの。
photography&styling: Tomoko Iijima model: Nodoka(Tomorrow Tokyo)