ジャム派? 炭酸せんべい派? 色が印象的なクッキー缶。【クッキー缶手帖】

見て楽しい、食べておいしいクッキー缶。小さな箱にぎっしり詰まったクッキー缶は、おすすめの手土産です。もちろん、自分で味わうたのしみも。文筆家・甲斐みのりさんが教えてくれたクッキー缶をご紹介します。


♦店名:いちご大福と茶菓のお店 あか
♦製品名:akasand ¥4,990

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口にして誰もが笑顔になれるような季節の和洋菓子が揃う「いちご大福と茶菓のお店 あか」。滋賀県産の羽二重餅粉を使用した自家製の求肥で、北海道産の手亡豆で作る白あんと、農家直送のいちごをひとつひとつ丁寧に包む、いちご大福が評判の店。旬の季節になると、ふわふわの食感のいちご大福は、5~7種類のいちごが取り揃う。

そんなあかで、いちご大福とともに虜になったのが、徳島の和三盆糖の上品な甘さと、国産バターのふくよかな香りが際立つしっとりとしたクッキーに、全国のいちごで作った自家製のいちごジャムをはさんだ「akasand」。"おいしいもの好き"仲間の持ち寄り食事会で、「ようやく手に入れたのでみんなで味わいましょう!」と持ってきてくれた方がいて、そのとき初めて味わうことができた。

農家の方々とやりとりしたり、自社でいちご大福を製造する中、規格外のいちごを活用できるよう、いちごを使った最高級のお菓子を作ろうと、このいちごジャムサンドクッキーが誕生したという。すべて手作りで無添加無着色。みずみずしくフレッシュないちごジャムは、口の中にじんわりと幸せな余韻を残す。さらには缶の中に整然とクッキーがおさめられた姿もまた美しく、ふたを開けたときの艶やかなジャムの赤い色味を、甘やかな味とともにときどき思い出す。

通常いちごを使った商品には、パッケージにもいちごのデザインがあしらわれているものだけれど、あえて缶の天面にいちごを描かず、いちごの葉と花をデザインしたのは、グラフィックデザイナーの大石知足さん。制作をするにあたり、本物のいちご・葉・花を見るべくいちご狩りに出かけて、葉の中からとびきりのいちごが現れるストーリーが思い浮かんだそう。それから、ジャムサンドクッキーそのものをいちごに見立てることで、缶のフタを開ける行為そのものが葉の中からいちごを探す行為と重なるように思いを込めている。

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また、いちごの葉が密集したデザインは、江戸時代後期の絵師・鈴木其一の「朝顔図屛風」からインスピレーションを受けたという。「同じモチーフを複数描きながらも、単調にならず集合によって成された美を描き切っていることに感銘を受け、いちご狩りで体験した光景とうまく重ね合わせることができないかと考えました。ジャムサンドクッキー自体が可愛らしいフォルムをしているので、男女問わず気軽に手に取っていただけるよう、シックなデザインを目指しました」と大石さん。

葉の部分に隠れハートや、おいしいいちご作りに欠かせないマルハナバチも描かれているので、よく目を凝らして探してほしい。

いちご大福と茶菓のお店 あか
東京都目黒区中央町1-1-3
営)11:00~(売り切れ次第終了)
休)月、火
取り寄せ可
http://akaichigo.com/

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♦店名:日の出屋製菓
♦製品名:ワッフルつかまえた(プレーンバター味) ¥1,330

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昔ながらのお土産の中でも、旅先で見つけると購入せずにいられないのが炭酸せんべい。ぱりんと軽やかな食感が心地よく、レトロな缶の佇まいも愛らしくて。

1957(昭和32)年から、湯の山温泉のふもとでお土産菓子を作る「日の出屋製菓」の「湯の花せんべい」は、三重県を旅したとき何度か購入したことのある大好きな炭酸せんべい。御在所ロープウエイの絶景が描かれるピンク色の丸型の缶は、発売当初から変わらぬデザイン。そんな銘菓を作る老舗菓子店も、近年はパティシエと協業でせんべいをアレンジした和風のスイーツを開発したり、工場直売店やテイクアウトカフェを設け、豊かな自然を感じながら甘いものを味わえる場を生み出している。

日の出屋製菓の新たなお菓子「ワッフルつかまえた」は、鈴鹿山麓で伸びやかに育った鶏の濃厚な自鶏卵、国産小麦粉、バターを使って、1枚ずつ丁寧に焼き上げたワッフル型のクッキー。アイスクリームと合わせたり、ジャムを添えて楽しむのにちょうどいいひと口サイズ。食感はさっくりと歯切れよく、ふわっと卵の風味が口いっぱいに広がる。

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女の子が描かれる愛らしい缶の誕生のきっかけは、日の出屋製菓・3代目の千種啓資さんと、三重が地元のイラストレーター・ヒビユウさんとの親交から。ヒビユウさんは自身の代名詞である子育て漫画とは異なるタッチで雑貨類も手がけており、その柔らかなタッチのファンであった千種さんと、「お菓子のパッケージもやってみたい」と願っていたヒビユウさんの思いが重なって、制作がスタート。

千種さんは「手元に置いておきたくなるような可愛い缶」「横向きか後ろ向きの女の子を」「"余白"があるイラスト」をとリクエストしたそう。そうしてクッキーを試食したヒビユウさんに浮かんできたのが、「ちょっとよそいきなティータイム」「ひそひそと誰かに教えたくなる」というイメージ。

さまざまな缶の形状を試す中、ちょっとした手土産やプチギフトに使いやすく、小物入等にもリユースできそうなスクエアサイズの缶が完成した。「ワッフルつかまえた」のほかにも、ベイクドチーズ味の「ひそひそワッフル」や、「hibiyuu ワッフル缶2缶セット」がシリーズとして取り揃う。

「"ちょうどいい可愛さ"を表現したかったので、ポイントになる模様を差し色の赤で描き、その他は控えめにすることでシンプルさを表現しました。ベースには生活になじみそうな落ち着きのある色を選び、色ののっていない部分は缶のマットな白をそのまま活かしました」とヒビユウさん。

缶を開けると入っている小さなカードに綴られた言葉も、詩的で優しい。

日の出屋製菓
三重県三重郡菰野町菰野5062
営)10:00~16:00
取り寄せ可
https://hinodeya-seika.stores.jp/

photography: Yuko Sayama

文筆家。旅、散歩、お菓子やパンや手みやげ、クラシックホテルや建築、雑貨や暮らしなどについて執筆。地方自治体の観光案内冊子も手がける。著書は『歩いて、食べる 東京のおいしい名建築さんぽ』『にっぽん全国おみやげおやつ』『愛しの純喫茶』など50冊以上。
https://www.loule.net/news/
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