マリー=アントワネット気分で、ヴェルサイユ宮殿を120%満喫する方法は?
Paris 2025.06.12
Versailles
太陽王の栄光と宮廷文化の華やぎを訪ねて。
ゴールドに輝く屋根の装飾が美しいヴェルサイユ宮殿の正面玄関。
ルイ14世が宮廷を移した1682年から、1789年のフランス革命でルイ16世が追われるまで。100年余りにわたって王家が居城としたヴェルサイユは、パリから電車で約30分のところにある。
街の始まりは、父とともに訪れる狩り場だったこの地を愛したルイ13世が、小さな田舎家を建てたこと。続いて太陽王と呼ばれたルイ14世が、広大な庭園を持つ城を建設した。鏡の間が完成し、造園家アンドレ・ル・ノートルが運河や噴水のある大庭園を手がけ、宮殿の姿が整ったのはこの時代だ。15世はポンパドゥール夫人のためにプチ・トリアノンを建設し、この場所で生涯を閉じる。ヴェルサイユで生まれたルイ16世とオーストリアから嫁いだマリー=アントワネットにとって、華やかな宮廷の暮らしからパリに幽閉されるまでの激動の人生の舞台になったのがこの宮殿であることは語るまでもない。
マリー=アントワネットが装飾した私的空間。花柄の壁紙が彼女の趣味を物語る。
休憩用ソファのある、メリディエンヌのキャビネ。
革命による略奪や損壊を逃れたヴェルサイユ宮殿は、現在にいたるまで国際的な調印や国賓を迎える舞台であり、フランスの威光と文化を象徴する場所だ。年間700万人以上が訪れる観光名所であるだけではない。住民が「シャトーのイベントがない夜はめったにない」と言うくらい、オペラ座や乗馬アカデミー、コンサートや噴水のスペクタクルなど、文化イベントの発信地として愛されている。
王の城とともに生まれ、都市計画のもとで作られた街は美しい。城の正面玄関に向かう並木道に沿って17世紀のマンサード屋根の建物や瀟洒な邸宅が並ぶ。この通りの北側に位置するノートルダム地区には市場があり、その裏手にはアンティーク商が軒を連ねている。通りの南側には、宮殿の食材を担っていた菜園やサンルイ大聖堂、革命時に「テニスコートの誓い」の舞台となったジュ・ドゥ・ポームのある旧市街がある。そこかしこにブルボン王朝の足跡が残り、城下町の気品漂うヴェルサイユは、パリ郊外の小さな町にとどまらない別格の存在。1泊でも滞在して、フランスの歴史を優雅な気分で体感したい。
ヴェルサイユのシンボル、鏡の間。数多くのレセプションや舞踏会が催された。
湖を囲むように茅葺きの家を点在させたアモー・ドゥ・ラ・レーヌは田舎家のイメージそのもの。
プチ・トリアノンとその庭。

マリー=アントワネットの足跡を訪ねて
ヴェルサイユにはマリー=アントワネットゆかりの場所がいくつも残る。宮殿内ではまず王妃の大アパルトマンへ。歴代の王妃が眠り、王の19人の子どもたちが生まれた寝室の内装はマリー=アントワネットの時代の姿だ。王妃たちの私的な空間は、2023年にマリー=アントワネットが自分好みに装飾した当時の姿に修復され、ガイド付きで見学が可能だ(「Marie-Antoinette en Privé」別途要予約、10ユーロ)。宮殿を出たら、庭園の北のドメーヌ・ドゥ・トリアノンへ。ルイ16世から贈られたプチ・トリアノンでの滞在は彼女のお気に入りで、造園にも心を砕いたという。トリアノンの庭を愛した彼女が新しい湖を造り、そのほとりに茅葺き屋根の小さな村アモーを建設したのは革命の3年前。ここで田園風の暮らしを楽しんだことはよく知られている。
ヴェルサイユ宮殿
place d'Armes 78000 Versailles
01-30-83-78-0
RER)C線 VERSAILLES CHÂTEAU RIVE GAUCHE
城:開)9:00~17:00最終入場(1月~3月、11月、12月)、9:00~18:00最終入場(4月~10月)
トリアノン:開)12:00~17:00最終入場(1月~3月、11月、12月)、12:00~18:00最終入場(4月~10月)
庭園:開)8:00~17:30最終入場(1~3月、5/24、7/14、8/15、10/26~31、11月、12月、Grandes Eaux Nocturnes開催日)、7:00~19:00最終入場(4月~10月)
料)パスポート(城、トリアノン、庭園)一般24ユーロ(1月~3月、11月、12月)、32ユーロ(4月~10月)
https://www.chateauversailles.fr/
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Boutique Cour de Marbre
ブティック・クール・ドゥ・マルブル〈ヴェルサイユ〉
キッズ向けのお土産も充実。©François Guillemin
マリー=アントワネット好みのお土産なら。
