大人になってからの自然な出会いはここにあった! 「婚活読書会」を知っている?
Lifestyle 2025.12.17
出会いの手段として一般的になったマッチングアプリだけど、本当はもっと自然な形での出会いが欲しい、そう感じている人は多いのではないか。もしあなたがそう思っているのだとしたら、「本」を通じた婚活サービスが、あなたが望んでいた出会いになるかもしれない、というお話。恋愛コラムニスト・さかいもゆるが、話題の婚活読書会の様子を潜入レポート。
そもそも読書会って? 果たして婚活読書会で出会いはあるのか。

いま、読書会が静かなブームだ。
カイア・ガーバーやデュア・リパ、リース・ウィザースプーンなどブッククラブを運営しているセレブも多く、私自身もライター仲間と隔月で読書会をしている。やはり共通の趣味を持つもの同士で語り合うのは絶対的に楽しい。そんな中、「本」をキーワードにした婚活サービスも増えている。お見合いパーティーよりはカジュアルで、好きなものを通して出会いを求めている文化系男と出会えるなんて、最高ではないか(私的に)。
そう思っていたらインスタグラムのフィードに流れて来たのが、天狼院書店が開催している婚活目的読書会「BOOKLove〜恋愛目的読書会〜」。いままで読書会は何度か参加したけれど、正直、参加者の読書レベルにバラつきがあり、物足りなさを感じることもしばしば。その点、書店主催なら読書意識が高い人が集まりそう。何より「恋愛目的以外の方お断り」を謳い、婚活に振り切っている潔さがいい!というわけで久しぶりに参加したいと思えるイベントだったのだけれど、残念なことに参加資格は39歳以下(涙)。私はアラフィフなので、出会いを求めていた編集部アシスタントのMさん(30歳)が参加(私は見学)。果たして恋愛目的の読書会とはどのような内容で、どんな人々が参加しているのか。そもそも出会えるのか?
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恋愛目的読書会と他の婚活パーティ、何が違う?
会場は渋谷Miyashita Park内にある天狼院書店のブックカフェ。テラス席から冬はコタツ席まであり、広すぎないけれど開放感のある、ちょうどいいサイズ感の会場。イベント前にカフェ利用でPC作業をする人がいた。同じフロアで男女約30人が婚活をしている様は何だかシュール。
今回参加するMさんはパリジェンヌ風のミニワンピースが似合う、清楚で小動物系の雰囲気のある女性。読書家というのは憚られるけどアートは好きだという。会は「自分に似ているキャラが登場する本について語る」というコンセプトのため、彼女は原田マハさんの『板上に咲く』をセレクト。


取材した日の参加者は男女合わせて29名。定員は男女12名前後で調整しており、毎回すぐに埋まってしまうのだそう。3年前からスタートし、東京だけでなく名古屋、福岡、京都の天狼院書店でも同時開催している。アルコールを含むドリンクとフードが提供され、参加費は¥4,950(税込)。
※画像は「BOOKLove」のサイトからお借りした別の日の開催写真。©︎天狼院書店
開始時刻になると、10人程度のグループに分かれてテーブルに着席。今回の参加者は最年少が23歳、最高齢が39歳。パッと見て感じたのは、服装が他の婚活パーティよりもカジュアルでおしゃれな雰囲気だということ。男性はスウェットのセットアップのようなスポーティな人もいれば、ジャケット着用の人も。ピンクヘアのアイドル風男子から、真面目なサラリーマン風好青年まで幅広い。女性は、いかにも、な婚活向けモテ服を着ている女性は皆無。むしろ個性的でファッションにもスタイルがある人が多い印象で、普段のその人らしさが伝わるようなリラックスした空気がある。
全員が簡単な自己紹介と今日持参した本についてスピーチし、ぐるっと一巡したら男性陣は別のテーブルのメンバーとスイッチ。同性同士は同じ本の紹介を聞くことになるため、慣れた参加者には複数の本を用意して来ていたシゴデキな人も。私のように、インスタで見つけて開催を知った参加者がほとんどのよう。
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結論から言うと、婚活読書会、すごくいい。

Mさんも言っていたけれど、回転寿司形式の婚活パーティのように突然1対1で対話しなくてはならない場と違って1冊の本について語るというお題が与えられているため、話のきっかけがありコミュニケーションがスムーズ。さらにどんな本、作家を選んだかでその人のセンスや知性、価値観までが透けて見えて来る。本を紹介する際のプレゼンテーション能力や語彙力や、他の人が紹介しているときの聴く態度はどうか、などなど。約3時間のイベントを通じてチェックできる項目は、想像以上に多いのだ。
持ち寄られた本は、星野源のエッセイから銃と病原菌の地域情勢の分析本まで硬軟入り乱れたチョイス。選んだ理由やおすすめのポイントなど、普段自分では選ばないようなジャンルの書籍を知れて、見学しているだけの私も思わず聞き入り気になる本のタイトルはメモ。人がどんな動機から本を選ぶのかというエピソードを聞くのは、非常に興味深い体験だった。
マッチング成立のお知らせはイベント終了後72時間以内に!

