
空前絶後なダ・ヴィンチ展を振り返る☆
昨年10月下旬から今年2月下旬までパリの“Musée du Louvre”(ルーヴル美術館)で開催された“Léonard de Vinci”(レオナルド・ダ・ヴィンチ展)へ1月に行くことができました。
大きなニュースにもなり(その開催準備期間は10年!)NHKの特番を含めてたくさんのメディアで紹介されたので今更感もありますが、私としてもこれは本当に行ってよかった、観れてよかった!と強く思う素晴らしい展覧会でした。
鑑賞後「これ買った!」と笑顔の夫。
K「え。えーーだよ。それ何キロあるの?!」
夫「この図録はすごいよ!!記念だよ!」
と言うわけで、日本にも持ち帰りました。
そんなずっしり重いカタログとスマホで撮った画像をもとに展覧会を振り返ります。
本展はレオナルド・ダ・ヴィンチ没後500年を記念する大規模回顧展で、ルーヴル美術館所蔵作品をはじめ、絵画、デッサン、彫刻、手稿など約180点が集められましたが、まず驚いたのは素描の数多さ。
大回顧展と聞いたらカラフルな大作がゾロゾロと並ぶ様子をイメージしたので、予想外の光景に驚きました。
なので、一瞬なんだか地味…と思ってしまったけれど、会場を出る頃にはダ・ヴィンチについて知ってるつもりでも実際は知らないに等しかった自分を思い知り、本展について最初に地味だとか思った浅はかさが恥ずかしくなりました。。
イタリアに生まれ、フランスで没したルネサンスの巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci←イタリア語表記)。
その名は広く知られるものの、実はかなり謎の多い人物。
(ヴェネツィアで鑑賞したダ・ヴィンチ展ブログ→ https://madamefigaro.jp/paris/blog/keico/leonardo-da-vinci-luomo-universale.html)
そしてこの時代としては長生きだし、相当な数の絵画作品を残したイメージも抱きがちだけど、ダ・ヴィンチ作品と確定されているものは専門家の間でも意見が分かれ、概ね15点前後だそう(最大で21点)。
そのうちの10点が本展に集結したのだから前代未聞、空前絶後な展覧会と呼ばれるのも至極納得。
(完全予約制で期間中は全ての時間帯が予約でいっぱいになっていた人気展覧会でしたが、予約時間が開館直後だったこともあり会場は比較的空いてじっくりと鑑賞できました)
1452年に生まれ、1519年に67歳で没したレオナルド・ダ・ヴィンチ。
彼の遺体の眠るアンボワーズ城、ロワール地方に去年YMご夫妻と旅したこともあり、当時の思い出と記憶も重ねながら鑑賞スタート。
(関連ブログ→ https://madamefigaro.jp/paris/blog/keico/post-1030.html )
会場前で手にしたのは、本展の解説冊子(無料)。
せっかくなのでフランス語版(ケーコ勉強用)と英語版(夫用)を手にしたのですが、分厚く、抜粋ではなく展示全作品が丁寧に解説。
ダ・ヴィンチ=画家のイメージが強いですが、彼が取り組んだ分野は実に幅広く、解剖学、生理学、天文学、気象学、地質学、地理学、物理学、光学、力学、土木工学、音楽、建築、数学、幾何学等々様々で、まさに天才。
それぞれの分野で研究の際、数々のドローイングを描き、膨大な手稿を書き残したこと(現存する手稿は約4,000枚だそう)を本展を通じて知りました。
とにかく研究熱心、マニアック、細部へのこだわりも半端ない…という印象でしたが、それがまたよくわかるように、本展では多くの絵画作品の赤外線写真(réflectographie infrarouge)を展示。
目にしている絵の下に隠れた、表面とは全く違う人の顔やポーズ跡、何度も何度も繰り返し極めて薄い絵の具の着色を繰り返したこと、構図や描き方の試行錯誤の様子が浮かび上がるようで、とても興味深いものでした。
個人的には完成した絵そのものよりも、その絵が完成するまでの過程も感じるこの赤外線写真の方が興味津々に。
また、ダ・ヴィンチは絵を描く際に指をよく使ったそうで、赤外線写真に指紋の跡が見えれば、それはとても有力なダ・ヴィンチ作品の証明証拠。
では本展の目玉的絵画作品を列挙☆
『ブノワの聖母』
マリアが手にしている花は十字架の形で、後のイエスの運命を予告しているのだそう。
『荒野の聖ヒエロニムス』
これは記憶に新しい、昨年秋にNYの“The Metropolitan Museum of Art” (メトロポリタン美術館)で特別展示されていた作品。
(関連ブログ→ https://madamefigaro.jp/paris/blog/keico/the-met-1.html )
次回は是非バチカン美術館で再会したい…!
