【ニッポンの性】5年以上セックスしていない「セカンドバージン」、どうやって脱出するの?
Lifestyle 2024.04.26
セックスから長年遠ざかっていたアラフォーが久々にセックスするのには勇気がいる。裸を見せるのも抵抗があるし、そもそもやり方を忘れてしまった、という人もいる。5年以上ご無沙汰だった彼女たちが「セカンドバージン」を脱出して再びセックスをした正直な感想を恋愛コラムニスト、さかいもゆるがレポート。
セックスが欧米に比べてそこまで重要視されない日本では、パートナーがいてもいなくても「長年ご無沙汰」という話は珍しくない。特に女性は男性と違って、出さないと溜まるという物理的な支障もないためか、気がついたら5年以上していない、という「セカンドバージン」は私の周りでも多いのだ。
アラフォーになると久々に裸体を人前に晒すのにも勇気がいる。性欲がそこまで強くなければ、もうこのままセックスしないで死んでいくのかもしれない......などと、ぼんやりとした危機感を抱きつつも、新たなパートナーをみつける面倒臭さの方が勝って、結局セカンドバージン歴を更新する−−−となりがちなのかもしれない。
もちろん、セックスは"しなければならないもの"ではない。だから長年していなくても何も問題はないというのは前提の上で、長期間セックスなしで過ごしていたアラフォー以上の女性が久々にセックスを経験したとき、メンタルや身体にはどんな変化が起きたのか? そこに心理的な壁はあったのか? どう脱して、どう乗り越えたのか? 脱・セカンドバージンした3人の女性たちに聞いてみた。
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Aさんの場合:7年ぶりのセックスは相変わらず無感覚。
そもそも性欲を感じたことはなかったというAさん(38歳)は、20代の頃からセックスは恋人が望むから応じるだけの作業、というスタンスで生きてきた。「元々ロジカルな性格なので、恋をするときも性的魅力というよりは知的さに惹かれて、『素敵』ベースで付き合うんですよね。そういう相手と動物的な感じにはなれなくて」。相手を喜ばせるために感じるフリはするものの、快感を覚えたことはなく、触られてもくすぐったいだけの完全に「無」の状態。行為中は常に冷静な自分が俯瞰で自分を観察している感覚があるという。
25歳の時に同棲した恋人とは、4年間交際したうち、最初の1年以降はレスに。仕事で忙しくて夜の誘いを断るうちに、誘われなくなった。別れた原因はレスではないという。その後、35歳で6年ぶりに同僚に紹介された男性と"脱セカバー"を果たした。「3ヶ月くらいデートしたあとに、大晦日は彼の家で一緒に過ごそうということになって。きっとそういう流れになるんだろうな思いました」。
6年ぶりのセックスって、すごく緊張しそうだ。どんな気持ちでその瞬間を迎えたのだろう。「30代になった自分の身体って、他人から見てどんな感じなんだろうとか考えましたね。SABONでスクラブを買ったり、腹筋したりして、その時に備えてはいました(笑)」。
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意気込んでいたわりに、行為の最中はやっぱり「無」。また冷静な自分が顔を出してしまい、「恥ずかしくてニヤニヤしちゃって。『何がおかしいの?』って聞かれましたが、たぶん向こうはキレていました。『せっかく自分なりにムードを作ったのに......』と」。その後はLINEの連絡回数も減少して疎遠になってしまったとか。
その2年後に婚活をスタートして、アプリで知り合った男性と交際した際には週1で会うたびに関係を持っていたけれど、彼女の方からスキンシップを求めることはなく、それを指摘され、LINEでフラれたという。感じる演技はしていたつもりでも、「楽しくなさそうだよね」と言われてしまったそう。そこからさらに2年が経ち、彼女のセカンドバージン歴は約2年。「友達と、よく『ハプンしないね』って話しています」。ハプンは、英語のHappenのこと。出会いがあっても、それが恋にまで発芽しない。40代も視野に入ってきた現在では、出産&結婚願望は薄れ、「いつかパートナーができたらいいな」という考えにシフトした。
「いつかまたセックスしてオーガズムを感じる機会が持てたらいいな」という思いと、「このまま前回のセックスが人生で最後になるのかもしれない」というある種の焦燥感。それは、ある一定の年齢以上でシングルの人ならば誰でも感じるものかもしれなくて、とてもリアルに思える。セックスとは、しようと思えばいつでもできるようであり、一方で相手があることなのでいつ「ハプン」するかわからない、不確定なものだからだ。
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Bさんの場合:12年のセカバー期間を経て、アラフィフで人生初のオーガズムに開眼。
前述のAさんと同じく長らく性欲がないタイプだったBさん(49歳)。「今の彼とするまでは、セックスって地獄だと思っていた」という彼女が人生初のオーガズムを得たのは去年のこと。一体何が起こったのだろう。
