立田敦子のカンヌ映画祭2023 #04 コンペの上映作がなくとも韓国パワーは健在!

Culture 2023.05.23

カンヌでKoficが主催するパーティ「K Movieナイト」に行ってきた。世界中から注目を浴びている韓国エンタメ界。2022年は、パク・チャヌク監督の『別れる決心』、是枝裕和を監督に迎えた『ベイビー・ブローカー』の2本がコンペティション部門に選出され、それぞれ監督賞、男優賞(ソン・ガンホ)を受賞するなどパワーを見せつけた。今年は残念ながらコンペにこそ作品がないものの、ほかの部門で7本上映作品があり、相変わらずのパワーを感じさせる。

主にデビュー1〜2本目の監督作品が選ばれる「批評家週間」には『オクジャ/okja』(17年)でポン・ジュノ監督の助監督を努めたジェイソン・ユーの初監督作品『Sleep』(原題)が上映された。

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ジェイソン・ユーの初監督作品『Sleep』(原題)より。

夫の夢遊病発症をきっかけに不可解な出来事に悩まれていく夫婦を主人公にしたサイコスリラー。脚本もユー監督が自ら手がけているが、緊張感あふれる恐怖シーンに笑いを誘うセリフを入れてきたり、独特のユーモアセンスや演出は、ポン・ジュノに通じるものもあった。主演は『パラサイト 半地下の家族』(19年)で裕福な社長一家の父親を演じたイ・ソンギュンと『3人のアンヌ』(13年)、『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16年)のチョン・ユミ。3人は上映前の舞台挨拶にも登場し、観客から温かい拍手で迎えられた。
「批評家週間」は、フランスの批評家連盟が主体となって設立されたカンヌ映画祭の併設部門。2022年のこの部門で審査員賞を受賞したシャーロット・ウェルズ監督の『aftersun/アフターサン』(22年)がその後賞レースを席巻、アカデミー賞ではポール・メスカルが主演男優賞にノミネートされるという快挙を成し遂げたことでも注目されている。ちなみに、今年のキーヴィジュアルにも『aftersun/アフターサン』の場面写真が使われている。

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「批評家週間」のHPにも『aftersun/アフターサン』の場面写真が使われている。

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イ・ソンギュンは主にジャンル映画が選出される「ミッドナイトスクリーニング」部門で上映されたキム・テゴン監督の『プロジェクト・サイレンス』にも出演しているが、本作もかなり評判がいい。崩落した橋に閉じ込められた人々が殺人訓練を受けた犬の群れと戦うというストーリー。「ある視点」部門に選出されたソン・ジュンギ主演のキム・チャンフン監督作『Hopeless』(原題)も評判がいい。

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キム・テゴン監督の『プロジェクト・サイレンス』より。©️2023 CJ ENM Cp.,Ltd., CJ ENM STUDIOS, BLAAD STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED

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キム・チャンフン監督の『Hopeless』(原題)より。©️Plus M Entertainment

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また、ミュージシャンのウィークエンドが製作総指揮&プロデューサーを務め、リリー=ローズ・デップが主演のHBOドラマ『The Idol』が招待作(アウト・オブ・コンペ部門)として上映されるが、リリー=ローズ演じる頂点を目指す人気アイドルのバックダンサー役でBLACKPINKのジェニーことキム・ジェニーが女優デビューを果たし、プレミアのレッドカーペットにも共演者らと登場した。いつも思うのだけれど、映画祭はミュージシャンが来場すると、ハリウッドスターよりも多くの歓声が上がるし、記者会見にもジャーナリストが詰めかける。普段見られない人が来るからなのか。

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リリー=ローズ・デップをはじめ、『The Idol』の出演陣が登場。©︎Festival de Cannes 

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『The Idol』でバックダンサー役を務めるBLACKPINKのジェニーも登場した。©︎Festival de Cannes 

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リリー=ローズ・デップが主演のHBOドラマ『The Idol』より。©︎Courtesy of HBO /Photographed by Eddy Chen

5月27日には、カンヌ国際映画祭の常連でもある、ホン・サンス監督の『私たちの一日』は、「監督週間」のクロージング作品として上映される予定だ。

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映画ジャーナリスト 立田敦子
大学在学中に編集・ライターとして活動し、『フィガロジャポン』の他、『GQ JAPAN』『すばる』『キネマ旬報』など、さまざまなジャンルの媒体で活躍。セレブリティへのインタビュー取材も多く、その数は年間200人以上とか。カンヌ映画祭には毎年出席し、独自の視点でレポートを発信している。

text: Atsuko Tatsuta

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