言葉や考えは時にふわふわしたり、異様に重みを増したりします。自分で熱く語ったことなのに、少し経ったらちっとも覚えていないこともあります。一方、相手の記憶にはまったく残っていないのに、自分だけがその人の言葉を一言一句覚えていて、何度も思い返している、と言った現象もあります。言葉は人から発されたあと、自由な翼を持って飛び回り、在らぬ所にたどり着いたりします。
もとより、コミュニケーションを完全にコントロールできる人などいません。誰かにつられて喋ったり、煽られて発言したり、うっかり心にもないことを口走ったりします。それをしないようにしようと思えば、もはや黙っているしかありません。でも、今はそのあたりは、たいして重要ではないようです。
今大切なのは、思いやりや優しさや情熱、気持ちが伝わるかどうか、ということです。これは、なかなか難しいのです。情報の正確さとか、知識の豊富さのほうがむしろ、追求しやすいかもしれません。相手に対してどんな思いを持っているか、その事象をどう感じているか、といったことを伝えるのが、多分一番難しいことなのかもしれません。今はそのことが強く求められています。何を話したかよりも、なぜ、どんな動機でそれを話したか、ということのほうが、ずっと重要なのかもしれません。