37歳で離婚するまで元夫とは2年ほどレスが続き、離婚後も12年ほど誰ともしていなかったという。「今まで付き合った人、全員が淡白だったんですよね。それに私の膣が小さいのか、濡れないし挿入されても痛いだけだし、向こうはキツくてすぐにイッてしまう。セックスの気持ち良さを味わったことがなかったんです」。
ふたりの子どもを育てるシングルマザーだということもあり、再びセックスをしたい願望はゼロだった言う彼女。しかし40代半ばになって同じバツイチの同級生から「セックスってすごく楽しいから、しないのはもったいないよ。私は今恋愛をしていて楽しいの」と言われて、「そんな世界があるんだ」と目から鱗が落ちたような気分に。
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その後X(旧Twitter)のDMで知り合った年下の男性と交際して、脱セカバーはお酒に酔った勢いであっさりと。その男性とは2年ほど付き合ったものの、結局何度してもやっぱり痛いだけ。さて、そこからが件の「人生初オーガズムを味わせてくれた彼」の登場である。
どうやらポイントは「安心感」のようだ。知り合ってから7年以上、ずっとLINEでのやり取りを続け、その間彼女のことをベタ褒めしてくれたのが今の彼。以前は自分の顔が嫌いで鏡を見るのも嫌だったBさんが、彼のおかげで顔出しでYouTuberになるまでに自己肯定感が上がったという。「去年末くらいから週1の頻度でホテルにお泊まりをしているのですが、生まれて初めて、セックスが素晴らしいと感じて。心が開くと身体も開くっていうのを、実感しています」。丹念に時間をかけて前戯に時間をかけてくれる彼とは「毎回最高」らしい。
毎回ホテルのスイートルームを取ってくれて、お互いに昼間は仕事をしつつ、夜はセックス。だけどセックスがあってもなくても心地いい時間を過ごせる相手であることが、一番の幸せ。
「心から感じるセックスを経験したことで変化したものは?」という問いに、「人生の安定感が生まれた」とBさん。「苦手なセックスを克服できたというのがいちばん嬉しい。あと、いいセックスを知ったら、遊びのセックスには興味がなくなりました」。
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Cさんの場合:気持ちが入っていない相手だからこそ、没頭できた。
そんなBさんの経験談を覆すのが、Cさん(45歳)の脱セカバーエピソード。現在10年以上セックスをしていない、「サードバージン」に突入した彼女がセカバー時代、5年ぶりに関係を持ったのは合コンで知り合った男性。「とにかく彼氏をつくろう」と思っていた時期に挑んだ合コンで、イケそうだと感じた彼にロックオン。自分からグイグイとデートに誘い、3度目のデートで付き合うことに。タイプではないし、特別好きという感情があった相手ではないが、致したところ、これがすごく気持ちよかったのだという。
「好きじゃないから恥じらいもなく、思い切り解放できたのかもしれません。自分でもびっくりしたのですが理性が吹っ飛ぶくらいに感じたんです」。以前に付き合っていた大好きな恋人とのセックスも普通に気持ちよかったけれど、ここまで感じたことはなかったのだそう。なのでBさんとは真逆なケースである。
「好きでも嫌いでもなかったけど、セックスは相性がよかったのかな」というその相手との関係は長く続かず、3ヶ月で自然消滅。そのまま10年くらいセックスなしの生活をしている。感情なしでも性の快楽は得られると身を以て知った彼女だけど、それ以降パートナーを求める気にならず自分の趣味や仕事の時間を楽しんで過ごしているそう。
これで最後かもしれないと思うと危機感を覚えて一時は女性用風俗について調べたこともあったというが、「性欲がそこまであるわけでもないし、やはりセックスするならば付き合っている相手がいいので」、今はやっていたマッチングアプリもお休み中。
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三者三様の脱セカバー体験談。彼女たちが脱セカバーから改めて学んだことは、自分らしい性欲のあり方。セックスをしてもやはり「無」だったAさんに、心を開くからこそ体もひらけたというBさん、心が入らないからこそ恥じらいを捨てられるというCさん。どれが正解というものはなくて、どれを選んで、どう脱しても、どんな風にセックスと向き合うかも、結局は人それぞれ。セックスに「普通」なんて存在しないということがよくわかる。
私たちはすぐに何かを誰かと比較して不安になり、「皆と同じ」を手に入れて安心しようとするけれど。自分が心地いいと感じるのならば、セックスはあってもなくても構わない。何かを「すべき」という考えを捨てていこう。それがこれからの私たちの、「ニッポンの性」。
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恋愛コラムニスト さかいもゆる
出版社勤務からフリーランスのファッションエディターとして独立。その後、アラフォーでバツイチになった経験から、恋愛や結婚における本当の幸せとは何かを考えるインタビュー読み物やコラムを多数の女性誌で執筆している。
text: Moyuru Sakai