update:2024/05/24
オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリーの斜め向かいにあるMr.T。昼でもネオンが目印だ。
オープンしたのは1年半前というMr.T。Passage 53のセカンドだった日本人シェフTsuyoshi Miyazakiが、オープンキッチンで腕を振るっている。レストランでもビストロでもなく、ワインバーでもなく居酒屋でもなく......でも、そのすべてでもあってという、パリでは過去に存在しなかったタイプなので、カテゴライズが難しい。
メニューについてもしかり。何料理とも説明できない。すべてがア・ラ・Mr.Tなのだ。あえていうなら世界各地のストリートフードとガストロノミーの幸せな融合、だろうか。モードのハイブランドが、ストリートの影響やエスニックテイストをデザインに取り入れている、といった感じに似ている。メニューに並ぶタコス、マカロニ&チーズ、ケバブ、バーガー、野菜カレーといった超庶民的料理は、選び抜かれた素材と計算の行き届いた味付け、絶妙な焼き加減でクリエイティブな料理としてテーブルに登場する。ウニ、スモークドエッグ、ライス、ホースラディッシュといった味の想像がつかない組み合わせの前菜もあるが、こうした料理でもシェフの腕を信じてトライしてみよう。
サービスを担当するアングランはかつて星付きレストランのメートル・ドテルを務めていたという。ヒップスター系の現在の彼からその姿を想像するのはちょっと難しい......のだが、いざ彼がスペース内を移動し、客に接するや納得。その気配りの行き届き方はまさに星付き !
シェフの出自を物語る下ごしらえと隠し味が秘められたおいしい料理をポップな環境で、カジュアルに楽しめる店。パリで一度しか食事のチャンスがないという時は、迷わずにMr.Tに行くのがいい。進化する店である。自分たちのしたいことにやっと着地できたとアングランも語っているので、1年前のオープンに駆けつけたという人でも、いま、新たな発見ができるはず。
シェフのMr.TことTsuyoshi Miyazaki。
ビジュアル効果満点で食欲を刺激。フレッシュな魚の味が野生アスパラと炭黒パンのトーストの食感と混じり合い、独特なハーモニーが生まれる。
ハラペーニョの微妙な辛さがロット(あんこう)のローストにマッチ。淡色のマットな皿(Jars製)にソースの緑が美しく映える。
目の前で炎がチーズをとろとろ溶かす。ニューヨーカーが大好きなマカロニ&チーズもMr.Tの手にかかると、シャンピニオンとヘーゼルナッツもプラスされて魔法のひと皿に変身する。©Prune Cirelli
ナスのピューレを隠したMr.Tビーフバーガーも卓上でチーズが溶かされる。
おいしい驚きはデザートまで。ランチは前菜とメイン、あるいはメインとデザートで28ユーロ、前菜+メイン+デザートは35ユーロ。アラカルトも可。夜はアラカルトに加え、Mr.Tの料理をとことん味わえるデギュスタシオン・メニュー(69ユーロ)も魅力だ。各皿に合わせた飲み物(プラス35ユーロ)はワインだけでなく、カクテルもあるというのが楽しい。
オリジナルユニフォームを纏い、テーブルセッティングに勤しむアングラン。
カウンター席にするか、テーブル席にするか......。
壁にはシェフの顔がストリートアート風に描かれている。テラゾのカウンターの上の料理に使われる花は、装飾のようで愛らしい。
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INFORMATION
Mr.Tミスター・ティー<3区>
38 Rue de Saintonge, 75003
01・42・71・15・34
FILLES DU CALVAIRE
12時〜14時30分、19時30分〜22時30分 休)月火
réalisation:MARIKO OMURA
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