オーストラリア・ワイナリー紀行 #01 オーストラリア・ビクトリア州へ、ワインと美食の旅。

Travel 2016.12.21

いま、自然な造りのワインを楽しむなら、メルボルンから足を延ばして元科学者が手がけるワイナリーへ。

メルボルンから南西へ車で約2時間。ポート・フィリップ湾に面して開けた町ジーロングは、英国のチャールズ皇太子も学んだ名門校ジーロング・グラマー・スクール(GGS)があることで知られている。メルボルンに長く暮らす日本人によると、「情報感度の高い人が多く暮らしていて、日本でいうと横浜のような町」とのこと。奇岩が立ち並ぶ海岸線の絶景で知られるグレート・オーシャン・ロードへの玄関口でもある。

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ジーロングからグレート・オーシャン・ロードへ向かう途中に立つケープ・オトウェイ灯台。

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海中に石灰岩の奇岩が立ち並ぶグレート・オーシャン・ロード・ドライブのハイライト「12使徒(Twelve Apostles)」。

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路傍で木登り中のコアラに遭遇。

そんなジーロングの郊外にレスブリッジ・ワインズがある。このワイナリーがユニークなのはまず創業者3人のキャリアだ。レイ・ナディソンは神経科学の、マリー・コリスは薬学の、それぞれ研究者だったという。このカップルに心臓専門医のエイドリアン・トーマスを加えた3人は揃ってワイン好き。しばしば集まってはワインを開け、「そのおいしさの秘密に科学的アプローチで迫っていた」(レイ)とのこと。いつしか、3人は自分たちの手で理想のワインを造ることを夢見るように。

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レイ(左)とマリー(右)。醸造所兼セラードア(テイスティングしてワインが購入できるコーナー)のこの建物は、麦わらの圧縮材を使ってレイ自身が建てた。

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開花の始まったブドウ樹をチェックするマリー。ジーロングは先住民アボリジニの言葉で「白い崖」を意味する。畑の下には良質なワインを約束する石灰岩土壌が横たわる。

1996年、3人はジーロングの冷涼な気候が気に入り、ここに土地を購入。そこが1870年代に遡るブドウ栽培の歴史を持つ土地だと知ったのは購入が決まった後のこと。それから本業との掛け持ちでブドウ畑を徐々に整えていき、レイとマリーは本格的にワイン造りを学び(エイドリアンは投資のみで参加)、ワイナリーを立ち上げたのは2003年のこと。科学的な思考は大いに取り入れつつも、畑ではビオディナミ(*)を実践、自生酵母による自然発酵を行うなど極めて自然な造りを心がけている。熟成に使う樽の材は、フランス中部の森まで出かけて伐採前の木を見て決めるというこだわりぶり。

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整然とした貯蔵庫。奥に並んだ様々な形の樽が2人の実験精神を表している。

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試飲用に開けられたシャルドネのボトル。畑ごとにラベルを変えてワインを造るので少量生産ながらアイテム数が多い。

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「トレンドを意識すると自分が誰だかわからなくなる」とレイ。科学的検証に裏付けられた自分たちのワイン造りに自信を持っている。

ピノノワール、シラーズ、シャルドネなど、多くの品種から多くの銘柄が造られているけれど、彼らのすべてのワインを通じて感じられるのはピチピチとした生命感と、リフレッシングな後味を演出する綺麗な酸。時間とともにグラスの中からどんどん言葉や物語が湧いてくる、そんなワインだ。

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レイが醸造を手がけるもう一つのレーベル、ビトゥイーン・ファイブ・ベルズ。オージーの自由な精神がいかんなく発揮された極めて実験的なアプローチで熱狂的ファンが多い。

*ビオディナミ:
オーストリアの人智学者ルドルフ・シュタイナーの思想を農業に応用した自然農法。月のサイクルを農作業に取り入れる、独自のプレパレーション(調合剤)を使うなどユニークな点が多いが、ブドウ樹に活力が備わると多くの造り手が言う。

>>メルボルンっ子が日帰りドライブを楽しむ憩いの場所とは?

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photos : HIROMICHI KATAOKA, texte : YASUYUKI UKITA

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