「ドーパミンデトックス」で集中力アップ⁉ あらゆる楽しみを奪うことは本当に幸せなのか。

Lifestyle 2024.11.09

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生産性と効率を高めるために、あらゆる形の喜びを遮断するのは、真の幸せと言えるのか?photography: Getty Images / Maskot

SNS上で飛び交っている「ドーパミンデトックス」という言葉をご存じだろうか? 「快楽ホルモン」または「幸せホルモン」と呼ばれる「ドーパミン」というワードは、ここ数年、多くの人の間で話題になっており、その名前のハッシュタグは TikTokで50万件以上の投稿を集めている。私たちは、より幸せになるために脳内のドーパミンの生成を刺激しようとするものだが、近年では、自分自身に集中するためにドーパミンの働きを阻害しようという動きが現れた。この概念は「ドーパミンデトックス」と呼ばれ、2019年に心理学者のキャメロン・セパ氏によって提唱されたが、あらゆる形の快楽から自分を切り離すことで、効率が向上すると主張している。ニューヨークタイムズが2019年に掲載した記事によると、この理論は生産性を最も尊ぶ地であるシリコンバレーでも浸透しているという。YouTubeもこのテーマでもちきりで、多くの動画で「人生のコントロールを取り戻す方法」や、「脳をリセットする方法」が紹介されているが、脳内でドーパミンを生成するものを断つ期間については、数時間のものもあれば、週末丸々、あるいは1週間、極端な場合だと1年間設定することを勧めている。しかし、この概念は実際に科学的根拠に基づいたものなのだろうか?

トゥールーズ大学の神経科学の研究者兼講師であるリオネル・ダハン氏によると、彼は「ドーパミンデトックス」が、現在のトレンドを代表する概念であり、知的に見せるために科学用語を当てはめたに過ぎないという見解を示している。「言うまでもなく、彼らは何も発明していません。気が散るものすべてを排除することで生産性が向上したと自慢していますが、これは中学生に『宿題に集中するために携帯電話を置きなさい』と言うようなものです」と彼は分析する。「ドーパミンデトックス」の発案者である心理学者自身も、ニューヨークタイムズ紙に、この概念が「キャッチーなタイトル」であり、「文字通りに受け取ってはならない」と認めている。

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ドーパミンはストレスを感じる時にも作動する

また、この概念自体が科学的には正確ではないとダハン氏は指摘する。「そもそもドーパミンはホルモンではなく、ふたつのニューロンが互いに通信できるようにする伝達物質です」と、彼は強調する。「さらに、ドーパミンは幸せを感じるときに発生するとされていますが、実際はそれだけではありません。たとえば、大量のストレスに晒されたり、罰を受けたときにも活性化されるのです」。ドーパミンの作動システムは、人それぞれであることも忘れてはならない。保健衛生の研究所インセルムと王立高騰教育機関コレージュ・ド・フランスの神経科学研究者であるアルメル・ランシラック氏は、ドーパミンが「人によってかなりばらつきがあり、何から影響を受けるかによって、分泌される量は変わります」と説明する。

さらに奇跡の治療法とも紹介される「ドーパミンデトックス」に従って、感覚刺激を遮断することは、リスクをもたらす可能性がある。「(ドーパミンの)欠乏は、うつ病などの精神疾患につながる可能性があります」とランシラック氏は指摘する。そうなってくると、軽視できない問題になってくるだろう。神経伝達物質が分泌されなくなるのは病気の兆候なのだ。「これは、ドーパミンニューロンの変性によって引き起こされるパーキンソン病患者と同様の状態です」

健康的に注意力をアップさせるには?

集中力と効率を取り戻すには、ほかに解決策がある。まずは、注意力の概念そのものを把握するとしよう。「私たちの脳には、ふたつの異なる神経ネットワークがあります。ひとつは外部刺激に反応し、もうひとつは内部の目標、つまり個人的な目標に反応します」とダハン氏は説明する。「このふたつのネットワークは競合しています。一方が支配すると、もう一方は機能しなくなります」。たとえば携帯電話の通知は、脳の反応を引き起こす外部刺激だが、通知をオフにすることで、私たちの内部目標(重要なメールを書き終える、本の1章を読むなど)が優先されるようになるという。

最後に、休息して落ち着いているときが最も集中力が高まっている状態ということを覚えておきたい。「自分のために時間を割いて、やることに意味を持たせる必要があります」と、ランシラック氏は強調する。やる気を取り戻すために、水も電気もない孤立した山荘にひとりで訪ねる必要はない。読書、瞑想、ヨガ、映画など、脳をリフレッシュするための独自の方法を見つけることが、結局は集中力を引き出すことになり、最も効率的な方法だと言えるだろう。

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text: Zoé Tison (madame.lefigaro.fr) translation: Eri Arimoto

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