ウイルスと闘う世界のいま。#20 コロナと人種差別抗議デモの繋がりと、いまできること。
Travel 2020.06.30
文/稲石千奈美(在LAカルチャーコレスポンダント)
コロナ規制が徐々に緩和されているロサンゼルスでは、映画館や美術館、サロンやジムなども営業再開が許可され、いよいよ映画やTVの撮影も動き出します。とはいえ、感染状況判断や再開に伴う安全対策に慎重なビジネスも多く、パンデミック以前のようなアクセスが実現するまでにはまだ時間がかかりそうです。
全国的な規制解除とともに、感染者数の増加や、新たなホットスポットも発生しているコロナ禍のアメリカ。ここ1カ月の大きな動きは、アフリカ系アメリカ人=黒人に対する人種差別にまつわる抗議。警察官の加害により黒人男性が死亡した5月末から連日、大小さまざまなデモが行われ、その切実な訴えに対応して、ロサンゼルスを含む地方自治体政府が警察予算の一部を社会サービスに移行することを検討したり、アディダスなどの企業が新人採用で黒人やラティンクス(中南米系の人たち)の割合を大幅に増やすと発表するなど、社会改革の兆しがカタチになりつつあります。
コロナ禍下とはいえデモに参加せずにはいられない人、自宅からSNSメッセージを送る人など、人種を超えて団結する抗議者の声の上げ方はさまざま。マスクを着用した著名人やアーティストたちがデモに参加したり、彼らのSNS発信もパワフルなエネルギー源として抗議運動に貢献しています。
Vakseenとして知られるアーティスト、Otha Davis III のインスタグラムより。
こちらはアーティスト、Nikkolas Smithのインスタグラムより。
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抗議運動の背景には、黒人に対する構造的人種差別や不平等があります。新型コロナウイルス感染症においても、感染者や死亡者、経済的打撃を受けている人や失業者について、人口比に対して黒人が占める割合が圧倒的に高い。また、多くの黒人が収監される刑務所でまっとうなウイルス対策がなく危険であるなど、差別をしないはずのウイルスでも黒人社会が不公平に被害を受けている実情が指摘されています。
差別撲滅や平等社会への改革の道は複雑ですが、目下のコロナの経済的打撃と歴史的に社会に組み込まれた根強い構造的差別に苦しむ黒人コミュニティのためにいまできることとして、黒人経営者のビジネスを支援しようという動きがあります。こもりがちだった物欲を正義支援のために奮い、新しいショップの探索に久しぶりにアンジェリーノの好奇心も高揚し、問い合わせや注文が殺到する店も。差別改善への一歩になるように、このトレンドを定着させなければ。
photo : SCOTT CLARK
セレブスタイリストの黒人女性オーナー、デシェル・マキリアンがキュレーションするダウンタウンアーツ地区のセレクトショップ「GALERIE. LA(ギャラリーLA)」では、アップサイクル、ヴィーガンレザー、ヴィンテージなどサステイナブルファション、クリーンビューティ、エシカルなインディクリエイターをピックアップ。モットーは「Shop Your Values」で、買い物にも自分の価値観を重ねること。ショップを応援すれば、インスタ投稿でも黒人女性であるという理由で金融機関や投資家に差別を受けたことなどを共有しているオーナーが取引するビジネスやコミュニティ支援に繋がり、構造的差別への挑戦に。
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photo : Charles Stone Ⅲ
おいしいコーヒーと美しいデザインがコミュニティを持ち上げ、団結に貢献できるはずと、フラワーアーティストのモリース・ハリスが昨年オープンしたカフェ「Bloom & Plume(ブルーム&プルーム)」。同名のフローラルデザインサービスも経営する。ブラックパワーのシンボルとして「Black Lives Matter」の抗議でも使われる突き上げる拳には、オリジナルデザインで一輪の花を持たせた。カフェではブルーム&プルームらしいモチーフのデコレーションを施し、グッズも販売中。メニューのテイクアウトやグッズはオンラインショップでも注文が可能。抗議デモの後に立ち寄れば、同志もたくさん集まっている。
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texte : CHINAMI INAISHI, title photo : alamy/amanaimages