日々の生活を彩るワインを自分らしく楽しむフィガロワインクラブ。 イタリア人ライター/エッセイストのマッシが、イタリア人とワインや食事の切っても切り離せない関係性について教えてくれる連載「マッシのアモーレ♡イタリアワイン」。今回はイタリアでのバレンタインデーの楽しみ方と、ワイン、食事を楽しむルールについて語ります。
>>前回:イタリア人の心も身体も温めるホットワイン、ヴィンブリュレとは? ピエモンテ流レシピをマッシが伝授!
1年で最もロマンチックな夜であるバレンタイン(イタリア語でサン・ヴァレンティーノ)。イタリアでは男性から女性にプレゼントを贈ったり、料理を振る舞ったりする。料理の場合、相手の好みに合わせて特別に考えたメニューを用意したいならワインも欠かせない! 今回は、イタリア人の感覚で料理とのペアリングを楽しむための、ワインのルールをご紹介しようと思う。今年は大切なパートナーに、家でイタリア式のサン・ヴァレンティーノをプレゼントするのはいかが?
ルール1. 量を惜しまないこと!
最初のルールは、ワインの量を惜しまないこと。市販されているハーフボトル(0.375Lで3杯たっぷり注げる量)でも足りるかもしれないけど、パートナーへの優しさとして標準サイズのボトルを開けるのがおすすめだ。ワインの特徴だけではなく、そのワインから語れるストーリーとして、ラベルも意識しながら選ぶべきだ。そうすると、食事中に飲んでいない時間もワインの話ができる。きっと喜ばれるし、いつもと違って特別感も与えられるはずだ! 飲み残しが出た場合も心配無用。適切なストッパーを使えば、ワインは冷蔵庫で約1週間ほど保存ができる。
ルール2. ワインは最低2本!
次のルールとして、ワインは必ず2本以上を目安に用意しよう。日本ではあまり考えないかもしれないけど、イタリアではまず欠かせないのが、乾杯用の1本目。イタリア人は必ず軽やかでバランスの良いスパークリングワインを選ぶ。複雑なメトード・クラッシコ(伝統的製法)のスプマンテは避け、メトード・シャルマ(シャルマ方式)のスプマンテを選ぶのがおすすめだ。初めの乾杯としても、前菜に合わせるにしてもぴったりだし、ロマンチックな空間に入るための鍵にもなる。
特におすすめなのは、プロセッコ・ロゼ。この規定は比較的新しいもので、2020年10月に認定された。グレーラ種に15%のピノ・ネロをブレンドしたエレガントなスプマンテ・ロゼは、飲みやすくバランスも良好だ。
メインディッシュに合わせる2本目を選ぶポイントは、アルコール度数やボディ感が高めなワインを選ぶこと。決して順番が反対にならないように注意するべきだ! ワインを飲むだけではなく、細かいところまで考えて自分のこだわりを出すのも、イタリア人のアピールのひとつだ。
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ルール3. 女性が好きなものとは?
一概にはいえないけど、昨今、女性の味覚はいままで以上に洗練され、繊細になってきている。イタリアでは「まろやかすぎるワイン」「甘さが強いもの」「樽香が強すぎるもの」は好まれない。より辛口で、引き締まった味わいのワインが好まれる傾向にある。ワイン本来の個性を楽しみ、料理がそのバランスを整えてくれると信じて、男性陣はぜひパートナーの好み探しに挑戦してみよう!
大切なパートナーをどこまで知っているのか、どのくらい深く考えているのか。選んだワインで相手への情熱が分かるのだ。
ルール4. 食事とワインのペアリングは色で選ぶ!
完璧なバランスを見つけるためには、色がヒントになる。たとえば、甲殻類や肉のタルタルなどのロゼ色の料理にはロゼワインを選び、バジルソースのタリオリーニにはフレッシュな白ワイン。煮込み料理には熟成感のある深い赤ワインを合わせるのだ。食卓はまるで油絵のようになって、そこに座った女性はプリンセスに変わり、その食卓は自然とロマンチックな舞台になる。
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ルール5. シンプルな料理にはシンプルなワインを。複雑な料理には骨組みがしっかりしたワインを。
「それぞれの料理に合ったワインを選ぶのが当たり前」の感覚を持つイタリア。ビーフカルパッチョのような繊細な料理には、繊細で控えめなワインを選んだり、長時間煮込んだジビエ料理には、重厚で熟成感のあるワインを合わせたりする。ワインがなければ、料理を楽しめない。料理は見えないところまで考えないと、適切なワインを選び抜くことはできない。ここまで考える理由は最高の空間と時間を作るためだけではなく、相手との思い出作りのためでもある!
大切な人に贈るのは物だけではなく、特別な体験。このバレンタインデーが、ワイン好きとしてのスキルを楽しく磨ける時間になりますように! 「愛している」という言葉より、その愛情を形にして相手に五感で楽しんでもらえる以上のプレゼントはない。
1983年、イタリア・ピエモンテ生まれ。トリノ大学大学院文学部日本語学科修士課程修了。2007年に日本へ渡り、日本在住17年。現在は石川県金沢市に暮らす。著書に『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(2022年、KADOKAWA 刊)
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