ウイルスと闘う世界のいま。#05 眠らない街ニューヨーク、ついに眠る。
Travel 2020.03.28
文・写真/長谷川安曇(在ニューヨークライター)
このパンデミック中、外に出ている若者に「コラ、家に帰れ〜!」と窓から怒鳴ることができなければ、真のニューヨーカーではない——そんな記事が出るほど、新型コロナウイルスが急増しているニューヨーク。
アンドリュー・クオモ州知事は、感染の拡大を防ぐため、3月22日から生活に不可欠な業種以外の労働者に自宅待機を義務付けると発表した。普段は「眠らない街」と呼ばれるだけあって、昼夜問わず多くの人が行き交っているのに、 路上には人影もなく、静まり返り、不気味。平常時には、行列や人ごみに出くわすたびに悪態をついていたが、そんなことは遠い昔のことのように感じる。「外出禁止」の状況がいつまで続くかわからないなかで、今後の景気や失業率、医療システムのことを考えると、さらに気が重くなる。
ロックダウンの前日。普段はニューヨークでいちばんの繁華街、タイムズスクエアも人影がまばら。
こちらも同日撮影。お店は全部閉まり、がらんとしたソーホーのストリート。
新型コロナウイルスの感染者はニューヨーク州だけで約4万5000人にも及び(3月28日現在)、世界的に見た統計の約7.6%を占める。知り合いが感染した、という話もよく耳にして、ボーイフレンドの両親もコロナウイルスの症状が出たのでテストをしたという。感染の存在がどんどん身近になり、不安も募ってくる。あまりにも気が滅入るので、何か明るい話題が欲しい。コメディ映画か何かを見て、笑いたい。
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連日暗いニュースが続くロックダウン中に、ちょっとだけクスリと笑えたのはこの話題。ニューヨーク市の保健局が発表した、コロナウイルスに対するセックスのガイドラインだ。「最も安全なセックスパートナーはあなた自身」と語り、マスターベーションを推奨(その際、手と性玩具も行為の前後に20秒石鹸で洗うこと、とも)。続いて安全なのは「同居人」と述べ、もし普段セックスパートナーとオンラインで出会うなら、ビデオチャットやセクスティングに切り替えてみようとも。
またニューヨーク市のフードバンク(企業から寄付された食料品を生活困窮者に配給する団体)にお金を寄付しようと、ソーシャルメディア上で呼びかける動きや、食品を無料で配布する団体など、ポジティブな動きも出てきた。食料品を買うにも、アマゾンやホールフーズなどの大手会社ではなく、スモールビジネスをサポートしようと呼びかける動きも目立つ。そこで、私も韓国系の家族経営の小さい八百屋で野菜を購入。一刻も早く「眠らない街」が復活することを、混雑や行列に、ため息がつける日々が戻ることを願って。
マンハッタンを望む、ブルックリンブリッジの袂。天気が良い日は多くの人で賑わうのに、寂しい風景だ。
texte et photos : AZUMI HASEGAWA, title photo : alamy/amanaimages