アメリーが開いた新しいアートギャラリー、そして日本の美。

PARIS DECO 2021.07.10

アート作品をアパルトマン空間で展示販売する新しいタイプの画廊として、成功を収めた9区の「Amelie Maison d’art(アメリー・メゾン・ダール)」。この自宅ふうのギャラリーに宿泊して作品と時間を過ごせたら、というリクエストに応えて、オーナーのアメリー・デュ・シャラールは、昨年アート作品を配置したアパルトマンホテルを左岸と右岸にオープンした。これに次ぐ彼女の新たな冒険は、左岸の18世紀建築の建物内に開いた350㎡のスペースだ。かつてActes Sudという出版社があった場所だという。こちらも9区のアメリー・メゾン・ダールと同様に、自宅ふうのスペース内に現代アート作品を飾っているのだが、広い庭に面した地上階にあり一軒家のような開放的で居心地のよいギャラリーである。この庭はこの界隈ではプライベートガーデンとして最大のものだそうだ。

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日常生活にいかにコンテンポラリーアートを取り入れるか。アメリーのハイセンスが生きたギャラリーは作品と空間の関係を見るおもしろさがある。

アメリーはこの2つ目のギャラリーではヘルツォーク&ド・ムーロンなどで仕事をした若い仏米女性Tess Walravenとコラボレーションをし、紹介するアーティストたちの作品に呼応するコンテンポラリーな空間を作り上げた。エントランス、2つのリビングルーム、ビリヤードルーム&オフィス、ハプニングルーム、キッチン、温室という造りで、どの部屋も庭に面している。アメリーが扱うのはアーティストにクリエイションの自由があるアブストラクト作品だが、タイプはさまざま。内装に用いられた素材やテクスチャーの違いで、各部屋固有の雰囲気が作り上げられ、どの作品も自分の居場所を見いだせるというわけだ。天井も高く、ゆったりとしたスペースなのでボリュームの大きな作品にもぴったりである。ここは宿泊はできないものの、作品をじっくりと鑑賞し、作品とともに時間を過ごし……展示作品も含め、空間まるごとほしくなる。実際、彼女が棚を小作品で構成したところ、そこに展示された作品をすべて購入した人もいるそうだ。

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エントランスから奥の温室まで、部屋に合わせて壁を飾るのは複数の小さな作品だったり、あるいはサイズの大きな一点だったり。

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左: 通りに面した重厚な扉を開けるところから始まるメゾン・ダールの旅。外からは想像できない世界が待っている。 右: アメリー(左)とテス。

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広いスペースを活用し、展覧会も定期的に開催される。6月から10月まで、『La Beauté du Geste(動作の美)』と題して、日本の今日のクリエイションを紹介中だ。これはアメリーがジョアナ・コロンバティとともにキュレーション。この展覧会のために制作された作品もあり、日本の伝統技、忘れられた技を現代に生かした9名のアーティストやアルチザンの作品は、同じスペースに置かれることによってシナジーを生み出している。そして驚くほどパリ的空間に似合っている。この数年、フランス人たちの間で日本への興味が尽きないが、これでますます熱が高まりそう。

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左: Noe Kuremotoの花器。 右: Yoshiko Nittaはこの展示のために9点の吹きガラスを制作。photos:Mariko Omura

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左: Studio Zougeiはリサイクル木材を用いてスツールを6点制作した。その後方に、Studio BCXSYの木製屏風。 右: 床に置かれた大壺は、漁師であり陶芸家でもある千葉のKazunori Hamanaの作品だ。photos:Mariko Omura

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左: メタルを編んだ花瓶はStudio BCXSYの作品で、その上の壁に掛かっているのはパリをベースに活動するアーティストRieko Kogaの刺繍。 右: 植物繊維を素材にした作品としては、Tomoko SakakiとArkoの2名が今回紹介されている。

Amelie Maison d’art
18, rue Séguier
75006 Paris
開)9:00~20:00
休)日・月
www.amelie-paris.com
@ameliemaisondart

editing:Mariko Omura

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