【ニッポンの性】アラフォーからセックスを楽しむためのTO DO指南!
Lifestyle 2025.10.24
アラフォー以降になると、レス問題をはじめ、それまでに予想もしていなかった性や身体の悩みが出てくるもの。いくつになっても性生活を楽しむためにできることってなんだろう? アラフィフ恋愛コラムニストのさかいもゆるが、セックスカウンセリングの専門家であるラブライフアドバイザーのOliviAさんと鍼灸師の鰻澤智美さんに聞く、アラフォーからのセックスライフ指南。
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(左から)インタビュアーのさかいもゆるさん、鰻沢智美さん、OliviAさん。性生活の充実を目指すためのカップルカウンセリングやセックスのテクニックの具体的指導などを行なっているラブライフアドバイザーのOliviAさんと、古代中国の皇帝が実践していた世継ぎを絶やさないための性生活指南「房中術」の識者である、鍼灸師の鰻沢智美さん。日頃からクライアントから性の悩み相談を受けているおふたりに、いま、どんなことで悩む人が多いのか訊いてみた。
どうなって行く? 高齢化社会における、これからのセックス。
前回の対談で出た、シニア世代の性機能の低下や膣周りの悩み。それは、50代になった私にとっても他人事ではない。もちろん今後のセックスライフがどうなって行くのかにも関心がある。令和の50代、60代は若々しく、キャリアでも恋愛でも現役。実際にはどんな性生活を送っている人が多いのだろう。
OliviA:昔の小唄(こうた)に由来する言葉で、『30サセ頃、40し頃、50ゴザむしり』というのがあります。これは50代の女性が行為の最中にゴザをむしるくらいに感度が上がる、というのを表現したもの。加齢によって体内の女性ホルモンが減少すると、相対的に男性ホルモンのテストステロンが上昇する影響で性欲が湧く、と言われていたのですが、現実には性欲が低下している人が多いと感じますね。
これまで楽しいセックスを経験したことがなければ、「気持ちよくないし痛いし、なくてもいいか」と段々消極的な気持ちになるのが50代以降の性欲低下に繋がっていると、OliviAさんは分析する。

さかい:私も50代なんですが、確実に性欲の変化を感じます。私は"百イキ"っていう、"1回のセックスで100回くらいイく"実体験をコラムに書いたくらい感じやすい体質だったんですけど、いま、乳がん治療の薬で女性ホルモンのエストロゲンを抑えているんですよね。それもあると思うのですが、もはや性欲がほぼ皆無で。
鰻澤:百イキだったのに?
さかい:はい(笑)。いままでたくさん楽しんだから別にもういいかとも思いつつ、鰻澤さんのカウンセリングにいらした85歳の方のように、やっぱりセックスって若さやエネルギーでもあるから、これでいいのかなと不安で。ここから先、体力が衰えていくと、スローセックスや、挿れなくても繋がってエネルギーを交換できるセックスみたいなものを求めていくのかな? と考えていて。
OliviA:勃起と挿入、射精をメインにした挿入射精主義のセックスのままでは、男性も体力がついていかないし、女性も痛いし濡れないし気持ちよくない。なので、触れ合いが中心の穏やかで身体に負担の少ない高齢者向けのセックスを考えて行く必要はあるんじゃないかと思いますね。
さかい:海外のドラマや映画を観ていると、60代、70代になってもアプリで恋人をみつけるくらいに元気な登場人物が描かれたりしている。だけど現実では、セックスはどうしているんだろうと。挿入もしてるんですかね?
OliviA:60代なら、挿入しているカップルもまだまだいると思いますよ。
さかい:なるほど〜。自分がその年齢になったときに性欲があるかどうかは置いておいて、裸体を見せることへのハードルが高いのではないかと考えてしまうんですよね。

OliviA:そうですね、ボディイメージの変化というのも性欲減退の原因にはなるでしょうね。理想としている体型があるけれど、自分はそうではないから行為に消極的になってしまう、というような。私自身、妊娠出産を経て体型が変わったときに、それを感じました。
さかい:私の周りでも出産した女性から、体型が変わってしまったことに自分自身が萎えるからパートナーの前で脱ぎたくない。それが原因でレスになるという話をよく聞きます。
そんな状態を克服するためにも、セルフプレジャーを習慣にして欲しいと、おふたりは力説する。
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感覚を見失わないよう"空白期間を作らない"

さかい:どうやってそういう状態を克服して、セックスに繋げて行けばいいのでしょう。
鰻澤:セルフプレジャーを定期的にするのが大切かなと思います。性欲の維持や、濡れる感覚を把握しておくためにも。挿入を伴うセルフプレジャーならば、膣をほぐすのにもいいですし。"空白期間を作らない"というのが、身体にとってはすごく大事。
さかい:え〜! まずい、私、大丈夫かな......(不安)。
鰻澤:その空白を埋めるのが、セルフプレジャーです。もっと早く気づいていれば改善できたのに、ということが結構ありますから。年単位で挿入していないと、比較的コンディションも変わって来ちゃう。
さかい:だけどセルフプレジャーで挿入するのって、どうしても抵抗があって。
OliviA:細めのトイでもダメですかね?
さかい:トライしてみます......!
膣が衰えるのは加齢だけが原因ではない。OliviAさんは産後に顕著な膣の変化を感じたという。
OliviA:妊娠中から行為を控えめにしていて、産後も性欲が回復しないから回数を減らしていた時期があったんです。そうしたら、生理が復活して月経ディスクを使ったときに、うまくフィットしなくて違和感が強かった。約1年膣を使わないだけで、月経ディスクにさえ抵抗を感じる身体になってしまったと思いました。膣の中が強張るというか、柔軟性がなくなる感じ。そこから意識して、膣の中を指や挿入タイプのトイでほぐすようになりましたね。
さかい:ほかに出産されてからのセックスの感じ方に、何か変化はありましたか?
OliviA:妊娠中に骨盤底筋群が伸びた影響か、産前産後はオーガズムの感覚がボヤけているなと感じました。そのときは、膣用のモイスチャージェルを塗って保湿しながら、膣トレ用のボールで鍛えて戻しました。
さかい:出産関係なく、性行為をしていないと、膣は強張って行くのでしょうか?
OliviA:そうですね、閉経後だと1年くらいで膣萎縮が認められると言われています。
年齢的にいつ閉経してもおかしくないので、怯える私......。
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顔のケアと同様に女性器もケアすべし

