家族やパートナーとの関係性に悩んだら読みたい、村井理子が選ぶ6冊。【いま知りたいことを、本の中に見つける vol.6】

Culture 2025.08.23

知りたい、深めたい、共感したい──私たちのそんな欲求にこたえる本を26テーマ別に紹介。各テーマの選者を手がけた賢者の言葉から、世界が変わって見えてくる贅沢な読書体験へ!
vol.6は「家族やパートナーとの関係性に悩んだら」をテーマに、翻訳家、エッセイスト・村井理子が選んだ本6冊を紹介。人生の中で向き合う時間が長い家族やパートナーとの関係に悩むことは少なくない。そんな時、SNSやインターネットから離れて手に取りたい一冊を。


選者:村井理子(翻訳家・エッセイスト)

家族やパートナーとの関係性に悩んだら。

家族、友人、恋人、職場、学校など、私たちが生きていくうえで関わり合いを持たなければならない人や場所は多い。そこにSNSが加わる現代は、人付き合いなしでは成り立たない。特に、切りたくても切れない家族やパートナーとの関係性は、日常生活に支障が出るほど悩まされることもある。問題解決のヒントが必ずしも書籍のなかにあるとは限らないが、考えるきっかけとなる言葉は多くあるだろう。

『母の旅立ち』

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尾崎英子著 CEメディアハウス刊 ¥1,760

死期迫る末期癌の母を、四姉妹が看取る。しかし、母のキャラクターがあまりに強烈だ。桁外れに破天荒な生き方をしてきた母に反発した時期もある姉妹だったが、母の最期を看取るため一致団結。四女である著者は多くを書いていないが、母の人生には、女性が今よりずっと不自由な生活を強いられていた時代の紆余曲折があったことがわかる。著者の書く「終わりよければすべてよし」には愛がある。

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『母を捨てる

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菅野久美子著 プレジデント社刊 ¥1,760

母を「捨てる」というインパクトの強い言葉がタイトルになるだけのことはある、壮絶な母との関係性を、ドライな筆致で淡々と綴っている。淡々と綴られているはずなのに、とてもじゃないけど目を離すことが出来ない「引き」がある。ページから突き出た両手に、襟を掴まれている気分だ。今まで何冊も母と娘に関する本を読んだが、本書がダントツで心に残っている。生きていてくれて本当によかった。そんな感想が浮かぶ。

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『君は君の人生の主役になれ』

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鳥羽和久著 ちくまプリマー新書 ¥968

本書は悩める10代に向けて、福岡市で学習塾を経営する鳥羽和久氏が、先生、友だち、家族、勉強、恋愛、お金といったジャンルに分けて、自分だけの道を探すためのアドバイスを提示している一冊だ。若者に向けて書かれているようで、大人が読んでも十分な読み応えがある。10代の頃、親が、学校がしんどくてたまらなかった記憶に今も縛られている人に手に取ってもらいたい。もしかしたら、救われるかもしれない。

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『エデュケーション
大学は私の人生を変えた

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タラ・ウェストーバー著 村井理子訳 早川文庫NF ¥1,496

アイダホの山奥で、医療や教育の重要性を否定するサバイバリストの両親によって育てられた著者の自伝的一冊。自らの人生を取り戻すために大学進学を決め、独学で学ぶ。多くの困難に立ち向かいながらも、ケンブリッジ大学トリニティカレッジへの進学を果たす。兄による熾烈な暴力、親による教育と医療虐待など、ページをめくる手が何度も止まるほど衝撃の一冊だが、それだけに、著者の現在を祝福する気持ちが溢れてくる。

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『あの世でも仲良う暮らそうや
104歳になる父がくれた人生のヒント

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信友直子著 文藝春秋刊 ¥1,595

『ぼけますから、よろしくお願いします。』は、認知症になった母を高齢の父が介護する様子を信友直子監督がつぶさに撮影したドキュメンタリー映画。本書はその主人公とも言える父良則さんの言葉から娘である監督が得た、よりよく生きるためのヒントが書かれた一冊。父の想いには家族への愛が溢れている。そんな父を見守る信友監督は、とても幸せそうだ。家族っていいじゃんと思える一冊。

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『そして、バトンは渡された』

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瀬尾まいこ著 文春文庫 ¥847

大人の都合を優先する形で、血の繋がらない親たちのあいだをリレーされるように暮らしてきた主人公優子の成長物語。親子の関係にとって大切なのは、血の繋がりよりも、バトンのように愛情を繋いでいくこと。家族の問題に悩む人が多いこの社会で、こんな形の親子愛があってもいいし、子どもの成長には溢れるような愛情が一番大事なのだなと、しみじみと思う。登場人物全員に幸あれと願わずにはいられない一冊。

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村井理子|Riko Murai 翻訳家・エッセイスト
1970年、静岡県生まれ。新刊は『ある翻訳家の取り憑かれた日常2』(大和書房刊)。2020年の著書『兄の終い』(CEメディアハウス刊)をもとにした映画『兄を持ち運べるサイズに』が11月公開予定。
https://x.com/Riko_Murai
https://www.instagram.com/rikomurai/

*「フィガロジャポン」2025年9月号より抜粋

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