『岩窟の聖母』
有名な話ですが、ダ・ヴィンチが描いた「岩窟の聖母」は2作品あり、一つはルーヴル美術館(常設展)、もう一つはロンドンのナショナル・ギャラリー所蔵。
本展にはナショナルギャラリーのもの(右)はなかったのですが、同じ構図でも人物の表情がだいぶ違う印象です。
『音楽家の肖像』
『ミラノの貴婦人の肖像(ベル・フォロニエール)』
『糸巻き(糸車)聖母』
後日NHKのダ・ヴィンチ特番を見て興味が湧いた「糸巻きの聖母」は2作品並べての展示。
その番組の中では、こちらのスコットランドのバクルー公爵家が所蔵する通称「バクルーの聖母」は、ダ・ヴィンチのスケッチに基づいて弟子たちが着彩したもので、完全なるダ・ヴィンチ作品と言い難いということでした。
もう一方のプライベートコレクションの通称「ランズダウンの聖母」は研究調査の結果、おそらくダ・ヴィンチの真作と。
個人的には「ランズダウンの聖母」の方が背景も含めて好き。
『サルバトール・ムンディ』
サルバトール・ムンディとはラテン語で「救世主」。イエス・キリストの肖像画です。
目が合ったらそらせなくて、ちょっとドキドキしました…。
こちらもダ・ヴィンチの原画を元に弟子たちが着色したのでは?と言われる作品。
サルバトール・ムンディと言えば、数年前にもう一枚競売大手Christie'sでダ・ヴィンチ自身の作品として競売に出され、約500億円で落札されたことがニュースになりました。公の場に展示されることなく、所有者が誰なのか、どこにあるのかも明らにされず臆測を呼んでいるので、いつかその『サルバトール・ムンディ』も観てみたいところ。
『聖アンナと聖母子』
聖母マリアの母の聖アンナの膝にマリアが座って幼児イエスに手を伸ばすという、構図的にはちょっと不思議に見える絵です。
『洗礼者聖ヨハネ』
ダ・ヴィンチがイタリアからフランスに渡る際に持参した3枚が「モナ・リザ」「聖アンナと聖母子」と、この『洗礼者ヨハネ』。
その3枚は晩年最後まで筆を入れ続けたと言われています。
イエスに洗礼を授けた聖人ヨハネ。
暗がりを背景に魅惑的な微笑みにちょっとセクシーな魅力を感じます。
本展で特に印象的に残ったもの♡
まずは、昔日本のTV特番で見て、その後フィレンツェのヴェッキオ宮殿を再訪してからずっと気になっているのが、彼が描いたと言われる『アンギアーリの戦い』。
(関連ブログ→ https://madamefigaro.jp/paris/blog/keico/51907145.html )
(Wikipediaよりヴェッキオ宮殿画像↓ フィレンツェ が懐かし〜)
ルーベンス(Peter Paul Rubens)による小さな模写が本展には展示されていました。
(さらっと書かれて、さらっと展示してあったけれど、巨匠ルーベンスの模写ってのもスゴイと思う!)
ヴェッキオ宮殿の「五百人広間」を飾るはずだった絵の一部と思うと、
これがガーンと大きく、あの大広間の壁を飾っていたら今頃はどうだったのか?と妄想が膨らみました。
(Wikipediaより 五百人広間画像↓ )
しかも向かい合った壁はミケランジェロ担当で二人の制作対決だったそう。
しかしながら、ダ・ヴィンチ作品もミケランジェロ作品もどちらも未完のまま放置され、なんと別の画家がその上に壁画を描いてしまった。。
未完の理由は諸説あるようで、一説にはダ・ヴィンチはミケランジェロには敵わないと思って放り投げた説も。
いつか見たい、壁の下に隠れたダ・ヴィンチによる本物『アンギアーリの戦い』です☆
それから今回実物を観てもっともうっとりしたのは、通称『ほつれ髪の女性』。
画像で見ると印象がちょっと違う感じですが、本物はなんとも言えぬオーラがありました。
それから実物原画がなく、ちょっと残念だったのが『白貂を抱く貴婦人』。
ダヴィンチが描いた女性像の中では一番好きな人です。
赤外線画像をじっくり鑑賞。
最後に。
本展ではルーヴル所蔵のあの『モナ・リザ』だけは特別展会場には移されず、赤外線画像のみ。
絵の保全やセキュリティーの問題もあり現在の展示場所から動かせないとか。。
なので新コロナウイルスが収束したら、改めて再会したいLa Gioconda(ラ・ジョコンダ)です!
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