『ミス ディオール展覧会』、女性アーティスト・江上越の作品が与える彩り。
Beauty 2024.07.09
2024年6月から7月15日(月・祝)まで六本木で開催されている『ミス ディオール展覧会 ある女性の物語』。ミス ディオールという香りは、クリスチャン・ディオールの妹、カトリーヌ・ディオールをそう呼んでいたことが誕生の理由でもある。まさに、ディオールというメゾンにとって特別な逸品であり、さまざまな物語とコードを持つ。
戦時、レジスタンスとして戦った強い意志と、創造への敬愛を持ったカトリーヌの歴史と重なるように、今回、素晴らしい女性アーティストたちの作品がこの場を飾る。作品を出品した若手芸術家、江上越に話を聞いた。
Etsu Egami 1994年生まれ。日本、中国、ヨーロッパを中心に活動。日本戦後第三世代の芸術家と呼ばれる。自身の体験から人間と社会の本質を問いかけ、国際性と多様性に富んだ新世代のアーティスト。2021年FORBES ASIA世界を変える30歳以下の30人に最年少アーティストとして受賞。現在チューリッヒのZwei Wealthにて個展を、ニューヨークのAlbertz Bendaにてグループ展開催中。日本国内では7月26日~8月14日までギンザシックスの蔦屋書店アトリウムにて個展、8月10日~10月28日まで富岡市立美術博物館にて展覧会を開催予定。 作品:江上越 Rainbow 油彩、カンヴァス 2024年
――今回、ミス ディオールと出会い、江上さんのどんな部分が刺激されましたか? どんな想いを込めてミス ディオールとの作品を創られましたか?
ミス ディオールの歴史を紐解いた時、女性の多様な美しさというイメージが強く浮かんできました。それが今回、「虹色」と題して女性像を描いた作品に繋がりました。そして「虹色」は自分自身のテーマでもあります。
「虹色」は色のグラデーションがあっても濁らず、それぞれが鮮やかで交わらない。平行線の中で共存していて、永遠に、自由に延伸していきます。夢や希望を象徴するものでもあります。もともとは、女性やコミュニケーションについてグレーゾーンのようなイメージを持っていましたが、次第に「虹色」を女性の多様性やコミュニケーションの象徴であると感じるようになりました。
このキーワードから、さまざまな色と光の中で、人種や皮膚の色に関係なく踊っている女性たちの姿を、動的なストロークの強さで描きました。
ミス ディオールには、エレガンスと奔放さ、繊細さと大胆さのような、女性に秘められた多面性と、そして時代を牽引する魔法を感じます。伝統と革新を持ち合わせる現代の女性像のように思います。その女性の多様な美しさが、私の中の「虹色」のイメージといちばん近く重なるものです。
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――ミス ディオール展のために、女性アーティストの方々が創った作品を見て、いま、どんな思いを抱かれていますか?
不思議な感覚になります。普段、美術館ではホワイトキューブに作品だけを展示していますから、こうして、ドレスやミス ディオール(のボトル)と展示され、また、空間演出の流れの中でまるで旅路のように作品を見ていくことでも、感じるイメージが変わります。
以前も拝見しているのですが、どの作品も特別に感じますし、またひとつの世界観の中で一体化されていることでの不思議な感覚も覚えます。
作品を、引いて眺められる空間ですので、訪れた方には作品との距離感を楽しんでいただきたいです。
私の作品で言えば、近付いた時のテクスチャーの荒々しさや野性的で感情的な部分と、距離をとった時に浮かんでくる女性の身体性の柔らかいイメージといった、認識的な距離と物理的な距離の中で、色彩とストロークでどう表現しているのかに注目してみてほしい。女性が持つ、エレガンスと自由、繊細さと大胆さといった、内面の多面性を感じていただきたいと思っています。
(並べて展示されているマリア・グラツィア・キウリの黒いドレスを見ながら)このドレスがここにあることが、もう、びっくりしていて。この絵にぴったりだな!と思っています。
私の作品は、色やラインがとても大切な要素なのですが、ドレスもそれぞれの色がラインになって見えて、虹や流れ星のようなラインが、まるで自分の絵に続いているような感じがします。
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――このドレスは、世界を巡っているミス ディオール展覧会でも初めて展示されたものです、偶然のような必然があります。
そうなのですね、知らなかった! 本当にびっくりしています。
他のミス ディオールのドレスはフェミニンなピンクやホワイトですが、この黒いドレスには、闇の中に光る魅惑的な美しさに新しい女性像、コンテンポラリーな女性像を強く感じます。
ドレスとアーティストの作品をインタラクティブに展示した空間。写真左奥に、江上の作品とマリア・グラツィアのドレスが並べられている。
――中国をはじめ、世界各国で活動や展示を行うなかで、東京という都市、そして、ミス ディオールの展覧会の場で、作品を発表する意義をどのように感じていますか?
ミス ディオールはブランドとして、世界的に知られています。中国でも大変人気です。
東京は国際都市で、アジアで最もはやく近代化した都市でもあります。東京でのミス ディオール展覧会の場で自分の作品を発表することはなんだか歴史的な意味があるように感じます。近代から今日にいたって、世界は大きく変わってきました。西洋の美意識と東洋の美意識がぶつかりながら、交流と融合を深めた中に、多様な美しさの魅力に富んでいます。
東洋人として今回歴史あるブランドと同じ舞台で共演できることは、もちろん貴重な体験ですし、これから自分の制作をどのように考えるか大きなきっかけになるのでしょう。または、このリアリティが、時代の象徴として、東洋と西洋へのコミュニケーションは一層深まっていくと思います。
『ミス ディオール展覧会 ある女性の物語』
期間: 開催中~ 2024年7月15日(月・祝)
会場:六本木ミュージアム 東京都港区六本木5-6-20
休)6月25日
入場無料 完全予約制。
予約URL:http://on.dior.com/24md
※会期・開場時間等が変更となる場合がございます。詳細は公式特設サイトをご覧ください。
※会場でのお支払いは各種クレジットカード、電子マネー、QR決済をご利用いただけます。現金支払いはできませんので、予めご了承ください。本イベントの予約・入場・会場内での製品購入には、スマートフォンからディオール ビューティー公式LINEアカウントへの友達加が必要。
※平日10:00~17:00の来場者へは、ピエール・エルメ・パリとのコラボレーションスイーツやマカロンボックス、展覧会限定シグネチャードリンクを抽選で差し上げます。
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photography: Daici Ano(EMPTY SPACE)