冬の朝、起きるのが辛いのはなぜ?

Lifestyle 2024.02.22

冬の朝、起きると頭がなかなか働かない。まるで前の晩に飲みすぎたみたいに。ちゃんと寝ているし、そんなに飲んでもいないのになあ、と思ったあなたにまず言っておこう。これは冬特有の現象なのだ。

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毎朝、目覚めが悪いと感じますか? photography: Oleg Breslavtsev / Getty Images

ひとつだけはっきりしていること。それは目覚めから元気いっぱいで、ネオンカラーのウェアに身を包んだスポーツインストラクターのごとくエネルギッシュに動き回る、なんてことは季節がどうであろうとできっこない。でも、寒くなってからは朝、なかなか目が開かないし、ノロノロと起き出すことすら苦行に思える。しかも今に始まったことではなく、冬には夜がとても長く感じたり、朝からだるかったり、ちゃんと寝ているはずなのにいつも疲れていたり、起きてから数時間たたないと頭がはっきりしなかったりする。それはなぜなのか、専門家に聞いてみた。

冬だから

寒くなると至る所で起きるこの"無気力症状"の1番の原因、それは冬という季節そのものだ。人によって影響を受ける度合いは異なるが、冬は自然光が減少することで人の気分や体調に影響を及ぼす。早朝に仕事に行く人の場合、家を出る時も真っ暗、帰る時も真っ暗では気も滅入るというもの。一方で太陽光は人間の体内時計の調節も担っている。陽の光が弱い、あるいは十分に浴びなかったりするとそのリズムが乱れてしまう。「季節性うつ病に至らずとも、浴びる光の量が足りないと、多くの人がいつもよりだるいとか、眠たいと感じることがわかっています」と、睡眠専門医で認知行動療法士のフィリップ・ボーリューは言う。また、精神科医でパリのピティエ・サルペトリエール病院の睡眠病理科の医師、ヴァネッサ・スリマニによれば、浴びる光量が減ると「日中でもメラトニン(睡眠ホルモン)が少量分泌されます」とのこと。「疲れている感じがして、朝なかなか起きられないのはそのためです。それが気分や季節性うつ病にも影響します」。太陽の光自体、夏より冬の方が弱い。「夏の1日の自然光は100,000〜130,000ルクスと推定されるのに対し、冬は2,000〜20,000ルクスです」と、時間生物学者のクレール・ルコントは指摘した。

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コロナ禍の影響

コロナ禍で生活様式が変化したことも影響している。睡眠専門医のフィリップ・ボーリューは、「感染症のパンデミック下で、過睡眠になる人がいることが確認されました」と言う。言い換えると、コロナ流行の波により、体内時計を調節するマーカーが非同期化され、リズムが乱れてしまった結果、睡眠の質が影響を受けた。「夜が不規則になる人もいれば、時間がずれてしまう人もいます。つまり、基準の喪失により時間がずれてしまうのです」。
このような状況は慢性的なストレスをもたらします。「コロナを怖いと思う気持ちがあり、またテレワーク自体、これを歓迎する人もいますが、閉塞感がある人もいます。しかも今後どうなるかわからない不安が常に付きまといます。このような状況を人の脳は不快に感じます。」と彼は説明する。知らず知らずに夢にうなされることが多くなり、よく寝られない人もいる。

どうしたらいい?

すっきり目覚めるためにはまず日光を浴びることが不可欠、と時間生物学者のクレール・ルコントが語る。「毎日少なくとも1時間は自然光を浴びるべきです。昼休みを利用するといいでしょう。この時間帯の光が一番強いですから。昼食を簡単に済ませてから外出したり、食べるものを用意して外で食べたりしてはどうでしょうか」。

光療法用の照明を使うのもいい。2005年以来、SAD(季節性感情障害)の治療に推奨されるようになったランプで、「"体内時計 "に強い信号を送ることで調節してくれる効果があります。このランプを浴びると、脳内のメラトニン(睡眠ホルモン)が除去されて活力がもたらされ、抗うつ効果もあります」と睡眠専門医のフィリップ・ボーリューは説明する。精神科医のヴァネッサ・スリマニも照明の利用を勧める。効果は使用を開始してから3、4日経たないと感じられないそうだが、「陽の光だけで十分な光量となる3月か4月まで、毎朝30分間、ランプを10,000ルクスにして顔から20センチ離して浴びましょう」。

体内時計の調節をしてくれるもうひとつの大きな味方、それは運動だ。たとえ身体を動かす気分じゃないとしても、疲労が疲労を呼ぶ悪循環を避けるために運動は欠かせない。時間生物学者のクレール・ルコントは、陽を浴びている間に運動をすれば一石二鳥だと勧める。「運動すれば光の効果も増幅されます」。自分は睡眠が足りていると思っている人も、本当にそうなのか、今一度チェックをしたほうがいい。「眠いと感じたらその欲求をできるだけ尊重すべきです。どんな時にすぐに眠りにつけるのか、注意を払ってみましょう。例えば、急に寒く感じた場合、脳の眠る準備が整ったということなので、就寝しましょう」。気をつけたいのは、画面を見ていると睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が遅れるということ。就寝の数時間前からは近づかないようにしよう。時間生物学者のクレア・ルコントは、眠れなくてつらい場合は医者に行くことを勧める。「SAD(季節性感情障害)ならば春には改善されることが判明しています。SADとうまくつき合えればいいですが、そうでない場合、本うつと同じぐらい苦しいものです」。

睡眠専門医のフィリップ・ボーリューは、テレワークでもっと働きたい誘惑に駆られても、就寝時間と起床時間をずらさないようにとアドバイスする。「寝られなかったとしても朝になったら起きましょう。ベッドでぐずぐずしていると、ウトウトと、質の悪い睡眠をしてから起きることになり、すっきりしません」。
気分を改善するためには、1日3食、バランスの良い食事を心がけること。ドライフルーツもお勧めだ。精神科医のヴァネッサ・スリマニによれば、「プロバイオティクスは効果があるので冬場はこうしたサプリメントを摂取するといいでしょう。あるいは「幸せホルモン」の異名を持つセロトニンの分泌を促すような食品もいいですね。セロトニンの生成は、肉類、鶏肉、乳製品、ナッツ類に含まれるトリプトファンというアミノ酸に依存しています」とのこと。月経の影響を受けやすい女性は鉄分不足、ビタミンD不足を避けることも大切だ。

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text : Ophélie Ostermann (madame.lefigaro.fr)

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