編集者たちが毎月逸品を語る連載。今月は、カルティエの「パンテール ドゥ カルティエ」バッグについて。
色はレッドのほか、ブラックやペトロールブルー、ネイビーブルー、クリームホワイト、マスティック、ペールイエローなど全7色がラインナップ。ひとまわり小さなミニサイズもある。「パンテール ドゥ カルティエ」チェーンバッグ スモール(H16×W23.5×D10.5cm)¥429,000/カルティエ(カルティエ カスタマー サービスセンター)© Cartier
毎日のスタイリングにまつわるアイテムのうち、ここ最近で大幅に選ぶ基準が変わったと感じているのがバッグ。以前は紙資料を持ち歩くことも多かったためキャパシティや機能性ありきだったけれど、いまではスマホにかなり情報が格納できるようになったおかげでめっきり持ち歩く量が減り、純粋にその時の気分やデザイン重視で選ぶ余裕が出てきた気がする。
そんな中、俄然気になり始めたのがオーセンティックなバッグ。上質な素材やクラシカルなフォルムに惹かれるのはもちろんのこと、背景となるストーリーやクラフトマンシップといった要素が加わると、その引力は掛け算で増すから怖い(笑)。「パンテール ドゥ カルティエ」バッグは、まさにそんな自分に照準をピタリと合わせたかのようにハートを狙撃された逸品。
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パンテールと言えば誰もが知るカルティエのアイコンであり、ジュエリーやウォッチでの不動の人気ぶりはわざわざここで述べるべくもないけれど、レザーグッズにもそのエッセンスは見事に息づいている。たとえば、フラップの中央から睥睨しているのは、お約束のパンテールヘッド。アイテムによってさまざまに表現されるこのモチーフが、このバッグでは11の平面でグラフィカルに構成され、それぞれの面にレザーのインサートが施されているのがポイントだ。バッグ本体に使われているグレインドレザーのテクスチャーも、パンテールだからこの質感なのね、と妙に納得してしまう独特のしなやかさや表面効果が施されていて、ジュエリーから着想を得たというチェーンストラップにしっくりとマッチする。
最高級のカーフレザーにエンボスパターンをプレスした後、型紙に合わせて裁断。photography: Jonas Marquet © Cartier
ジュエリー職人が手がけたゴールド仕上げのクラスプに、手作業でレザーのインサートを貼り付ける。photography: Jonas Marquet © Cartier
熟練の職人が、ステッチが表に出ない「内縫い」の技法で縫製。photography: Jonas Marquet © Cartier
細心の注意を払い、パーツのひとつひとつを確認して仕上げる。photography: Jonas Marquet © Cartier
極めてシンプルでありながら、携えることで自分にもパンテールの持つ気品や強さが備わるような気にさせられる、そんな暗示効果もたまらない。(編集MA)
*「フィガロジャポン」2023年3月号より抜粋
editing: Mami Aiko