ウイルスと闘う世界のいま。#04 学校閉鎖中の子どもたちをサポートする、アート界のプロジェクト。

Travel 2020.03.27

文/稲石千奈美(在LAカルチャーコレスポンダント)

ロサンゼルスで事実上、外出や集会が禁止されてから、コミュニケーションでも「かつてない」という意味の単語「unprecedented」や、「不透明」を意味する「uncertain」を入力することが多くて、最近ではunとタイプすると真っ先に提案されるようになりました。行動のキーワードは「ソーシャルディスタンス」。人混みを避け、人との間隔を6フィート(1.8メートル)空けて感染予防を、というもの。営業を許可されている食料品店やファーマーズマーケットでもアンジェリーノたちは離れて行列。そんなシーンを除けば、街はひっそりしています。

ニューヨークタイムズによると、アーティストやライターはもともとひとりでこもって作業をするので、感染の影響度が低いそう。知り合いのコメディアンもこの情勢下で、来るべき時の笑いなるようにとジョークづくりに忙しい。とはいえ、LAではエンターテイメント業界への大きな打撃が真剣に懸念されるいっぽうで、映像作家やミュージシャン、アーティストらクリエイターがオンラインで自発的にプロジェクトを始めたり、公開したり。離れていても繋がるポジティブな動きにみんな元気づけられているはず。

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もうすぐ!と楽しみにしていたロサンゼルス・カウンティ美術館の奈良美智展も延期になり、美術館やアートギャラリーはオンライン展やバーチャルイベントへ移行。そんななかで見つけた、ひときわハートウォーミングなアート活動が、クリエイティブなアイデアを速攻で実現したアートギャラリー発です。

アメリカ各地の学校閉鎖に伴い、ディスタントラーニング(遠隔授業)が始まったけれど、授業以外に深刻な問題が発生。アメリカの公立校は貧困家庭の子どもたちに朝食、昼食、ときには夕食まで無料で提供する場。そして、家庭内事情から子どもたちが逃避できるセキュリティの場であったりもする。そのため、学校がない=食べるものがない、安心できない、がストレスに。

そんな事情に対応するため、各都市では食料品の無料配布を行う体制が整ってきました。この事態を知ったデトロイトのアートギャラリー「Library Street Collective(ライブラリー・ストリート・コレクティブ」は、貧困に面している子どもたちにアートが貢献できることがあるはず!と一意奮闘。アイデアクリエイション、アーティストの賛同を取りまとめ、おしゃれなカクテルバー「Standby(スタンドバイ」やデトロイト市のチャリティ団体らと協力し、3月23日から2週間、食事に困っている子どもたちにおいしい手作りの食事と限定版のアートスケッチブック・色鉛筆セットの無料配布を始めました。「WE ALL RISE」とタイトルされた美しい表紙のスケッチブック2500冊には、KAWSやダグ・エイケンら29名のドローイングやグラフィックスが印刷されていて、受け取った子どもたちの表情を想像するだけでうれしくなる、Unexpected(予期せぬ)ないいこと。

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デトロイト市教育委員会のモットーから「WE ALL RISE(みんなで立ち上がる)」をタイトルに。photo : WE ALL RISE, a unique sketchbook produced by Library Street Collective for DPSCD students

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小さな子どもから高校生まで対象としたスケッチブック。このページはガーナ出身のコンラッド・エギアー(右)、ブルックリンからトークワセ・ダイソン(左)の作品。photo : WE ALL RISE, a unique sketchbook produced by Library Street Collective for DPSCD students

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クリエイティブな発想がこどもたちのストレスをすこしでも緩和してくれますよう。photo : Zach Elwart

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散歩に出たら近くの歩道にも、誰かさんのチョーク画。笑顔で手を洗って(20秒しっかり)、深呼吸。タイムリーでアクショナブルなアートセラピーはあちこちに。

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texte : CHINAMI INAISHI, title photo : alamy/amanaimages

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