【ニッポンの性】老化防止に更年期ケア......セルフプレジャーは快感だけじゃない!
Lifestyle 2023.12.26
タレントや海外セレブがセルフプレジャーについてオープンに語るようになり、以前よりも話しやすい空気が出てきた。とはいえ、女性たちにとって後ろめたいものというイメージが根強いセルフプレジャー。だけど実は性的快感を得ることだけでなく、健康や身体にとってもいい効果があるのをご存知だろうか。恋愛コラムニスト・さかいもゆるが識者に聞いた、セルフプレジャーとウェルビーイングの密接な関係。
セルフプレジャーが女性の健康にもたらす恩恵とは?
セルフプレジャーはその名のごとく、自ら愉しむもの。けれど女性たちが快感を得ることに対しては何故か、慎むべき、恥ずべきことという風潮が未だにある。そもそも日本では、セックスを語ること自体がタブーな雰囲気。その結果、女性性が忌むべきネガティブなものだと、嫌悪感を抱く女性も多いのではないだろうか。けれど女性器、つまり膣は恥ずかしいものなどではなく、ほかの臓器と同様、「使わないと機能が衰えて行く」と聞いたらどうだろう。さらにセルフプレジャーは、女性の健康値を高めるものだと、植物療法士で性科学に詳しい森田敦子さんは言う。
「セルフプレジャーとは、自ら快感を起こすという意味。日本ではマスターベーションや自慰行為などと呼ばれ、何となく後ろ暗いイメージが付き纏いますよね。だから私は、あえてセルフプレジャーというポジティブな言葉を使っています」(森田さん)
森田さんが主宰するフェムケア・ウェルネスメディア「ウームラボ」では、欧米の女性チームが開発&プロデュースした、人間工学の視点から作られた女性のためのセルフプレジャートイを紹介している。カラフルでおしゃれなデザインは、部屋に置いていても違和感のないインテリア雑貨のよう。コスメ感覚で使えそうなものばかり。
「これらのセルフプレジャートイは、膣に挿入しなくてもクリトリスに当てて振動を与えることで、脳からβ-エンドルフィンやドーパミン、オキシトシンなどの幸せホルモンが分泌されます」と森田さん。それにより、安眠効果や熟睡、睡眠の質向上、ストレス解消でいいことづくしだとも。
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膣は使わなければ萎縮して行く!?
医学的見地からも、セルフプレジャーは身体にとって恩恵をもたらすものだとは、婦人科・海老根クリニックの海老根院長のお話。「最近クリニックに来る患者さんの中には、性交渉が痛いからしたくないという若い女性も多いんです。そういう意味で、セルフプレジャーで自分がどこをどんな風に触れば気持ちよくて痛くないのか知っておくことは大事」。そして「使わないと臓器は萎縮して行く」という、ドキッとする言葉も。
膣を含む、人間の臓器は基本的に使うことを目的に備わったものなので、本来は使った方がいいのだそう。「筋肉と同じで、ストレッチしなければ硬くなるし、若いときから使っていることで、歳を重ねてからも若々しくいられます。膣も使えば使うほど皮膚が丈夫になり、血流が良くなってターンオーバーを促進するんです」(海老根院長)。特に、閉経前のエストロゲンの分泌が盛んなうちから外陰部にも刺激を与えることが肝心。日常的に使っていないと、皮膚が薄くなってきて切れやすくなってしまうからだ。80代くらいのシニアになると、お小水をする時に外陰部が切れてしまい、痛くてしょうがない人も多いという。セックスやセルフプレジャーで「機能を保つ」のは、いくつになっても快適に生活することに繋がると、海老根院長は言う。
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感じやすい身体を作ることが「名器」にも繋がる。
メリットは老化防止だけではない。セルフプレジャーで感じることにより血行促進されると、分泌液が出やすくなり濡れやすくなる。これも、感じる身体を作るためには大切なこと。海老根院長は以前、「名器とは何ぞや」を調べるために、セルフプレジャーグッズの開発と販売で知られるTENGA社を訪問して話を聞いたそう。その結果わかった女性の名器の条件とは、皮膚の柔らかさと湿度、膣内温度の温かさ。よく聞く、締まりの良さは実は幻想で、実際には、血が通ったように感じられる膣が理想なのだとか。濡れると自分も気持ち良くなれるし、相手も気持ちいい。セックスする際にも気持ち良くなれる、というわけ。
ここで気になるのが、ひと口にセルフプレジャーと言っても、クリトリスを触ればいいのか、指やバイブを挿入した方がいいのか、どこまですると効果があるのか、ということ。膣が萎縮することで起こる尿もれは、クリトリスの刺激だけでは改善できないと海老根院長。尿もれの原因は、老化に伴って骨盤底筋群が弱まることにある。これを予防するには、膣内部に指やトレーニング器具を入れてギュッと締める運動が効果的だ。
さらにクリニックでは膣レーザーやエムセラという、座るだけで電磁波で膣の奥を刺激して骨盤底筋群を鍛えられるマシンでの治療も実施している。森田さんの著書『私のからだの物語』(ワニブックス刊)では、オーガニックオイルを使用した膣まわりのマッサージも推奨しているので、いきなり膣に指を入れるのは怖いという人は、まずはマッサージから始めてみるのもいいかもしれない。
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セルフプレジャーを通じて自分の身体と向き合う。
もちろん、セルフプレジャーはセックスと同様に、しなくてはならないものではない。けれど膣まわりのケアやセックス、セルフプレジャーのどれもしないとなると、加齢に伴い、閉経前後にはエストロゲンの低下により膣が乾燥し、粘液の分泌が下がり、膣が萎縮してしまう。そのため、更年期世代は週2で行うと膣萎縮の予防にもなると森田さん。
取材の際、海老根院長の「ほとんどの女性は自分の女性器を見たこともない」という言葉にハッとした。たしかに、私も自分の女性器を鏡でちゃんと見たことがない。VIO脱毛はしても、膣のことまではケアしていなかったのだ。だけど森田さんや海老根院長がおっしゃるように、子宮や卵巣など女性にとって大切な臓器に繋がる膣は、もっと丁寧に慈しむべきものなのかも。長く快感を楽しめるように、そして健康でいられるために。セルフプレジャーを含め、自分の女性としての身体と機能を、見直してみよう。
※森田さんのコメントは『私のからだの物語』(ワニブックス)より抜粋。
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海老根真由美さん
白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長。2013年に白金高輪に婦人科、産婦人科、助産師の外来を中心としたウィメンズクリニックを開院。これまでに3万5千人近くの女性患者たちの悩みを診察。女性の心と身体のトータルケアを目指したクリニック作りを目指している。
https://ebine-womens-clinic.com/
森田敦子さん
植物療法士・フェムティスト。サンルイ・インターナッショナル代表。日本におけるフィトテラピーと性科学の第一人者。人生100年時代を見据え、女性が人生をイキイキと生きるためのフェムケアアイテムの処方開発なども手掛けている。植物のチカラを通して、健やかなライフスタイルを提案するラジオ、FM AICHI「森田敦子のLove your life」は、毎週日曜日9:30-10:00AMにPodcast、Spotify、Audeeでも配信中。近著、女性性を受け入れ慈しむ方法を説いた『私のからだの物語』(ワニブックス)も好評発売中。
恋愛コラムニスト さかいもゆる
出版社勤務からフリーランスのファッションエディターとして独立。その後、アラフォーでバツイチになった経験から、恋愛や結婚における本当の幸せとは何かを考えるインタビュー読み物やコラムを多数の女性誌で執筆している。
text: Moyuru Sakai