パリ、モードは元気だ。 バッグが人気のコペルニ、パリコレのショーも大好評。

Paris 2020.11.25

デジタル世代のイットバッグ。

色、素材、サイズ、シルエットを変えてシーズンを超えて登場するCoperni(コペルニ)のスワイプバッグ。日本でも最近販売されるようになったが、最初にこのバッグが発表されたのはブランド再始動の最初のコレクション、2019〜20年秋冬だった。iPhoneの操作ボタンにインスパイアされたバッグは、デジタルネイティブ世代のファッショニスタたちにとってコーディネートの仕上げに不可欠な存在となっている。

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左:スワイプバッグ。大小のサイズがある。 中:スワイプ・ミニ・バゲット・バッグ。 右:2021年春夏コレクションでは型押しのスワイプも。

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左:Wifiバッグ。 中:ミニAppバッグ。 右:2021年春夏コレクションのショーでモデルが持っていたAppバッグにはブランド名ではなくロゴのCが。

セバスチャン・メイヤーとアルノー・ヴァイヤンのデュオがブランドを創設したのは2013年だが、クレージュのアーティスティックディレクターを2015年から3年間務めた間は自分たちのブランドの活動を休止していた。そして2019〜20年秋冬コレクションで、パリのモードシーンにコペルニはカムバックしたのだ。

「バッグは最初に発表した時から、すごく好評でしたね。iPhoneで機内モードにする時にスワイプする、あのアイコンからのアイデア。小さな箱のようなハードタイプのバッグです。その後には、Wifiのマーク、最新のバッグはブルートゥースマークのBからというように……あれ、可愛いでしょ。テクノロジーシンボルのバッグはコペルニのシグネチャーアイテムです」

セバスチャンのこの説明に、アルノーが“オブジェのようなバッグが欲しかったので”とその誕生の経緯を付け加えた。

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2021年春夏コレクションでエクステンション(左)とブルートゥースの2型が新しく登場した。

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服と身体の関係にフォーカスし、来年の春夏はReady to Care。

とことんデジタル!という印象の強いブランド。先日のパリコレでは新型コロナウイルスの影響で多くのブランドがバーチャルな形式で発表する中、コペルニがフィジカルなショー形式での発表を選んだことは驚きだった。

「僕たちはデジタルが大好きですよ。活動再開後の最初のコレクションもデジタル形式だった。だけど、いまのコペルニはショー形式を行う段階にあると思ったのです。コレクションの発表にこれ以上よい方法は考えられないから」(セバスチャン)

「ビデオをスクリーンの中で見せるというのではなく、ヒューマンであることが必要だと思ったんです。椅子の間隔を大きくとって、招待客も前回の1/4に減らして、と気を使ったけど、それでも特別な瞬間を実現させたかったので。モデルのキャスティング、音楽……どれも素晴らしかった。場所もすごくインスピレーション源となるような……」(アルノー)

ショー会場として彼らが選んだのは地上210m、モンパルナスタワーの屋上。屋外でのショー、それも上から覗き込むような高い場所でという希望で見つけた理想の会場だった。その結果、しっかりした仕事とコンセプトのある見ごたえのあるショーはジャーナリストたちからも高い評価が。ショーの後のセールスも大成功で、新たに30のブティックが買い付けたそうだ。

2021年春夏コレクションは人間の身体と服の関係にフォーカスし、Ready to WearならぬReady to “Care”がテーマ。イノベーションをブランドのDNAとするコペルニらしく、コレクションのひとつの軸としてオリジナル素材「C+」を発表した。通気性のあるアンチUVのストレッチ素材で、スポーツウエアに使われる軽いジャージーに、彼らは抗菌効果をプラスしたのだ。

「コペルニ・プリュスという意味のある命名です。この素材開発のためにマスクに使われる素材とか多くのリサーチをし、スイスのテクノロジーを用いてアンチバクテリアの効果を布にもたらしました。女性たちの身体を包んで守る素材。伸縮性があるので身体の動きも自由です。この素材にはとても満足していて、次のシーズンでも使います」(セバスチャン)

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C+の素材を用いた現代的でシャープなシルエット。キャスティングにも恵まれ、ファーストルック(左)にはトップモデルのエディ・キャンベルが。photos : Luca Tombolini

ひとつ目の軸が身体のプロテクションなら、2つ目はフルー・メカニックと呼ぶもので、動く身体へのオマージュである。コラージュを幾何学模様に施して厚みある部分を作ることで、人体の関節のような動きのある布を生み出した。着る人の動きに合わせて服も動く。ちょっと折り紙を思わせる素材だ。どことなく和風なのは、彼らが心休ませる面を求めたからだという。テーラリングに強く構築的な服が多いコペル二。これまでソフトな素材を用いることがなかったが、今回はボリュームと動きのある服がコレクションに欲しいと思ったことから、彼らなりの“フルー(ソフト)”にこれで挑戦することになったのだ。

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コペルニ流のふんわりシルエットを作りあげる折り紙のようなオリジナル素材。photos : Luca Tombolini

先の2つが素材なら、人間の身体と服をめぐる3つ目の軸のExtension(伸張)はビジュアル面について。身体が伸び、服もそれに合わせて伸びて……その伸張の瞬間を凝結、というイメージでのデザインだ。彼らが得意とするアシメトリーは、人間の身体は常に動いていることを意識させるこのテーマでおおいに生かされている。

