黄泉の世界へ連れて行かれそうな、シナーのエレベーター。photo:Nicolas Receveur
オペラ通りにホテルNolinski(ノリンスキー)、16区にBrach(ブラック)を開いたグループEvokによる、新しい5ツ星ホテルSinner(シナー)がオープンした。フランス語読みするとシネールとなるが、ホテルの名前は英語を使用していて、シナー、つまり宗教上の罪人(!!!)である。ホテルができたのは教会や宗教関連の建物が集まる北マレ地区のTemple(タンプル)通り。マレ地区の歴史をひもとくとテンプル(temple)騎士団が登場し、その聖堂があったのがこの界隈という背景に導かれたコンセプトのホテルだ。
パリの中でも古い歴史を持つマレ地区において、この界隈では初の高級ホテルといっていいだろう。意外といってもいい場所である。それだけに、このホテルにおける“リュクス”はこれまでの高級ホテルが提案する贅沢感のイメージとはおおいに趣を異にする。その昔、本物の貴族が気ままに表現の自由を生活の中で発揮していたことを思わせるような、ゴージャス、ミステリアス、歴史的、宗教的……といった要素が混ざり合うユニークなホテルである。伝統的高級感のかわりに、70年代の少しばかり退廃的だけど解放感にあふれるお祭り騒ぎの雰囲気が匂っているホテルは、アート、デザイン、モードに関心があって、新しい驚きを求めてマレ地区に集まる人々を満足させるに違いない。
合計43室。赤い扉の客室のインテリアは、デッサンや写真が壁にかかり、いかにもマレの趣味人のアパルトマンといった様相にまとめられている。客室の魅力を味わえるのは宿泊者に限られてしまうが、誰もがバー、レストランでホテルのユニークさを楽しむことができる。コンピューターを備えたデスクは、教会の懺悔室をイメージした中にあり、またコンセプトストアも地下礼拝堂のような空間で、ちょっとしたキャビネ・ドゥ・キュリオジテといった雰囲気。
ホテルはハマムを備え、スパはアユールヴェーダにインスパイアされた自然派ブランドOrveda……ということなので、詳しくは別の機会に。
ステンドグラスがミステリアスな光を放つ廊下。photo:Nicolas Receveur
クラシックタイプの客室。photo:Guillaume de Laubier
スーペリアルーム。photo:Guillaume de Laubier
スイートルーム、その名もJustine。マルキ・ド・サドの小説『美徳の不幸』の主人公だ。photo:Guillaume de Laubier
Justineのバスルーム。photo:Nicolas Receveur
レストラン。シェフはアダム・ベンタルハで料理はエスニック。パティスリーはヤン・ブリスによるクリエイションだ。photo:Nicolas Receveur
バー。これは昼の顔……。約10種のカクテルはメメント、緋色の心臓といった思わせぶりな名前ばかり。photo:Nicolas Receveur
コンセプトストア。photo:Nicolas Receveur
Orvedaのスパ。photo:Nicolas Receveur
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réalisation:MARIKO OMURA