アカデミー賞2023、ぐっときた10トピック。

今回、エンタメ性の高い映画や俳優のノミネーツが話題で、いつもよりちょっぴり気分の異なる第95回、な気がしていました。そこで、授賞式にて心に(個人的に)響いたトピックを10ご紹介。

キー・ホイ・クァンが『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で助演男優賞受賞!

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©Getty Images Kevin Winter

なんと、あの『グーニーズ』(1985年)の『インディ・ジョーンス/魔宮の伝説』(84年)の少年です! いまや51歳になり、日本で公開される作品などで見かけることはほとんどなかったキー・ホイが、エブエブで助演男優賞を受賞して、大舞台で大泣きの受賞の言葉を述べました。
「ボートから私の旅は始まりました。私は難民キャンプにいたんです。こんなことが起きるのはまるで映画の中でしかなさそうだけれど、これは自分の人生です。これこそ、アメリカンドリームです。夢は信じなければ実現できない。みんな夢を諦めないで」。スピーチ自体はもっと長いですが、とても感動的でした。ベトナム系移民の彼が叶えた夢舞台にこちらもほろり。そして、いんまだに若々しく、昔の面影がちゃあんと残っているところも懐かしかった~~!

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ジェイミー・リー・カーティスの「STOP!」

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©Getty Images Kevin Winter

こちらも『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』からです。助演女優賞を受賞しました。登壇時の紹介で、「映画デビューは『ハロウィーン』(1978年)」。ホラー映画の女王……女王といえば聞こえはいいけれど、母親であるジャネット・リーの美貌を受け継いでいない、とさんざん言われてきた俳優です……。アーノルド・シュワルツネッガーと共演した94年の『トゥルー・ライズ』の演技は最高で映画も大好きでしたが。それが、ここで、ダニエルズ監督デュオの力で絶対的な評価を得ました。そして、登壇してみなが拍手を捧げている時に「STOP!」と最初の言葉。最高によかった! 会場にいる人たちはみなすぐに黙りました。「ここに私はひとりで立っているようですが、そうではない。多くの人と一緒です。この作品をドリームチームとともに作りました」

【関連記事】「もしオスカーを本気で狙うなら、こういう脚本は書かない(笑)」ダニエル・クワン & ダニエル・シャイナートが語る。

 

ドニー・イエンの登場。

賞のプレゼンターでもなく、なんともないところで、紹介者としてドニー・イエンが登壇しました。中国武術愛が強い私としてはとてもうれしかった。かなり私的な悦びです。何より、こうして中国武術のアクション指導などに対して、ハリウッドやエンタメ界からの敬意が垣間見られた気がしました。

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ロバが可愛かった。

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©Getty Images Kevin Winter

受賞しなかったので、まったく話題にならないと思いますが、ロバが舞台に上がりました。これは、主演男優賞(コリン・ファレル)、助演男優賞(ブレンダン・グリーソン)、作品賞、監督賞(マーティン・マクドナー)、脚本賞、編集賞、作曲賞などにノミネートされ、秀作なのにまったく受賞しなかった『イニシェリン島の精霊』に、ロバが大事な役どころとして登場するからです。そして、国際長編映画賞にノミネートされていたポーランド映画『EO』は、同賞ノミネート作『CLOSE/クロース』と並んで、カンヌ国際映画祭を訪れたジャーナリストたちがすごく評価していた作品なのですが、その『EO』の中にもロバが登場します。ブレッソンの名作『バルタザールどこへ行く』に、現代の作り手がオマージュを捧げているのです。※バルタザールはロバの名前です。

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『RRR』のパフォーマンスの激しさから目が離せない。

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©Getty Images Kevin Winter

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見事に歌曲賞を受賞した『RRR』の「Naatu Naatu」。こちらのパフォーマンスがすごかったですね~。サスペンダーを巧みに使った振り付けが魅せてました。映画内よりも、授賞式の舞台のほうがサスペンダー使いがより生きていたように思えます。世界各国の映画ウエブマガジンや映画雑誌の批評家たちの22年ベスト投票にけっこう『RRR』が登場することが多く、それもすごいな、と思っていましたが。ゴールデングローブに続き、アカデミー賞でも快挙。いま音楽そのものではなく、ダンスパフォーマンスがプラスされてこそ人の心が動く、というエンタメ評価ポイントが世界的にある気がします。案外そのムーブメントを引っ張っているのはKpopかもしれない、と思ったり。
歌曲賞受賞時のスピーチも気が利いていて、「子どもの頃、カーペンターズをよく聞いていました。RRRはつまり歌曲賞受賞の必要があったんです、『トップ・オブ・ザ・ワールド』(カーペンターズの名曲)になるために」と、歌詞をRRR的に変えてアレンジした「トップ・オブ・ザ・ワールド」を、登壇したMMキーラヴァーニとチャンドラボースが舞台上で歌いながらのスピーチでした。

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リアーナのディーバぶりが素敵。

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©Getty Images Kevin Winter

2020年に亡くなったチャドウィック・ボーズマンに捧げるという気持ちを込めて。『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』の「Lift Me Up」という曲がノミネートされていました。リアーナにとって6年ぶりの新曲、そしてアカデミー賞は初舞台だそう。ダイヤモンドを大胆につけ、衣装はブラック。まるで女神のような神々しさで歌っていたのですが、現在妊婦だそうで、こんなに美しいドレスアップができるとは驚愕。スーパーボウルのハーフタイムショーでのパフォーマンスも注目されていたし、リアーナの風が吹いてますね。

