グラン・パレに出現したエヴァ・ジョスパンの洞窟、入ったら出られない。

Paris 2026.01.15

グラン・パレのセーヌ河に面した会場で、3月15日まで『Eva Jospin, Grottesco』展が開催されている。段ボール素材の彫刻で知られる女性アーチストEva Jospin(エヴァ・ジョスパン)は何年か前にシャンパンのルイナールとコラボレーションし、またディオールのショーの会場装飾を手がけたこともあるので日本でも知られた名前だろう。

260113-grand-palais-01.png

左:展覧会へはClarence Dillonエントランスから。ウィンストン・チャーチル大通り1番地で、セーヌ河に面した位置だ。 右:エヴァ・ジョスパン。photography: 左 Mariko Omura、右 ©Laure Vasconi


この『グロテスコ』展では、このために制作された作品も含め2016年からの21点が展示されている。ある伝説に由来するという展覧会のタイトル『グロテスコ』。それは、ある時洞窟にうっかりと落ちてしまったローマの若者が、そこで地下深くに壮大なフレスコ画を見つけたという伝説だ。その後、その遺跡が何世紀もの間埋もれていた暴君として知られるローマ皇帝ネロの黄金の宮殿(Domus Aurea)だということが確認された。洞窟のように見えた宮殿から、"グロテスク様式"が生まれたのである。植物、建築、幻想が豊かな想像力の中で絡み合うスタイルだ。

260113-grand-palais-02.jpg

『Diorama』(2025年)photography: Mariko Omura

260113-grand-palais-11.jpg

展示されているスケール様々な作品。ひとつずつ360度の角度で鑑賞したい。photography: Mariko Omura

南向きの会場には晴れた日の午後は太陽が差し込む。この時間帯を狙って行けるといいだろう。縦長のスペースで展開されるひとつの世界が光と影で現実味を帯び、まるで伝説のローマの若者となったような気分で展示作品をめぐる散策ができる。

260113-grand-palais-04.png

光が当たると 作品の立体感が浮き彫りされ、また床に影を作って、とまるで廃墟を見て歩いているような気分に。photography: Mariko Omura

洞窟のモチーフはジョスパンが10年以上探求しているもので、いまや彼女の"森"とペアをなしている。人や動物の気配のない静寂の中で自然が息づいているような会場内。展示されている作品にはスケールの遊びがある。ガリバーのように段ボールの彫刻を見下ろしているうち、目の前に高い記念碑が姿を現す。さらに会場の中央に置かれたDuomo(ドゥオーモ)はサイズが730×610×600㎝あり、中に招き入れられるのだ。これはローマの黄金のドームとパンテオンが参照となった、天窓を備えた円形の建築物である。この中で、16世紀のイタリアのマニエリスム様式の洞窟を彷彿させる人工的な自然環境に浸れることになる。用いられている素材は木、段ボール、石、貝殻、着色紙などで、それらが作り上げる奇妙な世界。頭上の丸い窓を見上げると、さて自分は地下にいるのか水中にいるのか......不思議な感覚にとらわれてしまう。

260113-grand-palais-05.png

260113-grand-palais-06.png

『Duomo』(2025年)。ディテールに込められた、時代の経過を感じさせる自然のパワー。天窓を見上げるのを忘れないように。photography: Mariko Omura

---fadeinpager---

会場奥を占めているのは半円を描く森。この『パノラマ』(480×900×450㎝)は2016年にルーヴル美術館のクール・カレのために制作されたのだが、半円形の形式での展示は今回が初めてだそうだ。この森まで来たら、それまでと別のコースで出口へ向かおう。異なる旅ができる。展示物は視点を変えるだけで、それまでと違う景色を見せるのだ。両サイドの壁の展示物は距離を置いて見て、次には必ず近寄って繊細なディテールにも目を向けたい。細部が豊かなドローイングはまるで古い版画のよう。額の中の森、森、泉では刺繍が施され、『Grottesco』 3点の中にはシルクの糸が素材に用いられているものもある。ローマのコロンナ宮殿の刺繍室を訪問したことから刺繍への情熱を掻き立てられたというジョスパン。2023年夏のヴェルサイユ宮殿オランジュリーでは刺繍が描く風景画の展示だったが、『グロテスコ』では段ボールの浅浮き彫りに刺繍が施されているのが新しい。繊細で詩情あふれるディテールを眺めていると、その景色の中に連れ込まれるよう。時間的余裕をもって訪れたい展覧会だ。

260113-grand-palais-07.jpg

『Panorama(partie 1)』photography: Mariko Omura

260113-grand-palais-08.jpg

『Grottesco I』『Grottesco II』『Grottesco III』(2025年)。photography: Mariko Omura

260113-grand-palais-09.png

壁に展示されている額の中をじっくり覗き込むと、静けさに満ちた自然の中に誘われる。photography: Mariko Omura

これと同時に反対側の会場で開催されているのが『Claire Tabouret, D'un seul souffle』展だ。2024年12月に発表されたように、ノートルダム大聖堂の礼拝堂のための新しいステンドグラスのデザインに選ばれたのがクレール・タブレの6点である。火災で被害を受けた大聖堂の復元にいまの時代を象徴する要素をもたらしたい、という大統領の意向でコンテストが主催されたのだ。ステンドグラスの制作は1640年創立のシモン・マルク工房が担当。年内に設置される予定だという。この展覧会では、その6つのステンドグラスの模型やデッサンなどを展示している。

260113-grand-palais-10.png

『Claire Tabouret, D'un seul souffle』展より。photography: Mariko Omura

『Eva Jospin、 Grottesco』展
開催中~3月15日
入り口:Clarence Dillon(クラレンス・ディロン)
Le Grand Palais
1, Av. Winston Churchill
75008 Paris
開)10:00~19:30(火~木、土、日)、10:00~22:00(金)
休)月
料)15ユーロ(『Claire Tabouret, D'un seul souffle』展と共通)
https://www.grandpalais.fr/fr
@le_grand_palais

Google Map

editing: Mariko Omura

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest
石井ゆかりの星占い年運2026
35th特設サイト
パリシティガイド
フィガロワインクラブ
Business with Attitude
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories

Magazine

FIGARO Japon

About Us

  • Twitter
  • instagram
  • facebook
  • LINE
  • Youtube
  • Pinterest
  • madameFIGARO
  • Newsweek
  • Pen
  • CONTENT STUDIO
  • 書籍
  • 大人の名古屋
  • CE MEDIA HOUSE

掲載商品の価格は、標準税率10%もしくは軽減税率8%の消費税を含んだ総額です。

COPYRIGHT SOCIETE DU FIGARO COPYRIGHT CE Media House Inc., Ltd. NO REPRODUCTION OR REPUBLICATION WITHOUT WRITTEN PERMISSION.