スタイリスト青木千加子さんのフレンチシックを作るもの。
Fashion 2025.01.21
ミニマルな中にも品の良さが際立つフレンチシックスタイル。世代を問わず人々を夢中にさせるその魅力とは一体なんだろう?「ファッションに於いては利己的でいいと思います。自分の好きを理解してブレない自分らしさを楽しむ。それってフレンチスタイルに通ずるものがありますよね」と話す、青木千加子流のエッセンスを紐解く。
フレンチシックは日常をつくる、定番スタイル。
――青木さんにとってのフレンチスタイルとはどんなものですか?
思い返すと、70年代生まれの私がファッションに興味を持ち始めた頃のムーブメントのひとつがフレンチシックでした。中学生の頃にバンドのメンバーに連れられて行ったア ストア ロボットでブリティッシュパンクに衝撃を受け、ヴィヴィアン ウエストウッドのニットを着て登校したいと私服の高校へ入学したのですが、なんだか落ち着かない。アメカジもしっくりこない。そうして辿り着いたのが、パリのリセエンヌ達の洗練された着こなしでした。グランジやパンクと違い清潔感と品があるので、大人達の目線が大分穏やかになったことを覚えています。
その後、怒涛のようなファッショントレンドの波に右往左往しながら、スタイリストのアシスタントに就いた頃には、フレンチカジュアルが日常着として定番化。アー・ペー・セーのスキニーパンツ、アニエスべーのボーダーかリブのタートルニット、足元は白のスプリングコートかクレジュリーのサイドゴアブーツが基本スタイル。あとは古着。
とある編集者に「色のあるスタイリングをするところが想像できない」と言われたくらい地味でした。その代わり、シャツの襟やカフスなどには自分なりのこだわりがあって、今でもディテールに技が効いてるアイテムに惹かれます。私にとって遊びの効いたフレンチシックは、常に身近にあるものという感覚です。
――青木さんが提案するスタイリングにも、レースなどの素材や色彩が際立っていますよね。
レースやフリル、チュールのような繊細なものに惹かれます。この仕事に就いてから、幅広いフレンチシックの中でもロマンティックな部分に夢中になりました。とはいえ、甘過ぎるのは苦手なので、私服はほぼパンツスタイル。ヴィンテージレースに関しては、数百年前に紡がれたものを、現代のスタイリングで昇華させて頂きます!という意気込みも少しあります。破れてもかがって、汚れても紅茶で染めて......、手入れをする度に愛が増していく気がします。
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こだわりのつけ襟で甘い彩りを添える。
――青木さん流のフレンチシックを叶えるのに欠かせないアイテムは?
ひとつブランドを挙げるとすると、カトリーヌ オスティは毎シーズンチェックしているブランドです。カフスや付け襟などを中心に展開しているフランスのブランドで、日本ではセレクトショップでたまに見かけます。そのニッチな専門性と大胆かつ繊細なアイテムに惹かれています。
――どのように付けることが多いですか?
好きなバンドのツアーTシャツに黒いレースの襟だったり、スウェットにペールピンクのフリルスカーフだったり。可愛らしさがあるので、あえてストリートを感じるものや、スポーティでボーイッシュなアイテムにONするのがマイルールです。旅先で雰囲気を変えたい時にも便利です。
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年齢を重ねたからこそマッチする重厚なジュエリーをプラス。
――ふたつめのアイテムは?
最近、動物モチーフのジュエリーが気になっています。ティファニーやカルティエなど、歴史ある宝飾品の回顧展には必ず足を運びますが、以前はスカラベやトンボなどのモチーフジュエリーを見ても御守りや縁起などの意味があるとは言え、私にとっては、はて?という感じでした。でも、東京の老舗ホテルやパリのカフェなどで遭遇するおばあさまの手元を見ると、迫力のある動物モチーフのジュエリーが鎮座している事が多い。皺が刻まれ、節くれだった深みのある手にマッチして、さりげなく主張しているのです。私も50歳をすっかり超えて、いよいよ来たぞ、と思ってます。狙っているのはカルティエのパンテール。手に入れられたら一生の宝物です。
――上手に重ね付けをするコツはありますか?
その日の気分やフィーリングが基本ですが、片手をボリュームたっぷりにレイヤードしたら、もう片方はシングルリング、というように"アンバランスなバランス"を保つようにしています。ファッションと言うより、ジュエリーは御守りのような意味合いが強いので、祖母、叔母、母の形見のどれかを先に選んで、それに合うバランスで重ねていきます。
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今こそモノトーンを見直すとき。
――ベーシックな白と黒の組み合わせにも青木さんらしさを感じます。
今、モノトーンのスタイルを見直したい気分になっています。地味だったアシスタント時代を経て、スタイリストになり今年で30年。それはもうカラフル過ぎるくらい、多種多様なファッションを楽しんできました。仕事でも私服でも色を纏う事は今も大好き。でも、最近私服において「モノトーンを蔑ろにしてませんか?」と自問自答することがあり、改めて白と黒を意識したスタイリングをしてみようと思ったんです。
――そう考えたきっかけは何だったのでしょう?
若い世代の黒を使った着こなしが素敵だな、と思うことが多くて。仕事関係の人も大学生の娘もそう。自分をはじめ、同世代の人たちは、"モノトーンはこうだよね"って思い込みに囚われて一辺倒な気がして。例えば、"脚長に見えるスタイリング"みたいなものがSNSで広がると、当たり前のようにみんなで真似して安心しちゃう。そんな世代なのかな、と思う事があります。人それぞれ違うのに。
若い世代はモノトーンに限らず、自分主体でスタイリングをしている人が多い気がします。私はその考え方に共感し、懐かしいモノトーンへ原点回帰するというよりは、今の自分に対して新提案をしたいなと思ったんです。
ファッションに於いては利己的でいいと思う。誰かに評価されることを意識するより自分主体で。それってフレンチスタイルに通ずるものがあると思いませんか。
モード誌やファッションブランドのヴィジュアル制作、広告、CMを手がける一方、俳優やミュージシャンの衣装にも携わるなど、長きに渡り幅広く活躍中。「2025年はアシスタント募集します!」@chikako_aoki
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