宮殿内のミュージアムショップは、フランスのサヴォワールフェールを重視したセレクションが好評。館内に複数ある店舗の中でも、王妃の階段の脇のこの店がおすすめだ。アントワネット・ポワソンが手がけたインテリアと、18世紀の宮廷を彷彿とさせる雑貨や食材のラインナップは格別。注目は、プチ・トリアノンにインスパイアされたコーナー。王妃が愛したバラにまつわるアクセサリーやフレグランスをはじめ、城や庭園をモチーフにしたベルナルドの陶器やマラン・モンタギュのゴブレットなどが揃う。
ジアンのエクスクルーシブなコレクション。年齢の違う王妃の肖像が描かれたデザート皿はアシッドカラーの4枚セットで88ユーロ。©François Guillemin
ブティック・クール・ドゥ・マルブル〈ヴェルサイユ〉
place d'Armes 78000 Versailles
RER)C線 VERSAILLES CHÂTEAU RIVE GAUCHE
営)10:00~16:45(1月~3月、11月、12月)、10:00~17:45(4月~10月)
https://boutique-chateauversailles.fr/
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La Petite Venise
ラ・プティット・ヴニーズ〈ヴェルサイユ〉
木の梁の天井があり、落ち着いた雰囲気の店内。©Nina Coriton
運河のほとりで味わう、本格イタリアン。
庭園のグラン・カナルとアポロンの噴水の間に位置するイタリアンレストラン。なぜイタリアン?の理由は、この場所がヴェネツィアからルイ14世に贈られたゴンドラが保管されていた歴史的建造物だから。ランチタイムはもちろん、午後はスイーツもあるティータイムを提案しているから、トリアノンに向かう途中に立ち寄ってみては。
前菜は11ユーロから、パスタは15~20ユーロ、魚や肉のメインディッシュは25ユーロが目安。©Nina Coriton
ラ・プティット・ヴニーズ〈ヴェルサイユ〉
place d'Armes 78000 Versailles
01-39-53-25-69
RER)C線 VERSAILLES CHÂTEAU RIVE GAUCHE
営)11:45~16:30L.O.
休)月、1/1、5/1、12/25 ※4/21、6/9、7/14を除く
https://www.lapetitevenise.com/
★Google Map
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Le Potager du Roi
ル・ポタジェ・デュ・ロワ〈ヴェルサイユ〉
果樹が整然と並ぶ王の菜園は、ユネスコの世界文化遺産にも登録されている。©Le Potager du Roi
宮廷の食材を栽培し、王が散策した菜園。
王の命令で宮廷の食を支えるために作られた菜園では、いまも4000本の果樹を筆頭に食用の植物が栽培されている。平らに整枝された洋梨やリンゴの木が並び、四角く区分けされた畑が連なる様子はいかにもフランスらしい風景。宮殿側にはルイ14世の紋章を掲げた金箔飾りの鉄門があり、王が散策に訪れていたことを偲ばせる。現在は市民の憩いの場となり、菜園で収穫された野菜やジュース、コンフィチュール、ハチミツの販売も人気だ。
菜園で収穫されたハチミツ7.90ユーロ(左)と洋ナシのコンフィチュール6.90ユーロ(右)©Le Potager du Roi
ル・ポタジェ・デュ・ロワ〈ヴェルサイユ〉
10, rue du Maréchal Joffre 78000 Versailles
01-39-24-63-24
RER)C線 VERSAILLES CHÂTEAU RIVE GAUCHE
開)10:00~17:15最終入場 ※10:00~18:30最終入場(5/6~7/13)、10:00~12:30最終入場(11月、12月の土曜)
休)1月~3月:土、日、月、1/1、4月~10月:月、5/1、11月、12月:日、月、11/1、11/11、12/25
料)一般8ユーロ(4月~10月)、5ユーロ(1月~3月、5/6~7/13、11月、12月)
@lepotagerduroi
★Google Map
*「フィガロジャポン」2025年5月号より抜粋
●1ユーロ=約164円(2025年6月現在)
●日本から電話をかける場合、フランスの国番号33の後、市外局番の最初の0を取ります。フランス国内では掲載表記どおりにかけてください。
●各紹介アドレスのデータ部分のRERはイル=ド=フランス地域圏急行鉄道網の駅を、TERは国鉄の駅を示しています。
●掲載店の営業時間、定休日、商品・料理・サービスの価格、掲載施設の開館時間やイベントの開催時期などは、取材時から変更になる可能性もあります。ご了承ください。
photography: Thomas Garnier, Taisuke Yoshida editing: Masae Takata (Paris Office)