ドットール・ヴラニエスの香りを手がける、エレオノール・ブルニエ。【仕事が私にくれたもの】
Society & Business 2025.12.31
日々を豊かにする香りは、目に見えない贅沢。

エレオノール・ブルニエ/Eléonore Beurnier
フランス・パリ生まれ。香水の聖地といわれる、南仏・グラースで調香を学ぶ。その後、パリやミラノの複数のフレグランスハウスで経験を積み、2023年にドットール・ヴラニエス フィレンツェの調香師となる。
1983年に誕生して以来、その豊かな香りのルームフレグランスで人気を集めてきたラグジュアリーフレグランスメゾン、ドットール・ヴラニエス フィレンツェ。商品開発から製造まで一括して創業の地、イタリア・フィレンツェに構えた自社工場で行っている。そこで調香師を務めるのがエレオノール・ブルニエ。彼女は、生まれながらにしてずっと香りに惹かれてきたという。
「私にとって外界と関わる最初の手段が嗅覚で、人の名前より、その人の香りで覚える子どもでした。香りは言葉で説明することが難しいけれど、私は頭の中で香りを嗅ぐことができます。新しい香りが閃いたら、どんな色をしているのかなどを頭の中に描き、設計図を作るイメージ」と話す。

東京・表参道にオープンした新店は、香りに満たされたブランドの世界観を凝縮した空間。
そしてこのほど、彼女が手がけたブランド初のオードパルファムコレクション「フィレンツェ イン トランスレーション」が誕生し、話題に。フィレンツェの一日を8つの香りで表現した新作はどれも個性豊かな香りで、付けられた名前もユニークで遊び心を感じるものばかり。
「たとえば、メリッジャーレは"木陰でひと休みする"という意味を持つイタリア語。春のフィレンツェ郊外、リンデン(菩提樹)の木の下で少し甘いハチミツのような香りに包まれながら、風に揺れる小麦畑を眺める......そんな情景を思い浮かべながら創りました。香りは目に見えない贅沢。その存在に人々の心が、暮らしが、豊かになるのが理想です」

左から、目覚めの風をイメージしたイタリア語で早朝を意味するオードパルファム マットゥティーノ、フィレンツェのバラ園を散歩する情景を描いた同 ペタローゾ 各100ml 各¥31,900/ともにドットール・ヴラニエス ジャパン
調香師は、常に好奇心を持ち続けなければ、とも。
「日々のすべてが着想源。新しい食べ物を味わい、新しい場所を見て、違う文化や芸術に触れる。そうやって五感を刺激し続けることが大切なんです。今回、初めて日本に来て、アンテナがずっと反応しっぱなしです(笑)」
*「フィガロジャポン」2026年1月号より抜粋
text: Tomoko Kawakami photography: Dr.Vranjes Firenze(Eléonore Beurnier)






