新型コロナウイルスによりトラウマを抱える子どもたち。

Lifestyle 2020.07.16

学校が閉鎖され、パンデミックが起こっていることを理解した子どもたち。新型コロナウイルスが幼児から若者にいたるまで多くの子どもの心に影響を与えたことは間違いない。フランス・トゥールーズ大学病院による最新の研究結果によると、トラウマは予想以上に頻繁に起こっていることが判明した。

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新型コロナウイルスのパンデミックの最中、子どもの日常生活にも新しい生活様式の影響がもたらされた。photo : iStock

フランスでのロックダウン中、8〜15歳の子どもたちはうまく生活を送ることができたのだろうか? これに関して、5月にトゥールーズ大学病院が開始したE-COCCON研究(8〜15歳の子どもを対象としたプログラム)がその答えを収集しようと試みている。この研究を統括している小児科緊急外来の責任者であるイザベル・クロード氏は、心理的な反発を予想している。

「多くの子どもたちがストレスを抱えているようです。 研究はまだ進行中であり、急いで結論を下すべきではないものの、ロックダウン後の心的外傷ストレスのレベルに注意しなければいけないのは事実です。予想よりはるかに高い結果が出ています」とクロード氏は警告する。

大人たち同様、子どもたちも新型コロナウイルスに警戒を促す「戦争」「死」といった言葉を耳にしてきました。

フローレンス・ミロ氏

「大人たち同様、子どもたちも不安を煽るような新型コロナウイルスに関するニュース、そして『戦争』『死』といった言葉を耳にしてきました。そして大人と同じように家に引きこもり、自由を奪われたと感じていました」と児童心理学者のフローレンス・ミロ氏は分析する。

「実際の証言として、コンサルテーションの際、ある5歳の少女が新型コロナウイルスの前後について語ってくれました。彼女にそのことを尋ねると“以前は自由があったと述べたのです」。ロックダウンがどれほど子どもたち、そして青年たちにも影響を与えたかを示すエピソードである。

多くの人がこのロックダウン中に家族とハンドメイドの工作やお菓子作りなどを楽しんだものの、いっぽうで最も繊細なタイプの人はPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症した。

「このストレスは非常に大きいため、通常のリラックス状態に戻ることができません。そのストレスに圧倒され、思い出したくないことが何度も頭をよぎったり、繰り返し悪夢となったりして現れます」と『Aider son enfant à dépasser ses peurs(子どもを恐怖心から救い出す)の著者で専門家であるクロード氏は述べる。

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悪夢と怒りによる発作。

今回、トゥールーズ大学病院は324人の子どもたちとその両親の証言を収集した。「私たちはアンケートを作成しました。『悪夢は見ることはありますか?』『ウイルスを思い出す場所はありますか?』『怒りによる発作が起こることはありませんか?』など」。その回答に基づき、イザベル・クロード氏と彼女のチームは、子どもが心的外傷後ストレスを発症しているかどうかを判断した。

「興味深いことは、庭とプールがある家に住んでいる場合、ロックダウン中でも生活しやすいということです。しかし、良好な住居条件にもかかわらず、子どもたちは依然として心的外傷後ストレスを発達させたことは確かです」とクロード氏は強調する。その事実はどう説明できるだろうか。「両親同様、子どもたちはテレビのニュースを見て、新型コロナウイルスによる死者のニュースを観たり、家族内での会話に耳を傾けたりしています。さらにこれまでのルーティンはすべて壊されてしまいました。学校に行くことも、友達に会いに行くことも、スポーツをすることももはやないのです……」

キャビン症候群と赤ちゃん返り。

ロックダウンが解除され、感染拡大が落ち着いてきても、一部の人は家から出ようとしない。クロード氏はこの現象を「キャビン症候群」と読んでいる。「一部の子どもたちは、家を離れたくないと思い、家は快適で安全だと感じています。この種の行動は心的外傷後ストレスの現れである可能性があります。子どもの不安の一部は、ウイルスが目に見えないという事実に起因しています。確かに、家にいることは心強いでしょう」。また、クロード氏は子どもたちの赤ちゃん返りの傾向を案じている。「ロックダウン中、たくさんの子どもたちが両親のベッドでまた一緒に眠るようになりました」

「結局、子どもたちにとって家にはゲーム、飲み物、食事などすべてが揃っていました。さらに学校に行く必要はありません! こんな状況から、急に新たな生活様式のもと、学校に戻って一度に複数のタスクを行うのは当然大変です」とミロ氏は分析する。幸い、専門家のミロ氏は、数週間で日常にまた慣れるだろうと述べている。もちろん、新型コロナウイルスがもはや脅威でなくなることが前提ではあるが。

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texte : Ségolène Forgar (madame.lefigaro.fr), traduction : Hanae Yamaguchi

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