ロンドン近郊の可愛いお宅訪問 英国スタイルのコテージで、アートと骨董品に囲まれる暮らし。
Lifestyle 2024.06.11
ギャンブル五月
"Garden of England(イギリスの庭)"と呼ばれる緑豊かなロンドン郊外ケント地方に暮らすギャンブル五月が、個性豊かなイギリス人の自宅インテリアを紹介。初回はリバティで働くウィルの、アートや本、アンティーク品が博物館のようにひしめく、圧巻のコテージを案内します。
Step inside Will's house.
文・写真/ギャンブル五月
「ちょっと狭いですけど、どうぞ」。薔薇のツタが絡まるアーチが愛らしいドアを開けながらウィルが迎え入れてくれたのは、築200年のコテージ。リビングルームへ繋がる扉の向こうに一歩足を踏み入れると、まるで美術館のように静謐な空間が待っていました。
美術品、本、楽器、と好きな物にあふれたリビングルーム。
リビングからダイニングを望んで。
マーガレット王女の邸宅で使われていたペルメットは自慢の品!
「ジョージアン時代の博物館みたい......」とため息まじりに言うと、「いっこうに物を減らせないので、まさにそんな感じですよ」と苦笑い。
ウィルがこの家に引っ越してきたのは9年前のこと。パートナーのザビエルのパリ転勤をきっかけに、一緒に暮らしていたサセックス州の大きな家を売却。その資金でザビエルはパリにアパルトマンを、ウィルはロンドンまで通勤できる距離でコテージを探し始めました。そして美しいカントリーサイドが広がるケント州の小さな村にあるこの物件にたどり着きます。
当時、この家に住んでいた前のオーナーは、高齢で階段が登れなくなったという理由で、泣く泣く手放すことを決めたそう。「彼女はこの家に愛着を持っていたので、すべてのバイヤーと面接をしたんです。庭に招かれて紅茶を飲みながら、バラと犬、ガーデニングの話題で盛り上がって(笑)。ラッキーなことに私が選ばれたと言うわけ」と語る。
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階段横の壁は完全にミュージアム。
アートが壁一面に飾られた廊下。
骨董品と静けさが同居するこの家。どの部屋を切り取ってもジョージアン時代のムードが隅っこまで満ちあふれていて、ロンドンのデニス・シヴァー邸かこのコテージかってくらい、いい勝負。美意識が細部まで貫かれたこの圧倒的なインテリアのインスピレーションや、ところ狭しと並ぶアンティーク品は一体どこで手に入れているのでしょうか。
「20世紀初頭に活躍したインテリアデザイナーのナンシー・ランカスターをお手本にしています。アンティーク品は主にeBayやアンティークフェア、オークションでゲットしていますね。悩みどころは、もうスペースがないのに欲しい物は後を絶たないことでしょうか......」
実は私、ウィルの発信する優美なインスタグラムの写真に魅了されていたフォロワーのひとりだったのですが、ある日アップされた写真の背景に目を凝らしたところ、なんとめちゃくちゃ近所じゃないですか! そこからメッセージを送って、数日後にはスマホで見ていたこの夢のようなおうちの居間にちゃっかり座っていた自分がいました。撮影当日、自らパウンドケーキやスコーンを焼いて、完璧なアフタヌーンティーの用意をしてくれていて感動......! 最近では朝の登校時に駅に向かうウィルと道で出会ってはお喋りに花が咲いてしまい、子どもに急かされることもあります。
渋いインテリアの趣味とは裏腹に、まだ若い30代のウィルにリタイア後のプランを聞いてみました。「このコテージの歴代オーナーは全員、25年以上ここに住んでいたと聞いているので、私もこれに倣うことになるでしょうね。夏は庭でバラの手入れをして紅茶で一息入れて、冬は暖炉の前で足元の犬を撫でながら読書する、そんな老後が理想です」
お庭の様子。
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Room Details
入居後にキャビネットの扉を塗り替えて、オーブンを新調したキッチン。
100年くらい前の住人が描いたアートが可愛いドア。
上品な深い葡萄色を基調にしたシックなバスルーム。ジャグに生けられた庭のブルーベル。
ベッドルームの壁紙はウィリアム・モリス。乗馬ブーツや馬の絵が映える。
ベッド脇には引き戸式のクローゼットを新設。
ゲストルームの壁紙はColefax and Fowlerのもの。
壁と一体化した隠し扉付きの収納スペース。「ぎゅうぎゅう詰めです(笑)」とウィル。
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Profiles of Will & his house
家主:
ウィル (@willelcc)。リバティのオフィスでマネージャーとして働いている。
背景に広がる湖が美しい近所のパブで、パリ在住の作家でありパートナーのザビエルと2匹の愛犬と一緒に。
ウィルのアールドヴィーヴル:
『make do and mend』(新しい物を買わず)手持ちの物を修理してしのぐこと、そして過去の世代のアートや創造性を愛でて収集すること。
インテリアスタイル:
イングリッシュカントリースタイルのコテージ。
この家との出合い:
インターネットで見つけ、一目惚れ!
住んでいるエリア:
ロンドンから南に約30キロの場所にある、ケント州の小さな村。湖があり、泳ぐ人もいる。
お気に入りの場所:
キッチンの窓から庭を眺めながら、紅茶を飲む時間。
インテリアのこだわり:
フォーマル過ぎず、リラックスした雰囲気を作るように心掛けています。
お気に入りの家具:
1937年のジョージ6世の戴冠式で出席者が座った椅子。
家の構造:
2階建て、2ベッドルーム、1リビング&1ダイニングルーム、キッチン。
リタイア後のプラン:
庭での読書とガーデニングに明け暮れる老後を過ごす予定。
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text&photos: Satski Gamble
ギャンブル五月
ニューヨーク州立大学卒業後、ウェストヴィレッジのマグノリア・ベーカリー本店にて6年間腕を磨く。ロックバンドのメンバーとして2度の全米ツアー後、渡英。現在は、田園風景が広がるロンドン郊外はケント地方、『Garden of England(イギリスの庭)』に暮らす。著書に『ニューヨーク仕込みのカップケーキデコレーション』『イギリスから届いたカップケーキデコレーション』(SHC)。日本カップケーキアカデミー代表。
Instagram:@satskigamble