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動きを感じさせるデザインを好むのは、どのシーズンにも共通している。photos : Luca Tombolini

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シックでモダンでクラシックなブランド。

伝統的なショー形式をとった以上はとことん、と、最後に登場したのはマリエを思わせる全身真っ白のコーディネート。極めてシンプルながら、個性とモダニティを感じさせるルックだった。このコレクションに限らず、彼らがデザインする服には過剰な装飾がない。

「クリエイティブとウエアラブルの中間を常に見つけるようにしています。あまり多くのディテールがあると着ている女性が仮装しているように見えてしまう。それは好きじゃないんです」

ふたりの口から出るコペルニを形容する言葉は、シック、若い、クール、そしてクラシックだ。またイノベーションを心がけるといっても、Tシャツがスクリーンになるといったようなアイデア商品はコペルニでは考えられないという。

周囲の女友達、若い女優やアーティストたちからクリエイションのインスピレーションを得ることがあるにしても、セバスチャンはコペルニ・ガールズをカテゴライズしたくないという。

「友達だけでなく母親にも着てほしい……。服に着られることなく、シンプルに装いたいと願いつつ、それでもカットとかちょっとしたディテールか何かでほかの女性とは違ったものを着たいという女性たちに向けています」

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2013年のデビューコレクションからコペルニのふたりは一貫してひと味違うシンプルな服を提案し続けている。右はショーの最後に登場したとてもピュアな“マリエ”。スカートはオリジナルの3D素材だ。photos : Luca Tombolini

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ブランドの背景。

若手ブランドの中でも成熟度が高いコペルニ。アルノーは子ども時代からあらゆるファッション雑誌に目を通すモード・アディクト、セバスチャンはモードよりクリエイションやアートに興味を持っていた。そのふたりが知り合ったのはパリのMod’Art International校で、マルセイユ出身のアルノーはマネージメント部門専攻、モンペリエ近郊出身のセバスチャンはクリエイション部門専攻。卒業後、表現したいことを多く持つセバスチャンはほかのブランドを経て、といった時間のかかる定番コースを選ばず、コペルニをアルノーと設立したのだ。アルノーはシャネル、バレンシアガなどといったメゾンでの経験があり、ほかのメゾンとの仕事と並行して夜にコペル二の仕事をして、というスタートだった。

「学校を出て間もなくのことだったので、ブランドはとても小規模でした。クレージュの後、再始動の際には出資者もいて組織もしっかりし……。僕たちも経験によって成長してのブランド再開でした」と振り返るふたりだ。

自己のブランドを離れていた3年の間に飛躍的な進歩を遂げていたデジタル面を、2019年の再始動以降、“時代に同化する方法”としてブランドにしっかりと取り込んでいる。象徴的な出来事として、2020年春夏コレクションをシャンゼリゼ大通りのアップルストアで開催。Keynoteで製作した5分間のプレゼンテーションビデオを流し、最後にモデル5名が登場するというものだった。2020〜21年秋冬コレクションは、パリ13区にスタートアップたちのインキュベーションの場として生まれたStation Fをショー会場に選んだ。シーズンの合間には、インスタグラムでインタラクティブなゲームを展開している。

「常にシックであるようにと、ソーシャルメディアのビジュアルにもとても気を使っていますよ。服と同じくらい大切なので、しっかりコントロールしています。メッセージを語り、ストーリーテリングがあって……と、これはクレージュでもしていましたけど。いまの時代、服そのものだけでは不十分。欲しいという気持ちをかきたてる服の周辺要素が半分を占めています。インスタグラムは無料の広告もでき、若いブランドには大切な存在ですね」(アルノー)

「僕たちがブランドを最初に始めた時は、インスタグラムはいまほどパワフルじゃなかった。いまじゃブランドのショーウィンドウです。以前はブティックに行かないと知ることのできなかった消費者と、直接やりとりができるなんて……信じられない。こうしてコミュニティと繋がり、そしてフィジカルなショーを行うことによって、より大勢に対して語りかけることができるんです」(セバスチャン)

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ショーのフィナーレに登場したアルノー(左)とセバスチャン。ふたりは13年前に知り合い、11年間公私をともにしている。photo : Luca Tombolini

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コペルニのエトセトラ。

街は異なれど、ともに南仏出身。街は異なれど、それぞれ早い時期からパリで暮らすことを決めていたという。ふたりとも世界でいちばんお気に入りの街はパリ! 建築物はとにかく美しく、都会だけど村のような面もあるミックスがいい、と。時間があれば、Sans Titreなどマレ地区の小さなギャラリーをめぐる。作品のみならず場所が持つ歴史も含めて何もかもが興味深いからと。いま、心待ちにしているのは安藤忠雄が手がけるピノー財団の美術館の完成だ。

海外については世界中のクリエイターたちと同じく、彼らも日本が大好き。これまで何度か来日し、たとえば渋谷のなるきよのカウンターに座ってシェフが料理するのを眺めながら食事をするのが楽しいし、代官山の蔦屋書店も本のセレクションだけでなく店そのものが気に入っていると語る。これまでは東京だけだったので、次はぜひ直島に行きたいとふたり揃って目を輝かせる。

Coperni
https://coperniparis.com
Instagram:@coperni

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réalisation : MARIKO OMURA

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