旅して味わう、日本ワインのふるさとへ。#02 北海道のワイナリーで、無濾過ワインの優しい味に感激。
Travel 2017.09.07
造り手に会い、畑を眺め、その土地に思いを馳せればおいしさも一層アップ。若い醸造家や新ワイナリーの誕生で、いま注目の日本ワインを巡る旅。北海道・札幌の中心地からほど近いさっぽろ藤野ワイナリーでは、自然な造りだからこそ実現できる、優しい味わいのワインをいただける。
北海道札幌市|さっぽろ藤野ワイナリー
左から、瓶内二次発酵の柔らかな泡が特徴の「ナイヤガラナチュラルスパークリング2016」¥1,944、「コハル2016 ロゼ」¥2,052
北海道にはいま、大小のワイナリーがある。その半数以上は札幌から車で2〜3時間圏内。札幌のシェフやソムリエたちは日常的にワイナリーに足を運び、農家や醸造家も街へ出れば彼らの店に立ち寄る、いい関係を築いている。なかでも最も街に近いワイナリーが、さっぽろ藤野ワイナリーだ。中心部から車で約30分。小川の流れる庭の小径を奥へ進むと目の前が開け、小さな丘にブドウ畑が広がる。ブドウは開設当時は栽培が難しいとみられていたピノ・ノワール、シャルドネ、山ブドウなど6品種。敷地内の醸造所では、年産1万9000本を無濾過でボトリングしている。
醸造担当の浦本さん。「自然なワイン造りの基本は、たくさんの手作業です」
左:小さな樽で仕込んで常に8銘柄前後を販売。農園と生産者の名が入った樽は、単一農園ワイン。
右:ピノ・ノワールの栽培を初めて試みたのは2000年。ようやく育成が安定し、収穫量も増えた。
「僕たちのワイナリーは、食卓への距離がとても近い。できるだけ昔に近い製法で造り、フレッシュなうちに飲んでもらえれば」と、醸造担当者の浦本忠幸さん。北海道大学理学部卒業後にワイン造りを志し、ブドウを野生酵母で醸す現在の手法を実地で学んだ。修業先との縁をつないだのが、いまのオーナー姉妹だった。浦本さんは「初めて藤野のワインを飲んだ時の優しい味わいに惹かれ、働きたいと志望しました」と語り、旨味やまろやかさを残しやすい無濾過にこだわる。この生き生きとしたフレッシュなワインが目当ての人も、ひとときの別世界を求める人も、思い思いに過ごせる癒やしの園だ。
ワイン造りの原点を求め、道東の斜里窯で焼いたアンフォラ(素焼きかめ)を用いる仕込みにも挑戦中。
1haのブドウ畑を含む広い園内を散策した後は、ワイナリー併設のカフェレストラン ヴィーニュでランチ。藤野のワインとともに楽しむのにおすすめの2品。左上:「ピッツァマルゲリータ」Mサイズ ¥1,000 右下:「ワタリガニのトマトクリームパスタ」¥1,500。 夏は園内で育つ、摘みたてのハーブや野菜がたっぷり使われたメニューが人気。
北海道札幌市南区藤野670-1
tel:011-593-8700
営)11時〜18時
休)火
醸造所以外は見学可 無料
[レストラン]カフェレストランヴィーニュ
tel:011-591-5676
営)11時〜17時L.O.(月〜金)11時〜20時L.O.(土、日、祝)
無休 予約したほうがいい
www.vm-net.ne.jp/elk/fujino
●札幌駅より真駒内駅まで18分、真駒内駅からバスで約15分、「藤野4条2丁目」のバス停から徒歩約15分。もしくは札幌駅から車で約35分。
*『フィガロジャポン』2017年9月号より抜粋
>>さっぽろ藤野ワイナリーからの立ち寄りスポット
---page---
■立ち寄りスポット #01
道産食材とのマリアージュ。
ブラッスリー コロン ウィズ ル・クルーゼ
農家やワイナリーと交流の深いレストラン。ひとつの農園、ひとつの食材にフォーカスした月替わりのメニューとともに、道産ワインをグラスで楽しめる。ワイン愛好家に人気が高いのは早めのディナータイム。奄夢豚など産地に通う中から生まれた旬のショーケースのような料理にワインも進む。ボトル売りの道産ワインは、人気の山崎ワイナリー、宝水ワイナリーなど10ワイナリー20銘柄ほどリストアップする。
ランチセット¥1,600から「奄夢豚ハンバーグ 牛スネ肉の赤ワインソース」。「山崎ワイナリー ツヴァイゲルトレーベ」ランチ限定グラス¥850
北海道札幌市中央区南1条西2 丸井今井札幌本店 大通館 3F
tel:011-221-4141
営)10時~19時 L.O.
不定休 ※施設に準ずる
予約したほうがいい
www.brasserie-coron.com
■立ち寄りスポット #02
希少な道産ワインを、気軽にグラスで。
バルコ札幌
北海道食材を使ったタパスと、国内外のおいしく手頃なワインを気分に合わせて選べる街角のバル。ハウスワインは小規模農園、中澤ヴィンヤードの「クリサワブラン」で、グラスで常時飲める店は貴重。道産ワインは空知地方を中心にボトルで揃えている。カウンター飲みのほかに、奥の予約席で地元食材たっぷりのコース料理を楽しむこともできる。生産者や料理人も立ち寄る店で、札幌の夜を締めくくりたい。
「クリサワブラン」グラス¥1,000。HPで告知される道産ワインのフェアでは、希少な銘柄に出合えることも多々ある。
北海道札幌市中央区北2条西2-15 STV北2 条ビル南側 1F
tel:011-211-1954
営)16時〜22時30分 L.O.(月〜水)16時〜23時30分L.O.(木〜土、祝前日)
休)日、祝
予約したほうがいい
http://barcom.jp
【関連記事】
日本ワイン#01 草花に囲まれた美しき日本ワイナリー、カーブドッチへ。
オーストラリア・ワイナリー紀行。
六本木の路地で、ワインと遊び心あるフレンチを。
photos : IKUYA SASAKI, réalisation : SONOKO FUKAE, collaboration : MIYUKI KATORI