最後にはフリータイムがあり、気になったメンバーともちろん本以外の会話もできる。自分から話しかける勇気がなければ、運営者に相談するとセッティングもしてくれる。ここで面白かったのは、女性同士で盛り上がるメンバーたちも結構居たこと。運営者によれば他の婚活パーティと違って本好きがコミュニケーションを求めて参加することもあって、同性同士で仲良くなることも多いのだという。そういえば、本の紹介タイムでも女性陣が積極的に場を盛り上げている場面が目立っていた。自立している知的な素敵女子が多いという情報に、納得。
連絡先を交換したい相手のナンバーを運営のサイトに入力(複数可)し、マッチングが成立したらイベント終了後72時間以内に運営から連絡が来るシステム。Mさんはフリータイムでいい感じになっていた文系男子と、最後に少しだけ話していたピンクヘアの自由系男子の2名にリクエストを提出したと教えてくれた。可憐で、イベント後に女性だけで集まった飲み会でも「癒される〜」と人気だった彼女のこと、きっとマッチング成立している気がする。ーーーと思っていたら、後日そのふたりとマッチングし、文系男子とデートに行く予定が進行中だと連絡をくれた。
やっぱり似た雰囲気の男女は惹かれ合うのね。「婚活イベントは初めてでしたが、大勢の方がいらっしゃる場だったので緊張せずにお話できて楽しかったです」、と彼女。
今回の東京以外の会場も含め参加者は55名、総マッチング数は62件。何名でもリクエストが出せるため、ひとりで6件マッチングした強者もいるという。このマッチング率の高さも、やはりお見合いパーティよりも心理的にハードルが低く広がりがありそうな"読書会"という体裁が影響しているのかも。
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参加女性たちの赤裸々感想コメント。

レポートはまだまだ続く。
イベント後の女子会では、「本好きって物事を深く掘るのが好きな人が多く、音楽好きも多い印象。本以外の趣味でも意気投合できて楽しかった」、「受け身の男性が多いのは文系だからかな? だけど話を一生懸命聴いてくれる人は好印象でした」、「うんうん、笑顔だと好印象だよね。無表情の人は、楽しんでるのかなと気になっちゃいました」、「回転寿司スタイルだとひとりと短い時間しか話せないし疲れるけど、このイベントは1対1では引き出せないその人の中身があらわになるのがいいなと思いました」などなど、概ね好評のよう。ちなみに、全く同じ作家の同じ本(しかもマイナー)を持って来た女子がふたり居て、その方たちはきゃっきゃっと盛り上がっていた。これ、男女なら恋が生まれるやつ。そんな出会いが生まれるのも読書会ならではだと思った。
なぜいま、婚活は読書会なのか。

後日、改めて主催者である天狼院書店代表の三浦崇典さんにお話を伺った。2025年にはゼクシィの縁結びをはじめ、Yahoo!パートナーなど8個のマッチングサービスが終了を発表した淘汰の時期において、逆行するかのように2025年9月に結婚相談所まで開設した天狼院書店。なぜいま、読書会スタイルの婚活を提案するのだろうか。
「指先ひとつで嘘がつけてしまうマッチングアプリは遊び目的の男性も多く、女性のリスクが高かった」。それが、三浦さんがこのイベントを始めた理由だという。「少子化で出会いのきっかけが減少する中、出会いの機会を提供したかった」と続ける。「BOOKLove」という実体、つまりリアルの場で顔を合わせて語る、その面倒を厭わずに参加する読書会には、より真剣度の高い参加者が集まる。そこが狙いだという。「読書会で出会った、ならば人にも言いやすいですよね」。
同社が手がける「BOOKLove結婚相談所」は、独身証明書の提出はもちろん、ジャーナリングやライティングなど様々なセミナーでその人自身の魅力を磨けるオプションメニューを充実させているのも特徴。「その結果、彼氏居ない歴=年齢だった47歳の女性が魅力開花して、人生初の恋人が出来たケースもあるんですよ」と三浦さん。
ChatGPTに悩みを相談する人も増えている昨今、VRも進化して、この先にはAIさえあれば恋人は必要なくなって行きそうに思うのだが、三浦さんによると「AIが進化すればするほど、実体を伴ったリアルな体験や人間関係に、より価値が出て行くと思います」とのこと。だからこそ、オンラインではない趣味を介したパートナー探しに需要が高まる、という予測である。たしかに若い世代の間では音楽をカセットテープで聴いたり、紙で読む本を求めて文学フリマが盛況だったりと、何かとデジタルよりもアナログに向かう流れ。SNSで誰とでも繋がれる時代に対面で人とコミュニケーションするのは、それ自体が特別な体験となるのだろう。
恋愛コラムニスト。アラフォーでバツイチになり、以降、自身や取材の経験を活かした恋愛&セクシュアル・エンパワーメントコラムを執筆。多数の女性誌&モード誌で連載を手がける。Xアカウント:@batsui1teacher
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