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『西部戦線異状なし』が唯一、エブエブ対抗馬。

今年のアカデミー賞は主要部門のほとんどを『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が占めてしまいましたが、唯一抵抗を見せていたのが『西部戦線異状なし』でした。国際長編映画賞、美術賞、撮影賞、作曲賞の4部門で受賞。作曲賞を受賞したフォルカー・バーデルマンのスピーチで、「幼い頃、母に言われたんです。周りを変えるためには自分から変わらなければいけないと」との言葉が素晴らしかった。

サラ・ポーリー、堂々とフェミニスト。

サラ・ポーリーの脚色賞受賞、おめでとうございます! 『ウーマン・トーキング 私たちの選択』はまもなく日本で公開されますが、その際には、本誌連載ポートレートでサラ・ポーリーのインタビューを掲載します。サラの受賞スピーチの冒頭が「ウーマンという言葉がタイトルについているのに、選んでくれてありがとう」。人々がそれぞれ異なる物語を持って生きていること、それを伝えたい、という彼女の強い意志が印象的でした。

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逝かれた映画人たちへ。

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ミュージシャンの演奏をBGMに、映画好きたちに夢をたくさんくれた素晴らしき故ドリームメイカーたちの姿が映って、その人たちをいま一度思い起こす授賞式のこのコーナーが大好きです。今回のミュージシャンはレニー・クラヴィッツ。「Calling All Angels」を演奏しました。レニー・クラヴィッツとこのコーナーを紹介したのはジョン・トラボルタで涙ぐんでいました。彼が登場する時に映画『グリース』の曲が流れていて、最初に映ったのが共演したオリビア・ニュートン・ジョンだったからでしょうか。大女優イレーネ・パパス、アメリカ映画を楽しくしてくれたカースティ・アレイ、音楽で妖しい世界に連れて行ってくれたアンジェロ・バダラメンティ、ジャン=リュック・ゴダールが投影されたときには大きな拍手が。そして、カーペンターズの曲も多く手がけた愛しのバート・バカラック、プロデュース作も名作だった俳優ジャック・ペラン、セクシーのお手本ジーナ・ロロブリジタ、そのアクションや男らしさに見入ったジェームス・カーン、米国人でもヨーロッパ的なエロスを醸すラクエル・ウェルチ。他にもたくさんの方々が映りました。

監督賞・作品賞まで! エブエブ!!!

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先に触れた助演男優賞、助演女優賞に加えて、作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞、編集賞の7冠! フィガロジャポン本誌のインタビューでも、「オスカー狙ってつくっているわけではない」とダニエル・シャイナートとダニエル・クワンのふたりは語っていますが、確かに、静かにヒューマニティを訴えるような作品がとりがちな賞レースにおいて、ものすごい変化球です。でも、監督デュオが白人とアジア系だったり、アジア人のふつうのおばさんがものすごいパワーを発揮して世界を変えようとしたりするストーリーは、現代の私たちの社会にある身近な問題を彷彿させますよね。そこに離れ業の演出が加わった。この受賞で、アジア系が参画する作品、アジア系が物語の軸にある作品への評価や期待がますます高まったと思います。『パラサイト』から始まった怒涛のアジアメイド作品の評価。このまま続いていく、いや、同じ土俵ですべての作品がきちんと評価されることがデフォルトになると本当にうれしく感じます。
ダニエル・クワンが「天才は登壇する私たちだけではない。集団によって天才の仕事をなしうるものです。移民の父は映画が大好きだった。クリエイティビティの自由を教えてくれた人たちに感謝します」と述べました。
ミシェル・ヨーは香港映画時代からずっと観てきた女優です。アジア映画好きのグループLINEが湧きました、彼女の受賞の直後に! 「私のような見た目の、小さい子どもたち、今日これを見ているみなさんへ。夢というのは大きく持ってこそ実現する、ということを今日の出来事は立証しています。女性のみなさん、『あなたは年をとりすぎた』なんて誰にも言わせてはなりません! 世界中の母たちに捧げたい。彼女たちこそスーパーヒーローです。彼女たちがいるからこそ、私たちはここにいるのです。私の84歳の母はマレーシアで観ています。これ(オスカー像)を持ち帰るからね!」

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そして、11番目のトピックを加えたい。
アジア人初の主演女優賞を受賞した、若い時にはアクションでも観客を魅了していたミシェル・ヨー。彼女の肌は疲れ知らずで60歳という年齢を感じさせないものだった。ミシェ ルのメイクアップ アーティストのサブリナ・ベドラーニは、夕方の授賞式に備え、ミシェル・ヨーの肌にドゥ・ラ・メールで、柔らかく潤いに満ちたベースメイクを施したそう。「レッドカーペットでも、国際線から降りた後でも私の肌は大丈夫。ドゥ・ラ・メールは私の肌を潤し、フレッシュにしてくれるから 。人生最大の夜のために、最高の気分でいることがとても重要よ。ドゥ・ラ・メールはその最初のステップでした!」とミシェルがコメント。
ミシェルのメイクアップ アーティスト、サブリナ・ベドラーニは、「レッドカーペットで完璧な肌を実現する鍵は、常に水分補給から始まります。今夜のミシェルのメイクは、ソフトでエフォートレスな感じを出したかったので、ドゥ・ラ・メールのザ・トリートメント ローションから始まり、ザ・コンセントレート とザ・モイスチャライジング ソフト クリームで、最高に潤いに満ちたベースを作りました」
ドレスばかりがフォーカスされるレッドカーペットや大舞台。でもスキンケアも重要です!

第95回アカデミー賞の字幕版は、本日3月13日22時より、WOWOWプライム、WOWOWオンデマンドにて放映。
wowow.co.jp/academy/

 

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