健康診断と同じで、「気づいたら手遅れだった」となる前に、膣周りも定期的なチェックが必要。OliviAさんは「顔のお手入れと同じように、膣のマッサージを」と推奨する。
OliviA:おすすめは膣トレボールと指でのマッサージ。私自身はそこまで指マッサージは念入りにはしてないですが、セルフプレジャーのついでに指も挿れて、濡れるかチェックはしています。
さかい:自分の指を挿れることに抵抗があって。指以外でチェックの方法はありますか?
鰻澤:手鏡で見てチェックするでもいいんです。普段よく見ている顔は、鏡を見るだけで今日は浮腫んでいるなとかスッキリしているなとか、自分のコンディションが判断できますよね。膣も同じ。性反応って見た目に変化がしっかり現れるから、性的に興奮して充血すれば色も変わるし膨らみ方も変わる。そうやって視覚で認知するのは、すごく大切。
OliviA:そうそう。抜き打ちで見てみると、意外と乾燥しているなとか、弛んでいたり萎んでいたり白髪が混じっているなど、びっくりすることもあるかもしれませんが。そのうちに見慣れてきます(笑)。
そうやって自分の膣周りのコンディションを把握しメンテナンスしておくことは、シニアになったときの性生活の充実のための投資でもある。OliviAさんの知る50代女性は、卒婚したタイミングで学生時代に憧れていた男性に再会し、お付き合いがスタート。50代にして人生で初めてセックスが気持ちいいと思えたという。
さかい:何ですか、その楽しそうな話は!
OliviA:希望が持てるお話ですよね。40代で離婚して、いますごく性生活を楽しんでいるという方もいるので、40代、50代はまだまだ可能性を秘めていると思います。ほかにも男性から聞いた話では、60代の彼女がいらして、彼女はよく濡れるし膣も硬くなっていないそう。
さかい:その男性はおいくつなんですか?
OliviA:彼女よりかなり年下。で、詳しく聞いてみると、彼女は、普段から膣のセルフマッサージや、バイブレーターで膣内を刺激して潤いや柔軟性を保っているんですって。やっぱり、日頃からケアしていたらいくつになってもセックスできるんだろうなと思ったエピソードでした。
つまりいま現在、空白期間があったり、いままでにいい性体験をして来ていなかったとしても、50代以降に相手ができて再開することもあるということ。
鰻澤:本当に、メンテナンスは大事ですね。
さかい:そうか、これはメンテナンスですね。たしかに、スキンケアは毎日コツコツやっているのに、セックスだけ付け焼き刃ではダメってことか。筋トレとも同じで、日々の積み重ねが必要......。
鰻澤:その通り。肌と同じように、膣も潤いと筋肉の柔軟性を高めておく。相手が居ないのならば、セルフプレジャーをしておくといい。出会いって、いつどこにあるかわかりませんから。明日、明後日に急にチャンスがやってくるかもしれない。
Olivia:そうですね、先ほどの話のように、50代で戻ってくる可能性もありますし。
鰻澤:それと膣周りだけでなく、筋力や血流みたいなものが基本になってくるので。運動不足をきちんと解消する、みたいなことが本当に大切になって来ます。下半身の筋肉が衰えれば上手く動けないですし、股関節の可動域や体幹なども、性行為の質には影響して来ます。また、膣が濡れないというのは血液循環のバロメーターにもなる。だから膣周りのケアは、セックスのためだけというより、ヘルスケアの一環として捉えて、ウェルビーイングのためにも、積極的に取り入れて欲しいですね。
ラブライフアドバイザー/日本性科学会会員
2001年よりセクシュアリティやジェンダーの調査研究を始め、2007年から性に関する総合アドバイザーとして活動。メディア出演、執筆、講演、カウンセリング、商品開発など幅広い分野で、「女性のセクシュアルウェルネス」や「コミュニケーションを重視した性生活のあり方」を提案している。オンラインで好きなときに受講できる講座もオープン。著書は日本・台湾で出版。近著「セックスが本当に気持ち良くなるLOVEもみ」(日本文芸社)
公式サイト:https://olivia-catmint.com/
インスタグラム:@oliviacatmint
鰻沢智美
鍼灸師。古代中国で皇帝が世継ぎを作るために実践していた「房中術」に精通、GINZA Webで東洋医学と性についての房中術コラムを連載。太極拳やヨガなどの身体機能を高める指導と、漢方や鍼灸などの東洋医学を融合させた施術が評判。
さかいもゆる
恋愛コラムニスト。アラフォーでバツイチになり、以降、自身や取材の経験を活かした恋愛&セクシュアル・エンパワーメントコラムを執筆。多数の女性誌&モード誌で連載を手がける。Xアカウント:@batsui1teacher
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photography: shutterstock text: Moyuru Sakai








